今回の米国の北朝鮮のテロ支援国指定解除の決定について、日本は独自の外交を進めるべきだとの意見が多い。
それに関して、拉致問題と北朝鮮の核問題についての今までの経過を Wikipedia で調べてみた。
その個々の問題点については参照資料を見て頂きたい。
[拉致問題と北朝鮮核問題の歴史]
・2002年9月17日:小泉首相と金正日国防委員長が「日朝平壌宣言」に署名し、国交正常化交渉を再開することで合意
・2002年10月4日:北朝鮮を訪問した米大統領特使に対し、「核爆弾の保有を行うためのウラン濃縮計画を持っている」との発言
米国並びにKEDO(下記注記参照)はこれに反発、代替炉の建設並びに重油の提供をストップ
・2002年10月15日:5人の拉致被害生存者が一時帰国を条件に帰国が実現。
・2003年11月:KEDO理事会は軽水炉の建設を2004年10月まで停止することを決定
六カ国は以後の「北朝鮮の核開発に関しての査察」について協議
・2004年5月22日:小泉首相と金正日国防委員長が2回目の会談
・2005年2月10日:北朝鮮政府が6カ国協議の中止と、核拡散防止条約からの脱退、さらに核兵器保有宣言
・2006年10月:北朝鮮が核実験を発表
・2006年11月7日 米国中間選挙で、共和党が上下両院とも敗退
Wikipedia はブッシュ大統領は北朝鮮の核実験、イラク侵攻の失敗と中間選挙での共和党敗北に直面して、北朝鮮の核問題で「変節」したと書いている。
[私の意見]
今までの日朝交渉
小泉さんと金正日さんとの会談は、色々な批判もあるが、日本にしては珍しく田中均さんを中心とする、日本独自でかつ官邸主導型の外交で、「日朝平壌宣言」の署名、国交正常化交渉を再開など一定の成果を上げた。
然し会談とほぼ同じ時期に北朝鮮の核問題が現実となった。
この問題で北朝鮮との強い対決姿勢を取っている米国にとって、日本と北朝鮮の間で融和ムードが出る事は米国にとってマイナスだった。
勿論、日本に取っても北朝鮮の核問題は国の安全保証に関わる問題なので、米国の姿勢に協調するしかなかった。
米国一辺倒の小泉さんは米国に追随し、その後、拉致問題で名を挙げた安倍さんも米国の強硬姿勢に併せて強い経済制裁を実施した。
その間、拉致問題への北朝鮮の不誠実な対応もあり安倍さんの政策は国民の大きな支持を得た一方、影の立役者だった田中均さんは強い批判を浴びて日朝交渉の場から去ることになった。
北朝鮮との繋がりが途切れた日本が、拉致問題に対して出来ることは、北朝鮮への経済制裁と米国や中国それに国連に対する協力要請などしか残らず、実質的な問題解決への進展は殆どなかった。
[これからの日朝交渉]
そして今度の米国の北朝鮮のテロ支援国指定解除の決定だ。
今、日本に取って出来ることは
・核問題の解決が遅れ米国の指定解除が遅れるのを期待する→文字通り期待するしかない・指定解除になっても今までのように米国の支援を要請する→武力行使の可能性の消えた米国の北朝鮮への圧力の効き目は殆どない?
・経済制裁を続行する→効果激減は眼に見えている
・「日朝平壌宣言」に基づき交渉を再開する
・または以上の幾つかの組み併せ
「日朝平壌宣言」に基づく交渉の再開は、現在最も確実な拉致問題解決の方法だろう。
小泉さんの時の交渉は少なくとも国と国の対等の立場の交渉だった。
その後、色々揉めたが、それは国の交渉ごとにには付き物で、核問題がなければ国交正常化は何時か実現できていただろう。
正常化に当たっては、朝鮮占領の謝罪と、賠償金の支払い(私個人は認めたくないが)、そして残りの拉致家族の帰国がその主な議題になっていただろう。
これを拉致問題に限って考えれば、賠償金を払って国家犯罪で拉致されて家族を取り戻す形になるが、両国の将来を見据えた日本としての大局的な判断として国民に受けいれられただろう。
今回の米国の態度の変化で、政府関係者は拉致問題を促進させるカードとして、大型の経済援助を上げている。
然し交渉をするにも小泉さんの会談のときと状況が全く違う。
核の問題で日本独自の交渉の和平交渉が出来なくなった。
仕方なく、米国の強硬政策に併せて、経済制裁を行い一方拉致問題解決の仲介を米国は勿論中国、韓国に頼むしかなかった。
そして今度の米国のテロ指定解除の動きで生じるであろう日本を除く他の4ケ国と北朝鮮の間の融和ムードから日本の今までの強硬政策が使えなくなった。
そんな日本が大型の経済援助を持ち出しても、北朝鮮は立場の悪くなった日本の足元を見透かして交渉に当たるだろう。
そして交渉が纏まって出る結論は、日本が経済援助と言う名の金を払って拉致家族を取り戻すことになるのだろう。
詰まり国家犯罪を冒した北朝鮮の一方的な勝利と言う結果に対して、国内からの反発を受けるのは避けられない。
然しこれは今まで全て米国まかせだった日本が、今後独自の外交の道を歩くために学ばねばならぬ貴重な教訓として受け取るしかないような気がする。
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注記
KEDO:米朝枠組み合意に基づいて、北朝鮮に核拡散のおそれの低い軽水炉2基と完成までの期間の燃料を日本と韓国の費用負担により無償で提供することによって、北朝鮮が保有する黒鉛減速型炉と核兵器開発計画を放棄させることを目的として設立された組織。
参照:
北朝鮮核問題
北朝鮮による日本人拉致問題
日朝首脳会談