普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

道徳教育の強化について

2008-02-16 12:22:16 | 教育

 学習指導要領の改訂案が公表された。
 その概要は次の通りだ。(黒字は筆者が追記)
・学校教育の目標として、基礎的な知識をきちんと定着させたうえで、それを活用してみずから考える力を育てていくことを目指し、(新たに加える5,6年生対象の英語に1時間を当てるほか、理科、算数を中心に)これまでより1割程度増やす。
・戦後初めて改正された教育基本法を受けて、学校教育の中で、これまで以上に規範意識や公共の精神を育てていくことを目指す。
・その柱となる道徳には、小学校から中学校まで現在、週1時間が充てられているが、指導が形がい化し実効性があがっていないとも指摘を受けて、改訂案では、授業時間は増やさないものの、すべての学校に道徳教育の中心となる教師を置き、計画的に指導する体制づくりを明確にする。
・現場から抽象的で理解しにくいという指摘を受け、指導内容を発達段階に応じて具体的に示し、それにあわせた教材も作る。
 (具体的には、1、2年生では挨拶をすることなど、3,4年生からグループの決まりを守ることなどを教材に盛り込むことを決めている。)
・道徳をめぐっては、政府の教育再生会議が教科として位置づけるよう求めてきまたが、学習指導要領では、内心を育てる道徳に評価や検定を伴う教科書はなじまないなどとして、教科としては位置づけずに内容を充実させる方針をとった形になった。

(実施は23~24年度からだが理科、算数と数学は翌年度から前倒しでで実施する。)

 私は今回の発表については、読書力とその理解力の向上にも力を入れる事、道徳教育の内容をもう少し明らかにする、英語など入れる時間があれば、国語、算数など基礎学科にもっと時間を増やすべきなどいくらかの不満はあるが、理科、算数の強化や道徳教育に改めて眼を向けたのは評価すべきだと思う。
 なお、今日の読売新聞の社説
でも、小学校への英語の導入には批判的だ。

[道徳教育の導入についてのインタビュー]
 道徳教育の導入についてのテレビのインタビューで印象に残ったのは、NHKか民放か忘れたが、有名な旧中学校の教師で、プロ教師の会の河上亮一
さんが、「世の中に自己中心的な人が多くて問題にを起こしているのに、学校で今更道徳教育の強化をしても」と今回の道徳教育の強化に批判的に取れるような発言をしていた(ように見えた)こと。
 (私は河上さんともあろう人がこんなことを言う筈がないと思う。多分インタビューの発言の放送はそれこそ私が書いただけの部分、時間は僅か1分そこそこだったので、河上さんの意志とま反対の方向に放送局が自分の主張に沿うように編集したのだろう。)
 それと街のインタビューで道徳教育賛成の大人の意見に混じって、高校生や中学生の「今までの道徳教育の時間は眠かった」という良く判る発言の中で、一人の高校生らして女の子が「道徳の時間に私が意見を言っても、そうではないでしょと意見を押しつけられるだけ」と言っていたのには驚いた。

 私は二人の話しで共通することがあるのに気づいた。
 家庭の教育の問題だ。
 河上さんが指摘した世の中の自己中心的な人の多くはは家では父親であり母親だ。
 「教師が自分の意見を押しつける」と言った女子高校生は家で殆ど躾けや教育をされて居ないか、個性尊重の名のもとの放任をされている間に、自分なりの考え方が出来たに違いない。
 その中で河上さんの言うように、自己中心的な考え方をし始める可能性もある。
 そこで学校で改めて普通の道徳や躾けに関する教育で彼女の意見を批判されて違和感を感じたのかも知れない。

 もし少なくとも道徳に関して、学校の教師と父兄で同じ価値観を持ち、そしてもし家庭で学校に入る前にきちんと躾けを受けた子は、家で教えられたことを学校の道徳でその必要性を再確認をされるだけで、教師の言う事に何の違和感も感じない筈だ。

[家庭への教育]
 河上さんの発言をそのまま取ると、世の中が変わらない限り道徳の教育をしても意味ないと言うことになる。
 詰まり家庭教育の必要性を言ったのだと思う。
 だからと言って文科省が家庭教育をすると言っても非常に難しい問題だ。
 私は常々教育委員会に家庭教育の担当者を置いたらと提言してきた。
 そして家庭と所謂モンスター・ペアレントとの間のトラブルには教育委員会の選任担当者を当てることで、トラブルの解決と同時にその父兄の再教育すべきと書いてきた。
これは言うは易くて実行の難しい問題だ。
 文科省は上記のトラブル解消に専任のカウンセラーを置く様にしているようだが、その職務の実際は明らかにされていないようだ。

[長い眼で見た道徳教育の必要性]
 然し、それはそれとして学校での道徳教育は必要だと思う。
 そして、彼らが世の中に出て、家庭を作り子供を産み、教育するなど長いスパンで社会環境の改善を図ることも必要だと思う。
 何故なら何度も書く様に、家庭内殺傷時件、家庭内暴力、動機が不明な残忍事件の続発など戦前、戦争直後には考えられなかった事件の続発は、市場経済主義などの浸透と共に戦後50年の日本の価値観や道徳観の良い所を無視した教育が今の環境作り上げて来たからだ。

 勿論当面のイジメや学級荒廃などの対策などに対する道徳教育の当面の効果も考えるとともに長いスパンで考えた効果も考えて置く必要があると思う。

[道徳教育の教科化]
 更なる道徳教育の教科化
については、(1)児童・生徒を5段階など数値で評価する(2)検定教科書を使用する(3)中学校以上は各教科専門の教員免許を設けるの3条件が必要だが道徳の教育に馴染まないとして文科省の抵抗もあるようだ。

 その裏には日教組主張の「ゆとり教育」を受け入れることでやっと関係改善できた今、道徳の教科化などでまたトラブルを起こしたくない文科省や、日教組の役員を入れた、中央教育審議会の煮え切らない態度が問題の進展を遅らせているようだ。

 私は道徳教育の成果が上がりさえすれば、その教科化については特に意見はない。
 ただその道徳教育については、文科省、日教組、学校関係者、政治家、教育専門家などが戦前、戦争直後には考えられないような社会環境劣化の問題の根底に何があるかを考えて適正な方策を建てて貰いたいと思うだけだ。


参照:カテゴリー → 教育問題

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