普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

秋葉原の通り魔事件と大企業

2008-06-20 14:58:37 | 政策、社会情勢

  10日の秋葉原の通り魔事件と18日に秋葉原の通り魔事件と教育のブログであの忌まわしい事件の背景を考えてみた。
 今日は彼の働いていた大企業の問題点について考えてみることにする。
 彼は日研総業の派遣社員として、超優良企業のトヨタ自動車グループに属する関東自動車で働いていたそうだ。
 日本の企業の模範とも言われているトヨタグループの会社であるだけに、そこで働いていた彼の起こした事件の背景を考えるのに同社は象徴的な存在のような気がする。

[一億総中流意識を持たせた企業]
 戦後からの日本の復活には日本に有利な経済環境、勤勉で優秀な国民の頑張りなど多くの理由があったが、大企業とそれを中心とする中小企業とそこで働く従業員の力も大きな要因であったのは間違いないと思う。
 そこには一部の例外を除いて、家族主義的な経営、それから生じる従業員の忠誠心、それに基づく、自主管理活動、改善運動、トヨタのジャストイン・システムに代表される業務の合理化、銀行と他企業との強い結びつきなど数え切れない要因があった。
 今回の事件に関連して言えば、派遣は特殊技術者や才能を要するものに限る事、残業は確か月に80時間以上、残業代を払わないのは違法とされるなど、従業員の保護は不完全だったかも知れないが今よりはるかに従業員向きだったと思う。
 それと労働組合も今以上に強くて従業員が不利なならぬような監視していた。
 それには問題もあったが、それが企業の製造ラインの合理化の原動力になり、改善活動と相まって世界有数の製造管理システムの確立に繋がった。
 その結果、全国民が殆ど全てが中流意識を持つと言われ、世界から最も成功した共産主義と言われる程になった。

 これに対してマスコミや批評家の一部からは、日本の成功の原因は「政府が何もしなかったからだ」と揶揄するような発言もあったように、大企業を中心とする中小企業とその従業員の頑張りが大きかったと思う。

[グローバル化の道を歩む日本]
 バブルは崩壊して一挙に国民総中流意識は崩れた。
 そこで、小泉さんと竹中平蔵さんのタグによる所謂構造改革が始まった。
 詰まり一部の人達が揶揄していた動かなかった政府が動き始めたのだ。
 それも米国の年次改革要望書通りの日本への市場開放の要求に沿う「聖域なき構造改革」だった。

  Wikipdia によれば、(→印以下の結果は私の見方)
小泉改革とそのマイナス面
企業と銀行間の株式持ち合い制度の廃止などの金融改革→今回のサブプライムローン問題のように外国の影響をダイレクトに受けるようになった
労働者派遣法の規制緩和→非正規従業員の増大→従業員の平均収入の低下と賃金格差・社会格差の発生→社会不安の発生の可能性
地方分権とは名ばかりで地方への交付金の減少だけで終わる三位一体と称する改革
→地方の疲弊
医療、社会福祉への予算削減→深刻な医療崩壊の傾向、今直面している年金、後期高齢者医療制度の問題
大企業および外資系企業を優遇する政策→日本の産業を支えた中小企業の能力低下
など全て国民生活に直結することばかりだ。
 そのほかにWikipeidaは触れてないが、小泉改革とは別に従業員不足に困った中小企業の外国人研修制度を利用した、研修員の従業員化の問題がある。
  そしてそれが違法行為として摘発されていること実例、そしてこれも優良企業のトヨタの地もとの愛知県で多発していることだ。

小泉改革のもたらしたプラス面
 同じWikipediaによれば
・大企業および外資系企業の業績は急速に好転し、小泉さんが首相に就任時の失業率 5%台から、退任時には、4.2%となった。
・経済は、ニューエコノミーへの転換により活性化し、景気は上向いた。
・構造改革特区では地方での限定的な規制緩和を行い、一定の成果を挙げた

 失業率の低下は少子化→労働力不足の要因と非正規労働者の増加→賃金格差や、経済の活性化は発展する中国への輸出の増大が大きなファクターを占めている。
 これを考えると、唯一のプラス面は構造改革特区だけと言う情けない状態だ。

中国の影響
 但しこの一連のことには大きな要因があり、全てが小泉さんだけの所為ではない。
 詰まり隣国の中国を中心とするBrics諸国の台頭だ。
 特に中国は小平さんの一国二制度と言う市場経済主義の導入とそれからの急速な発展だ。
 しかも中国は膨大な労働人口を抱えしかもその給与水準が日本よりはるかに低いのを利用して急成長を遂げてきた。
 そのためにその隣国の日本企業は、相対的に低下してきた競争力を維持するために、労働者派遣法の規制緩和など生き残りのために必死となっていることだ。

グローバル化に伴う経営者の考え
 それと経済のグローバル化に伴い経営者の考えの変化も忘れてはならない。
 最近良く問題になっている、従業員の自殺の増加の一因となっている成果主義の導入、「従業員の平均賃金は低下しているのに、経営陣の平均収入は増加し、企業の配当も増加している」事実だ。
 これは米国の経営陣や外国の株主の考え方そのままだ。

[今の企業の現状と経営陣]
・大企業を支えてきた中小企業の力の低下
・企業の倫理観の低下または欠如
・レイオフ、成果主義、金が全ての考えに伴う伴う家族主義的な経営の破綻→従業員の忠誠心の低下→自主管理活動の低下の危険性
・成果主義のための長時間労働、サービス残業の増加→精神疾患や自殺の増加
・非正規規労働者の増加→賃金格差や社会格差の増大→秋葉原の通り魔事件のような社会不安の発生
・事件を引き起こした加藤被告の言う、「企業対する忠誠心のないロボットのような」不正規従業員の増加→彼らの潜在能力の無視

日本企業の今後の戦い方
 日本企業は今までの企業を支えてきた従業員の企業への忠誠心や、自主管理活動に代表される従業員の潜在能力の開発とその利用、大企業をバックアップしてきた中小企業の不振、などの基本的な戦闘力を無くして、これからどうして膨大な資本を持つ欧米やインド企業、低賃金を武器とする中国企業と戦って行くのだろうか。
  成果主義一本槍で戦えるのか。
 非正規従業員を今までのように場当たり的に使ってこれから勝てるのか。
 その潜在能力を昔のように引き出し活用できないのか。
 それで彼らのモチベーションを高めれば、企業ににも貢献するし、今回の様な悲惨な事件の発生防止と言う社会貢献にも繋がる筈だ。

企業を通じての社会貢献
 一昔は「企業活動を通じての社会貢献」と言うことが良く言われた。
 そして一部の人達は国民に「一億総中流意識」を持たせたのは政府の力でなく企業だといった。
 今回の秋葉原の通り魔事件について企業としてどうあるべきか、特に派遣社員を使用する側の企業の意見、それを代表する経団連の意見を是非訊きたいものだ。

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