(口なしの花)
浜辺の君は映画スターのようにハンサムだった!
浜辺で歌三線を弾きながら遊んだ
介護タクシーを借り切って、ビールもおやつも買い込んで
浜辺に向かった
3人で独占したビーチで、さっちゃんは音色のいい三線を出し、
作詞作曲した歌を歌った
歌って歌って、いしょに手拍子をあわせた
サングラスをかけ、入れ歯が輝く君は映画俳優に負けないハンサムで
笑顔がはち切れ、砂が舞った
僕だけのためのミニコンサートだ!
さっちゃんに首ったけになった君がいた
苦多き人生だっただろうか?盲目になったのはオペの失敗だった!
生きるとは重しを背負いて遠きを見据えて歩くようなものだろうか
危篤に陥ったと連絡があった日、
君のいる病室のアルミッサッシの窓が開いた
その外の路面の上で正座しながら歌三線を歌ったさっちゃん
小さな人垣
看護師は一目会ってくださいと声をかけた
君は、歌三線を聴きながら涙が溢れていた
また歌三線で遊ぼうね、と
話しかけたらうー、うー、と返答した
神女のさっちゃんの姿
「今ね、ほらベッドの角にいて笑っているよ」と彼女は言った
遊離魂が微笑んだ
「うんじゅが情けど頼まれる」が好きだった君
さっちゃんはいつでもそれを最初に歌った
そして「一夜の枕」を「恋路花」を「母の面影」を歌った~
「おれ幸せだったよ。親はおれのため一生懸命にやってくれた~」
大好きな歌三線を聴きながら、たくさんの涙を流し、君は逝った
やさしい父母の魂に迎えられたんだね
さっちゃんは、タクシーで遠くまで乗り付けて
心の底から君の好きな歌を歌ってあげた~
人が飛び立つ瞬間の美しい思い出、土産を持たしてあげたさっちゃん
送り人(神女)なんだ!
彼らにわかるかな?わからないよね。わかるよね!
さっちゃんとの思い出は歌の思い出~、美しい旅立ち
永遠に病院の外で開いた月夜のミニコンサート
浜辺の音楽会も消えずに残る~
さっちゃんと君と3人だけがわかる記憶!
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いっしょに浜辺で歌三線を弾きながら遊んだひとときが偲ばれる。君は、オンライン授業中の今日15日11時10分に逝ったけれど、昨日、君はすてきなプレゼントをたくさんもらってたくさん涙を流した!またさっちゃんと歌三線を聞かせてあげるね。ちょっと待っていてね。