ブルゴーニュ大公。私は伏して貴君に心からお願いいたします。これ以上、聖なるフランス王国と戦いを続けるのはおやめください。聖なる王国の国土や城塞から、一日も早く軍を退いていただけますよう。そして私は、平和を愛するフランス国王の名代として、国王が名誉にかけて貴君との和平を望んでいることをお伝えします。
ジャンヌ・ダルク
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現代の人類文明は、石油に頼っている。ゆえに石油資源が枯渇すれば、人類文明は一気に斜陽を浴びる。
その流れの中で、衰亡の坂を転げていく国は多く出てくるだろう。フランスはその可能性を大きく持つ国である。なぜならフランスは、ジャンヌ・ダルクを殺し、それがゆえに、この世界に民主主義を最も早くもたらしたという事実を背負う国だからだ。
自由の女神はフランスからアメリカに贈られたものだ。それはアメリカの幸福の象徴になっているが、しかしそれは、アメリカに真実の幸福をもたらしはしなかった。アメリカはフランスからもたらされた自由の思想の許に大きく発展していったが、それゆえにこそ、大きな難をも世界に投げかけたのである。
人類の迷いは、王様など馬鹿にすればいい、市民が自分で勝手になんでもやっていいのだという、フランス革命を実行したフランス市民の心の影から発したのだと言っても過言ではない。
フランスはその大きな罪を背負っているのだが、未だに何もしようとはしないのだ。ゆえにこの人類文明を支えている礎がなくなれば、一気に国の業が押し寄せてくる可能性があるのである。
ジャンヌ・ダルクが天命を全うできていれば、君主制はもっと長引くはずだった。民主主義の実現はもっと遅れるはずだった。実に、トランプが現れる前に、人類は次の段階に行けるはずだったのだ。
馬鹿なことをしすぎるという経験を見ないままで、人類は次のもっと高い段階に行けるはずだったのである。
ゆえにこの時代、人類の経験をあまりにも深い闇に落としたという責任が、ジャンヌ・ダルクを殺したフランスに生じるのである。
ゆえにフランスは、このまま何もしないでいれば、いずれ滅亡の悲劇を浴びぬという保証を得られない。
人類の歴史は、これから人類が思いもしない方向に進んでいく。その時代を乗り切っていくためには、今から、国として何かを人類社会のために実行し、国としての善功を積んでおかねばならない。
人類の未来は、地球資源よりも、人類自身の徳によって開かれていくのである。