先週のNHKの視点・論点 「何が教育を誤らせているのか」で文化女子大学教授の野原 明さんが、今行われている小中高校の学習指導要領の改定に関連して、日本の教育を誤られているのは大学の入試方法の問題だと指摘していた。
その要旨は、
・今回の改訂では「ゆとり教育」の基になった「生きる力」をはぐくむ教育の基本理念は変えず、基礎的・基本的な知識・技能の定着を図るため、授業時間数を増やす、という方針だ。
・小・中・高等学校の教育現場でもそのことに関心が高まって来ているが、これからの教育が「自ら学び、自ら考える」子どもをはぐくみ、自ら課題を解決する子どもを育てる方向に変わっていくとは思えない。
・なぜならば、大学の入学試験が依然として知識の量や、計算能力を計る方式から変わろうとしていないからである。
・知識偏重の入試制度を改めるための方法として大学の入試にAO方式が取り入れられるようになった。
・然し、AO方式では、受験生に専門分野のプレゼンテーションをさせたり、面接に時間を掛けたりしている反面、高校での学業成績はほとんど選考の資料にされていないのが実情だ。
・そのために入学させたあと、学生の学力不足を補うために、高校教育の補習授業をしている大学が凡そ60%にも上っている。
・また、推薦入学で学生を入学させる大学が急速に増えており、これによっても学力不足の学生が多数入学し、補習授業が必要になるという状況だ。
・入学試験の安易な多様化は、中高校生の学ぼうとする意欲を低下させ、自ら学び自ら考える力を失わせている。
・本来、入試と言うのは、それぞれの大学が、自らの教育方針に合う学生を選ぶためのものであり、大学はどんな学生に来てもらいたいのかのメッセージを発信する絶好のチャンスでもある。
・然し事実は入試から教育の理念が抜け落ちて、大学経営のための手段になってしまったり、受験生集めの手段になってしまっているのではないか。
・大学入試の現状は教育そのものを誤った方向に向かわせているのではないか。これではいくら教育再生を叫んでみても、こうした状況が続くかぎり「日本の教育に明日はない」と云うほかない。
[現在の教育制度の問題点]
私は現役時代に約4年にわたり海外での設備保全技術協力のため3カ国に派遣され、退職後はボランティアで約20年近くにわたり、海外の技術研修員の世話を直接、間接に当たった。
その経験から、開発途上国の若い技術者に欠けているものは、技術は勿論だが、問題意識の薄さ、設備のトラブルを基本的に解決しようとする意識や経験の不足、その根底にある解決に伴う自己責任の回避であることを痛感してきた。
これは全く実際の社会経験のない日本の児童、生徒や学生にもそのまま当て嵌まるものだ。
その点から、中央教育審議会の目指す、基礎的・基本的な知識・技能の定着を図り、 「自ら学び、自ら考え」自ら課題を解決する子どもを育てる方向は正しくそして世の中の要望に応えるものだと思う。
そして野原さんが指摘したようにこの問題の障害になるのは大学入試にあると思う。
何故なら、児童、生徒の教育の当面の最終目標は大学にあるからだ。
大学が知識偏重の試験をすれば、生徒はそれに対応し、例えば工学部でAO方式に重点をおけば基礎的に国語、英語、数学などの基礎学科の勉強がおろそかになる。
増して入試希望者がを増やそうとして、入試問題を易くしたり、推薦入学を増やせば、生徒は勉強しないのは当然だ。
今の教育制度は野原さんがはっきり指摘していないが、今の「ゆとり教育」や「自ら学び、自ら考え自ら課題を解決する教育」が小学校から進学するにつれて、次第に詰め込み教育に重点が移って行く制度が問題だと思う。
私は今の教育の現状も考え合わせ、理想論だが次のような教育制度が良いと思う。
(以下、「自ら学び、自ら考え自ら課題を解決する教育」を「考える力]と略称する。そして教育の割合は大雑把な考え方を示す。)
[私の提案]
教育制度
小学校
躾け(30)、詰め込み(50)、考える力(20)
中学校
躾け(10)、詰め込み(60)、考える力(30)
高校(通常の進学校)
詰め込み(60)、考える力(40)
注記:
躾け教育を入れたのは、団体のルールを学ばせ、家庭の躾け教育の不足を補うため
詰め込み教育については希望者には補習授業等で一定の学力達成を保証する。
大学入試(次のいずれか)
・詰め込み(60)、AO方式 or 考える力(40)+共通一次試験
・詰め込み(40)、AO方式 or 考える力(60)+共通一次試験
・AO方式、考える力(100)+共通一次試験
どの大学も共通一次試験は必須とする。
大学は今までのような詰め込み中心の試験は一番公平で簡単だったと思うが、これから少子化による大学の競争が激しくなるにつれて、その卒業生の進路や社会での活躍状況が大学の選択の基準の中心となるかもしれない。
そのことを考えると、余程の有名大学でない限り詰め込み試験の限度を知るべきだと思う。
私立大学の補助金の出し方
大学の学部の性格と共通一次試験で一定の学力(例えば100点満点で50~60点)を持った学生の数を考慮して決める。
これは少し暴論だが、大学全入時代になり当然予想される大学のレベルが低下するのに、補助金を今まで通りに出して良いか考えるべきだ。
筋論としては大学卒業生の社会での活躍状態を見て補助金を出すのが一番だろうが。
参照:
教育改革への道(1)
教育改革への道(2)
教育改革への道(3)
教育改革への道(4)
教育改革への道(5)
小中学生の全国学力調査
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