普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

首を捻るイージス艦事故の報道姿勢

2008-02-26 16:01:30 | 情報、マスコミ

 今までのイージス艦「あたご」の事故について報道が新聞やテレビを賑わせている。
 然しその報道姿勢、特にテレビの報道の仕方には首を捻ることが多い。
 それで彼等の報道姿勢について、おおよそ理解出来ることと、首を捻ることについて纏めてみた。

[ほぼ理解出来る報道と批判]
・今回の事故はイージス艦に主たる責任があるとの批判
・乗組員の行動、上部への報告の遅れ、防衛省体制の不備などについての批判
・漁船団はそれぞれ退避行動を取った中で清徳丸だけは被害にあった。
 この種の交通事故は加害者、被害者それぞに問題があって発生するのだが清徳丸の詳細の行動についての詳細な報道も批判もない
 これに日本人の「死者に鞭打つ」のを避ける日本人的な心情からこれがないのは致し方ないのかと思う。

[首を捻る報道と批判]
・破断した船体の残骸を横須賀の自衛隊基地に運んだことに対して、船体を偽装するのではないかと言う批判
 これは今までのところ直ぐ沙汰止みになったところを見ると単なるマスコミの猜疑心の現れだったのか。
・自衛隊側からの初期情報の混乱について情報操作の批判
 あのような大事故の後で、断片的に入ってくる初期情報に食い違いがあるのは当然だ。
 それより緊急の場合に、もし首尾一貫した情報が提供されれば、それこそ情報操作があったのではないかと疑うべきだ。
・事故から数日後からの情報の遅れや関係者口止めの噂について、自衛隊が情報隠しをしてると言う批判
 海上保安庁が艦内に立ち入り艦外との接触を禁止した状況で、いくら自衛隊の幹部でも、情報に入手のしようがない。
 これが逆に幹部が色々な情報を流しているとすれば、自衛隊と海上保安庁の癒着→情報操作を疑ってかかるべきだ。
・乏しい情報をベースにしてのテレビのパネラーの推理ごっこを含む余りにも一方的で繰り返し、繰り返しの政府、自衛隊の追求、批判

 これは新聞と違って、テレビは一瞬の情報伝達手段しかないので、「繰り返し繰り返し放送」するしかない事情もあるが、余りにも一方的な政府、自衛隊批判は反動として被害者側にも責任や問題行動がなかったかの批判になる。

 それが各種の掲示板上やブログ上、24日の「たかじんのそこまで言って委員会」のパネラー達の犠牲になった清徳丸への批判だ。

 つまり(私も理解出来る)マスコミが犠牲者の家族の心情を思いやって避けてきた批判を、余りにも盛んな加害者への一方的な批判が思いもよらない、被害者の批判を産んできたのだ。

 私は、このような衝撃的かつ重大な事故の報道に付いての放送は、被害者の家族の気持ちも考えて報道の仕方は慎重にすべきだと思う。
 批判も良いがはっきりした正確な事実に基づいて批判すべきだ。
 今回のケースで言えば、自衛隊幹部への報告の遅れ、その原因となる防衛省の体制の不備はいくら批判しても良いが、イージス艦内の隊員の言動についての批判は、海上保安庁の調査結果で出てからでも遅くないし、その報告に基づいた批判は大いにすべきだと思う。

[イラクでの三人の拉致事件]
 テレピの「繰り返し繰り返し放送」と書いた所で、私のこれと似たような事例を書いた、中東の紛争や戦争から学んだもの(5)[自己責任-メディアの対応
を思い出した。
 例のイラクで拉致され高遠さんら三名の家族の会見から「自己責任」問題に発展したことだ。
 多くの国民は拉致された家族の人達が記者会見で、三人がイラク入国禁止の勧告を無視して入国をした「責任」を棚に上げて、"繰り返し繰り返し"、彼らの生命を救うために自衛隊の引き上げをしてくれなど、好き勝手な事を言っているのに皆腹をたてていた。
 いやもっと正確に言えば、NHKを初めとするテレビが、同じ記者会見の場面を"繰り返し繰り返し"放送し、その結果国民は彼らの言い分を"繰り返し繰り返し"聞かされるうちに腹が立って来たのだ。
 多分、政府や与党の人達が「自己責任」問題を取り上げて、一番批判したかったのは、私たち一般国民と同様に高遠さんでなくて
・戦争が終わっても充分且つ安全に出来る筈の劣化ウラン弾の調査に行った少年
・救出は国の責任だと言って、その費用を出すのを拒否し続けたフリーの記者
・それと好き勝手を言う彼らの家族
のことだったと思う。

 「自己責任」発言について、政府や与党攻撃の使命感に燃えているマスコミが飛びついて以後、「自己責任」の言葉が独り歩きし始めた。

 彼らは純粋なボランティア精神で現地に行った高遠さん、そしてその業績の評価を受けても良い高遠さんの例を取り上げて(他の二人のことやその家族のことは言わずに)、彼女の純粋な気持ちや実績も考慮すべきだと政府や与党の人達の「自己責任」発言を攻撃した。

 私は、高遠さんを除く二人とその家族達が、マスコミの注目を浴びている中で、(多分国に対する、また二人を誘った自分の責任を感じて)長い間家に閉じこもっていた高遠さん、やっと立ち直ってイラクの隣国に入り、イラクに入ろうとしている日本人を、入らない様に説得するボランティア活動を始めた高遠さんが一番可哀相だと思った。
 つまりテレピが"繰り返し繰り返し"政府を攻撃するすることで高遠さんたち三人を擁護しているように見えて、それで舞い上がった脇役の二人はともかく、一番の主役の高藤さんの気持ちを傷つけていたのだと思う。

 イラクの拉致事件やイージス艦事故など事が衝撃的そして、重大な問題を含んでいる問題ほど、関係者に思わぬ方向に向わせる結果(このケースでは死者に鞭打つ)とならぬよう、マスコミ、特にテレビは意識してバランスの取れた、そして慎重な報道をして貰いたいものだ。

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