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戦時中の母の体験として、実際に中国戦線に兵士として参加した叔父さんから、この近藤さんのお話しのような体験を聞いたという。中国の村を焼きつくし、女性たちをレイプし、殺してきたのである。その第32軍が沖縄で日本防衛の盾として任務に就いたとみていいのだろうか?中国・沖縄戦線を体験し、生き延びた近藤さんの発言には重みがある。また桑原さんの証言は、昨今美化されている特攻隊の物語の真実の姿に迫っているようだ。上官から特攻に送られる人間とそうではない人間がいたのである。差別化がどの社会にもあったことは想像できるが、ゼロ戦と死ぬために選ばれた若者たちの余儀なくされた命の痛ましさが迫ってくる。「勇ましい建前で陶酔することは簡単だ」と氏は述べている。「上官は出撃せず、上官に目をかけられている人間は指名されなかった。強者が弱者を矢面に立たせることを実感した」と率直に氏は話している。