電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋昭男『仕事文をみがく』を読む

2013年12月06日 06時02分09秒 | -ノンフィクション
岩波新書で、高橋昭男著『仕事文をみがく』を読みました。前著『仕事文の書き方』(*1)で、テクニカル・ライティングの流儀をもっと拡大し、一般の仕事文の書き方としてまとめたのを受けて、本書では文章の構成や論理性、簡潔さと言葉の平明さ等の点から、説得力のある文章づくりを演習します。

本書の構成は、次のとおり。

1. 書く技術は思考力を育てる
2. 帰納法を活用する作文技術
3. 演繹法を活用する作文技術
4. 帰納・演繹の応用と「考える力」
5. 平明・率直が説得力をもつ
6. 論文の論理構造

この中で、実例として取り上げられているのは、「天声人語」であり夏目漱石の「三四郎」や「こころ」であり、いずれも練達の文章であるわけですが、これを仕事文という観点で見た場合の優秀さ、というところがおもしろい。

一方で、「5. 平明・率直が説得力をもつ」の章で紹介されているスワン・ベーカリーの話が興味深いものです。養護学校の先生だった小島靖子さんが、「ふつうのこどもよりもゆっくり時間をかけて成長」している知的障碍のある若者たちの、それぞれの得意なところを生かす形でベーカリーを運営し収益をあげ、もうすぐ黒字化という段階に至っている話。彼らが働いて得る収入が1ヶ月に7万から10万だといいます。ふつう、福祉作業所等で得られる報酬がいくらぐらいなのかは知りませんが、たぶんスワンベーカリーの報酬は破格なのではないか。「商売として、正常な利益をあげ、その実績を維持することによってのみ、働く若者たちにも、もっと高給を分配できる」とする考え方は、ごく自然なものです。
もちろん、人口の多い大都市圏で成り立つ考え方が、パン屋さん自体がなかなか成立しにくい、人口密度も人口規模もごく小さな田舎でそのまま成り立つとは思えませんが。

(*1):高橋昭男『仕事文の書き方』を読む~「電網郊外散歩道」2009年10月

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