ドメニコ・フェティ
ヘレスポントスという海峡を挟んで、ヘロとレアンドロスは恋しあっていた。レアンドロスはヘロに会うために、毎晩海峡を泳いで渡った。ヘロはレアンドロスを導くため、毎夜塔の最上階でランプを灯した。ある冬の嵐の夜、風がヘロの灯したランプの火を消し、レアンドロスは方向を見失っておぼれ死んだ。レアンドロスの死体を前にヘロは発狂し、塔に登ってそこから飛び降りて死んだという。
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恋というものは時に人を狂わすものだ。どんな難を飛び越えてでも恋人に会いに行ってしまう。何ものにもかえがたい愛する人と愛し合うことほど、人を喜ばせるものはない。だがあまりに夢中になっていると、時に運命の神に諫められることがある。人生のすべてをそのために生きるのではないと。