[ピントが外れている日本?]
・昨日のNHKスペシャル「追跡・秋葉原の通り魔事件」で犯人と同年代の人達のアンケートで、犯人の言う「非正規従業員の不安定に身分に対する不安や危機感」、「彼の感じていた孤立感」に共感を感じると言う人達が多く居た。
(ネット上では犯人を英雄視する書き込みもあるそうだ。)
これに対して泉信也国家公安委員長が「日本は病んでいる」(正確に言えば「日本は病みかけている」と私は思う)との発言があった。
・それと同じ日のテレビ東京の「ビジネスサテライト」では商品の買い替えサイクルを伸ばす「買い替えない族」が多数を占めていること。
それに対して消費者の心理が物でなくて、旅行や教養など自分自身を高める方向に向いているのではないかと分析していた。
・同じ日の新聞では、日本商工会議所が中小企業の人手不足解消のために、外国人の単純労働者の受け入れを求める報告を出した(経団連では否定的な立場)との報道があった。
。
これに関しては既に自民党の中川秀直さんが「一千万の労働者の受け入れを発表して論議を巻き起こしている。
政府はの経済政策の基本を経済成長と輸出と共に内需の拡大に重点を置いている。
これらの事実を一括りで考えると、何か違和感がする。
どこかピントがずれてはいるようだ。
内需拡大
・内需拡大と言うが私のような年寄りの家では、物を買っても置く所が無い。
物余り時代の人達は消費から自己投資を考え始めている。
唯一の希望は何もかも揃えねばならない新婚家庭だが、少子化、晩婚化、非婚化?でそれも余り期待出来ない。
非正規従業員などの増加で国民の平均収入が減っている。
そんなことで内需拡大などできるか。
それどころか所得税増税論議が始まり、昨日の新聞でも経団連がその提唱をしている。
外国人の単純労働者導入
・外国人の単純労働者を入れる前に、少子化対策をして日本人の人口の少なくとも減少を防止すべきではないか、高齢者の有効活用はできないのか。
・増大する日本人の非正規労働者の取り扱いで「日本が病みかけ」始めているのに、大量の外国人、しかも単純労働者が入ったら日本社会はどうなるのか。
[大企業の変質]
小泉さん始め歴代の政府の人達は昨日書いたように大企業の優遇政策を取ってきた。
その理由は大企業が儲かれば、それにぶら下がる中小企業が恩恵に与り、国庫が潤うと言う理屈だった。(勿論、共産党が言うように彼らは自民党の大きな支持母体でもあることも優遇の理由の一つかもしれない。)
その政府が頼りの大企業も変質してきた。
その最大原因は中国と言う巨大でかつ強力なライバルの台頭だ。
それと小泉さんの市場経済主義、経済のグローバル化に伴う経営者の意識の変化だ。
・非正規従業員の使用によるコスト削減→社会格差の発生
・かっての企業の倫理感の低下または喪失→もう見飽いた謝罪会見
・社内教育制度の廃止または縮小→技術伝承問題の発生
・成果主義導入による社内競争の激化→精神疾患、自殺の増加
・コスト削減の名の大企業の下請けイジメ→中小企業の衰退
モラルと教育力の低下
以上の総合的な原因は大企業のモラルの低下と社内の教育力の低下だ
18日のブログで紹介したように、一昔前に、朝日新聞が「若い人達が社会に出れば、企業で彼らを教育をしてくれるので、我々の少々行き過ぎた報道や主張も、若い人達へは丁度バランスが取れるからいいのだ。」との言い訳染みたコメントををする程企業には社員の教育力があったのが、多くの企業がモラル低下とともにその教育力の殆どを自ら放棄したのだ。
小泉改革の影響
一方それに対応する教育制度は、何故か各方面の抵抗にあって遅々として進まない。
そのシンボル的なものは道徳の教科化と言う常識的なものさえ未だに実現出来ない。
小泉さんは小さい政府を目標にして諸規制を廃止し、米国の年次要望書に従って経済のグローバル化を進めてきた。
そしてそれなりの成果も上がったし、昨日書いた様に、色々批判のあるものの内には中国などの新興国の台頭という彼にとっては不幸な偶然もあった。(それに対応するのが政治とは思うが。)
然し彼の改革の一番の問題は、国民のモラルの低下と、企業で言うモチベーションまたはやる気の低下だ。
欧米の日本の考え方の違い
欧米流で言えば、企業の成り立ちは「投資家」、経営者、と「設備と従業員」だ。
詰まり従業員は人でなくて設備と同等のものとしか考えられていない。
だから平気でレイオフをするし、従業員は厳格になマニュアルに基づいて動くロボット扱いするのを何とも思わない。
日本ではバブル崩壊までは(企業によっては今でも)従業員は「企業という家族」の一員として、(法的には間違いだが)会社の設備を自分のように思って、その故障があれば自発的に直すし(欧米では規則違反)、それでなお問題があればその改造を考える(欧米では職務権限逸脱だ)。
それが自主管理活動であり、改善活動の原点だ。
つまり従業員はロボットでなくて人間として扱かわれている。
だから従業員も設備の改善活動などで自己啓発し、それが認められることでより一層そのモチベーションが上がる。
それが日本の文化だし日本人の持つ価値観だ。
そして一般の人達も非正規従業員も人間と見ているから、彼らの立場に同情があつまる。
ロボット化した従業員をそんなものだと思い、企業の業績が悪いから従業員が馘になるのは仕方がないと思う欧米とは日本は違った文化を持っているのだ。
然し今の日本の企業では日本人の持つ価値観とまったく異なる、「投資家」、「経営者」、「設備と従業員」と「ロボット並の非正規従業員」で企業の成り立っているのだ。
そこで非正規従業員に孤立感が浮かぶのは当然だ。
昔は彼らは下請けの形で入るので、客先の社員との待遇の差の不満はあっても、グループの一員として孤立感を感じることはなかった。
[日本のこれから]
秋葉原の通り魔事件に関連したことで言えば、
政府のあり方
・小さい政府と規制の排除、後は企業や個人の自己責任でよいか
企業体質の変質をそのままにして良いのか
・経済発展が今後進むか否かを見極め、その対応策(輸出か内需の拡大か、物作りか、金融か)を考える
・少子化対策、高齢者の雇用を今までのようにを適当にするのか、もっと積極的にするのか
・外国人の単純労働者を入れたときの問題点を探り、その対応策を立てる
・日本の教育を現実にそくしてものにする。
道徳の教科化を推進する。
・種々の仕事をする若者を紹介するNHKの「平成仕事図鑑」のような番組を拡充する。
若い人達がなにも派遣会社に登録して、大企業でロボット的な仕事をしなくて中には小企業でも将来の希望があり、そこで人間的な仕事も出来る会社も多いこと知らせ、その選択肢を拡げる。
企業のあり方
・日本人の価値観にあった考え方と組織での競争力の強化はできないか、それとも欧米流にグローバル化するか
・倫理観の向上、企業活動を通じての社会貢献
・仕事を通じての従業員の教育(技術とモラル)
・非正規従業員を(出来れば昔のような企業家族の一員のように)人間として扱い、その潜在能力を発掘、活用できないか
これらのことを「病みかかっている日本」の現状を踏まえて、政府、与野党、経団連など財界のリーダー達が膝を交えて検討し、党や自分の属する団体の利害を離れて、日本として(800兆の借金のように)後になって後悔しないように適切な対策を取る必要があると思う。
このブログを、より多くの人にも見て貰いたいと思っています。どうぞご協力をお願い致します。↓
人気ブログランキングへ
政治ブログへ