ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

追悼ゴダール

2022年09月13日 | 珠玉

  本日13日、91歳で死去したと報じられた仏ヌーベルバーグの鬼才ジャン・リュック・ゴダール監督は映画「軽蔑」の撮影中、難解なストーリーのせいかたびたび機嫌を悪くする気分屋の大女優ブリジット・バルドーのために得意の逆立ちを披露し、それで笑いを取って撮影を進めたという。
やるな、ゴダール。彼は撮影を進めたかったのか、それとも、バルドーの笑顔が見たかったのか。断然、後者だと思う。合掌。

 

 

 





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底脱ノ井

2022年09月12日 | 珠玉

 「千代能がいただく桶の底ぬけてみづたまらねば月もやどらず」

 

 鎌倉の観光名所に「鎌倉十井」(かまくらじっせい)という、由緒ある10か所の井戸がある。

そのうちの一つ、扇ガ谷の海蔵寺の入口にある底脱ノ井(そこぬけのい)は、なかなか面白いいわれがある。

井戸跡の立て看板にその来歴が記されている。

 

 この安達千代能(野)のわだかまりとは、鎌倉時代末期、元寇の後、父である安達泰盛と一族が政敵平頼綱に討ち取られ、夫北条顕時も失脚して下総の国に蟄居させられた「霜月騒動」によるものだ。彼女自身は出家して無学祖元(円覚寺の開山)の弟子となった。

 その後、平頼綱が「平禅門の乱」で討たれると北条顕時は幕政に返り咲き、生涯にわたって執権北条貞時に重用された。金沢文庫の創設者とも言われている。

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香蘭社

2022年09月09日 | なごやか

 来月オープンの事業所の準備を手伝っていた私は玄関でばったりNPO法人なごやか理事長に出くわした。

両手にぶら下げていた大きな紙袋をそっと床に置くと、彼はもう一度車まで戻り、同じ分量の荷物を運んできた。

お持ちしましょうか、と声を掛けると、うん、台所まで運んでほしい、とのこと。

私も先ほどの理事長に倣って荷物を床にそっと降した。

「事業所の茶器集めは僕の担当らしくてね。」

少し言い訳がましく前置きすると、彼は紙袋から次々と品物を取り出し、ダイニングテーブルの上に並べ始めた。

私は目を見張った。

藍色の銘々皿、薄緑の湯飲み茶碗、白い陶製の茶托、色違いのカップ&ソーサ―5客、などなど。

素敵ですね!思わず声が弾んでしまった。

「ありがとう。今回は香蘭社のもので揃えてみた。家からもだいぶ持ち出したので、ずいぶんな量になって、壮観だね。」

そう言いながら、理事長はひときわ大きな茶ひつを取り出した。

「これは見てのとおり津軽塗。見事でしょう?ずいぶん前に頂いた物だけど、高かったろうね。それと、新しく同じ津軽のお盆と急須托を買ってみた。

きみには以前も教えたけれど、『しつらえ』はとにかく大事。お客様がいらした際には、これでハレの日を演出して差し上げようね。」

 

 

 

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「アキラとあきら」(再掲)

2022年09月05日 | 日記

「僕の一族は小さな町で代々家業を持った男たちが多く、サラリーマンになった者は数えるほどしかいなかった。

けれども、みな揃って商才がなかったようで、倒産して夜逃げしたり、廃業したり、中には首を吊った者もいた。

子供のころからそういった出来事を見聞きして、倒産とは何て恐ろしいものだろう、と感じていた。

かく言う僕の父親も、組合長に祭り上げられた当の組合がまもなく破綻し、その余波で家業が傾いて、さらには父親が心労で倒れ、当時お気楽サラリーマンだった僕が退職してUターンせざるを得なくなった。

家業って、うとましいね。それで家族が生活してきたのだけれど。」

 

 池井戸潤の小説「アキラとあきら」は海運会社の御曹司に生まれた階堂彬(あきら)と、父親が営む零細工場の倒産を経験している山崎瑛(あきら)の二人のあきらが一流の銀行の同期入行員として出会い、切磋琢磨しながら、やがて階堂の家業の倒産を阻止すべく死力を尽くす、という内容だ。

2017年には向井理と斎藤工でテレビドラマ化されている。

弟に社長を任せて傾いた家業を、お前が社長に就いて立て直せ、と山崎が迫るが階堂は煮え切らない。山崎は激して言う、「御曹司のお前は甘いんだよ、倒産は地獄だぞ!」と。

(2020年12月)

 

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ステッドラー

2022年09月02日 | 賢治先生

 娘がまだ小学生だったころ、毎週のように鉛筆を僕にくれた。

聞けば被災地の小学校に届いた支援物資を各人に配分したものだった。

そんな心のこもったお品物を受け取るわけにはいかないよ、とはじめ断ったのだが、どうやら彼女はお気に入りのシャープペンシルの方を使いたいらしく、パパ、鉛筆が大好きでしょ、と譲らない。仕方なく、では代わりにありがたく使わせていただくね、と父親が折れた。

その鉛筆の中で困り物だったのが、よく小学校入学時に祖父母が贈る児童の名入りのものだ。さすがにそれは少し気味が悪くてこっそり捨てた。もともと僕は社名などの入ったノベルティグッズは使わない主義なので、無理やりその範疇に入れて処分した。

そう言いながら、4ダースあった娘の名入りのB鉛筆は長いことかかってやっと最近使い切った。すでに義父は亡くなり、娘は二十歳を過ぎていた。

 今、仕事机の上のペン皿は、ステッドラーの鉛筆に占拠されている。廉価なトラディション、マークシート試験用の白いボディのステッドラー・ホワイト、製図用の青いルモグラフを二本ずつ削って並べると、一本一本はドイツ製品らしい質実なたたずまいなのに、不思議と机上が華やいでいる。

 

最近買ったステッドラー・ノリカ50本入り。このまま机上に置きたいくらい。

 

 

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