先日NHKのラジオで地方再生へ頑張る一人の若い女将さんについての放送があった。
彼女は島根県大田市の温泉津(ゆのつ)温泉の伝統的な吉田屋で働く山根多恵さんだ。
山根さんは大阪で地域活性化のアドバイスの仕事をしていたが、明治から始まった老舗旅館の温泉津の吉田屋が経営者を公募していることを知り、応募し採用されて彼女らしい活躍が始まった。
山根さんのやり方の独特な所は、
・彼女を含む約20人のスタッフは全て20代の若者で占められている(旅館専任は5名)
・料理はすべて手づくり、野菜は自家製か周りの農家さんから仕入れたもの
・営業日は、金、土、日に限る
・残りの月~木曜日はスタッフは自家菜園での農業、岩見銀山など周辺の地域でボランティア活動をする
なお月~木の空いた部屋は彼らの活動に参加しようとする人達への使用を認めているそうだ。
彼女は今は旅館の切り盛りはグループの25歳の女性にまかせ、自分は「大女将」としてその後見役となり、対外活動を指揮しているそうだ。
実際の対外活動としては、
・石見銀山遺跡の付近で生い茂る竹に困っていたのを、竹の伐採から運搬、加工、流通までの過程の流れ作りを目指している。
・東出雲町、島根大学との産学官の連携の組織を設立し、東出雲町の遊休農地を活用して、農産物の生産~加工~流通~販売事業に取り組む。
などの実績があるそうだ。
彼女の理念についてはラジオでは出なかったが、吉田屋のホームページによると、
・旅館・吉田屋のもうひとつの顔は、「若女将塾」と称した人材育成の仕組みです。
・地域の問題解決をすることを誇りや生きがいとし、社会をよくする動きをつくっていくこと・・・。
・ミッションは、地域に若いマンパワーを注ぐこと。自立する事。知恵を出すこと。
・地域で活躍する一人の人間として、自分が何ができるか?を、仲間と共に働くことで考えていきます。
・私たちが実践する「人々がイキイキと働ける環境創り」を社会のモデルとして全国へ、世界へ発信しています!!
と如何にも若者らしい夢に満ちたものだ。
[私の意見]
彼ら若い人達の動きは称賛に値するもので、年寄りの眼から見て若さ溢れる行動力など羨ましいばかりだ。
然し公平にみて彼らの運動は山口県まで拡がっているようだが、それでも地域のほんの一部に限られているし、それがどれだけ発展し継続して行くか判らない。
その一方彼らの活動は次の様な多くの問題を含み、また多くのこと示唆している。
為政者へ
・地域の実情に適した政策
地方再生といっても、都市近郊~山間僻地、広大な耕地を持つ北海道~棚田主体の山村、産地の消費者直結~従来型の流通システムなど多くの条件があるので、今問題の「大規模農業に資金援助しその他はカット」などの国の一律なやり方は通らず、地方再生には地域に適した様々の方法を考える必要があるが、山村留学、棚田オーナー制度と並んで、彼女らのやり方も参考にすべきだ。
・若い人達の考え方の変化への対応
地方疲弊の原因は若者の流出があるが、彼女らの活動はその全く反対の考えの若い人達もあることを示している。
特に若者の流出の問題の出る以前に、農村の花嫁問題(農村の女性が農業を嫌い都会に出たがる)があったが、彼女らのグループの殆どは女性だ。
詰まり若者の考え方が一昔とは変わりつつあるのかも知れない。
このような例はごく一部かも知れないが、農山村の高齢化が進む中で、若い人達の考え方の変化を為政者が見落とずに、それを活かして如何に農山村に若い力を取り込むが考えるできだと思う。
若い人達へ
極端な例だが、秋葉原通り魔事件の犯人の気持ちが判ると言う人達に関連して言えば、彼女らは若い人達には非正規従業員として疎外感を感じながら働くのも仕事、彼女らのように良い自然環境で生き生きとして働くのも仕事と、若い人達には色々な他の選択肢もあることを示している。
収入の面では或いは工場で働く非正規従業員の方が多いかも知れないが、人は金ばかりでなく、自分の生き甲斐の為にも働くものだと言うことを、単調な仕事を続けた人は実感として感じていると思う。
勿論、これは田舎の暮らしに限るものではなくて、都会の町工場や個人経営の商店などでも人間として働ける、そして自分を活かして働く道はいくらもある筈だ。
昔の景気の良いときに比べれば、はるかに厳しいだろうが若い人達の前には多くの選択肢があると思う。
どうか何事も他人の所為にしないで、彼女らの理念のように「自立し」「知恵を出し」て考えてはどうだろうか。
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