最高のサプライズ映像をずいぶん前に観たことがある。
俳優の渡辺裕之が食べ歩き番組で東京奥多摩の食堂を訪ねるという企画だった。
気難しそうな大将(オヤジ)が「こんな山奥でやってるけど、ウチのラーメンは美味しくておかわりする客もいるんだ」と渡辺にぶっきらぼうに話す。
ふーん、と言いながら出されたラーメンを黙々と食べ続けた渡辺は、どんぶりを大きく持ち上げて汁を飲み干すと、振り返って言った、「オヤジ、おかわり!」
大将は驚いて素の表情になり、思わず「ホントですか?」と丁寧語になっていた。
機転なのか、男前なのか。ともあれ、美味しそうに食べるもてなし、たくさん食べるもてなしも、あるのだな、と感心した。
「エイス・ワンダーとは、『世界の七不思議』に次ぐ、いや、それを超える不思議・驚異を指す表現で、たとえばキングコングなどは映画の中でそのように評されていた。でも、僕にとってのそれは、きみそのひとで、加えてきみがあんな小さかったNPO法人なごやかにひょっこりいらしたことだ。」
「TPOは、VAN Jacket inc.(株式会社ヴァンヂャケット)創設者の石津謙介が1963年に造った和製英語だ。
僕らのひとまわり上の年代はいまだ石津センセイの信奉者が多く、インタビューなどでその世代であることを誇らしげに、熱烈に語っているのを見かける。
ある朝たまたまそんなインタビュー記事をまた読んで、なにもそこまで語らなくても、ひとはひと、自分は自分でしょうと思ったのだが、その日の午後、とある会合に出席したところ、隣町の首長の祝辞を代読する方が出席者の男性の中でたった一人だけノー・ネクタイで、代読前にそれをもごもご言い訳しているのを見て、ああ、TPOって大事だな、と改めて感じた。僕なら祝辞をそのへんに置いて会場から逃げ出すだろうね。(きちんとボウタイ締めて行ったけど!)」
久しぶりにラウンドカラーのクレリックシャツを買った。あまりにきれいなので、手結びのボウタイを締めたら、気分はすっかりニック・キャラウエイだ。
どこにも物好きがいるらしく、「華麗なるギャツビー」の3本の映画化作品の主要キャストを並べた画像データ(下)がある。
こうして改めて眺めてみると、3本とも順当なキャスティングと言える。
面白いことに、3段目のニック・キャラウエイ役の二人、2000年版のポール・ラッドと2013年版のトビー・マクガイアはほろ苦い青春映画「サイダーハウス・ルール」(1999年)で共演しており、また、マクガイアはマーベルの「スパイダーマン」で、ラッドは「アントマン」で、それぞれ颯爽としていない主役を演じている。マーベルのキャスティング恐るべし。ついでに言えば、3代目ハルクにマーク・ラファエロを抜擢したのも、驚いた。
話がそれた。
三人のニックはいずれも目が深いのが特徴だ。主役のギャツビーのふるまいを隣りで見つめるまなざしが。
僕は時々思う。もし1980年代後半に「ギャツビー」がリメイクされていたら、ニック役はマイケル・J・フォックスが適役だったろうな、と。
「愛と栄光への日々」や「再会の街/ブライト・ライツ、ビッグシティ」でのシリアスな演技はとてもよかった。
コメディ映画でスターダムに登りながらどこか目が深く表情に影があるのは、のちに難病を発症してしまうためか。それを隠して演技を続けていたからか。
「愛と栄光への日々」(1987年)より、エンディング。
奔放な姉(ジョーン・ジェット)を見つめる弟フォックスの目が深い。