志情(しなさき)の海へ

かなたとこなた、どこにいてもつながりあう21世紀!世界は劇場、この島も心も劇場!貴方も私も劇場の主人公!

 芸能フォーラム「沖縄と韓国、伝統芸能交流の展望」に参加して!   

2011-11-15 22:10:12 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他
交流パフォーマンスはハッとした新鮮さはなかったが、踊りよりも音楽に魅了されていたと思う。基調公演の許榮一さんは韓国の世界民族舞踊研究所所長、韓国芸術綜合学校教授のステータスに違わず琉球と高麗の歴史的交流など、この間の歴史的に重要な書物など三、四冊ほど紹介した。そして昨今の学術的・芸能公演のご紹介。沖縄芸能史研究会会長の當間一郎さんの名前が登場し、琉球の宮廷芸能について韓国で講演したことなど、興味深かった。研究者で日本語も堪能な彼女が流暢な韓国語で話すという事が、世界のソウルなり、韓国というナショナル・アイデンティティーの強さを感じさせた。それとやはり研究者である彼女が芸能交流と学術交流の両方を意識した発言をしていることは、昨今の批評家・研究者を『ゲネプロの場からも排斥するようになった国立劇場おきなわ』のスタンスとは違うと感じさせた。

あらゆる文化表象において批評や研究が重要だという事を認識できない沖縄の知性の視野の狭さが浮き彫りになっているのは明らかで、少し大きな視点に立てたらいいのだが、どうだろう。三間四方の劇場がなぜ「四間四方」になったかに対して、現代人は身体が大きくなったからのレベルで言い訳をする主脳たちである。

つまり学術的研究の重要さを十二分に認識した国家の中心ソウルの舞踊研究所所長のスタンスは異なる。彼女は世界の中のソウル、世界の中の沖縄を強調した。しかし、沖縄を代表する文化観光スポーツ部長平田大一は、国と国の架け橋としての芸能文化交流という表現をした。世界の中の沖縄と韓国の交流とことばに出すことはなかった。沖縄の独自性を強調することができなかったのは、なぜだろうか?日本のシステムの枠組みを超えられない視野しか持てないビジョンの持ち主という事である。平田さんが100年後を見据えようと、二度ほど繰り返した。彼のビジョンの中の100年後の沖縄は、日本の中の一県の沖縄であり、独自の自治州なり独立した個有の琉球弧なり沖縄のイメージでは決してないのだと、妙に確信した。それは当然のことなのだろう。

将来的にサポーター、マグネット(磁力)、マネイジメントの三つを柱に据えるということばは、なるほどに思えた。そして人材への投資と提言したのも興味深かった。ご自分の現代版組踊は伝統芸能への入り口だと話していたが、それは昨今の平田さんのスタンスである。現代バージョンのダンスミュージカルだと思うのだが、歴史的英雄たちを物語の中軸に据えている。ダンスとリズムとムードでのせる一連のスタイルを創造したという点で平田さんの才能は頂点に達したということで、それはそれで拍手喝さいである。生命力、インパクト、瞬発力のある舞台、中高校生の若さが爆発する舞台は壮観である。物語のシンプルな構造、それは在る面で、エイサーの圧倒的迫力や人気、世界への伝播に通じる陶酔感をもっている。

そのスタイルはスタイルとして魅了し続けてほしい。韓国ではすでに一つの舞台公演が世界を駆け巡って1000回も公演する劇団がある。キッチンを舞台にしたダンスミュージカルや、またやはりミュージカルでも物語を膨らませた舞台もある。伝統芸能にいたってはいつでもそれが観賞できる文化政策を持っている。コリアンハウスなど、毎日公演している。規模が沖縄よりはるかに大きいという点はその通りで、許さんが、世界の民族舞踊研究所の所長であるという事は、実際にインドのカタカリダンスのワークショップを開催したり、長期にわたってそのダンスを研究する機関でもあるということで、今後沖縄から長期にわたりソウルの大学や研究所で沖縄の伝統芸を指導し、また韓国のダンスを習得するという交流が始まることを期待したい。

その点では県立芸大との交流がもっと深められてほしいものだ。日韓の文化交流が始まったのは1999年からである。まだ12年目である。韓国の文化政策が国をあげて大々的になされてきているのは目を見張る。日本の場合も国際交流財団やその他多様な国際文化交流基金を元に自国の伝統芸能や演劇を海外に派遣している。また受け入れも盛んになされている。その波にのって沖縄の伝統芸能の海外公演も毎年のように多かれ少なかれ民間、県や国の助成を受けて闊達になりつつある。やはり国の財力と民間のサポートが主だと思うが、その点、県の体制は弱い、というイメージである。

膨大な基地関連予算≪島田懇など)が入ってきたのだが、この間ハードのインフラ整備が主で、しかしその金がまた還流していく構造の中にあった復帰40年目を迎える現在で、どれだけソフトの面に財政が取り組まれたか疑問が起こる。文化が観光産業と連動して如何に重要かを認識しているのであれば、県主脳も各市町村も、お隣の台湾や韓国の文化政策の在り様をもっと検証してほしい。国家ではない、しかしイギリス、スペイン、フランスの自治州の活性化した文化・経済の盛況を在る面反面教師にしながら、身近なアジアの国々と中央とは異なる交流の取組を率先してやる方向性を見せてほしい。県も国立劇場おきなわも、許先生が強調した民族のアイデンティティの基盤・コアとしての民族芸能だとお話していたことを、もっとかみしめてほしいものだ。日本ナショナリズムや日本人アイデンティティーとは許先生は一言も話していなかった。あくまで沖縄のアイデンティティーである。そこで若い佐辺さんが沖縄方言と語り、また静岡の大学の博士課程の学生が沖縄方言と発言するような実態には胸が痛んだ。

最近琉球大の宮平信詳先生は琉球方言ではない、独立言語だと大胆に宣言された。ウチナーグチを独立言語だとして認識することによって、脱植民地化を推進していく文化運動の始まりである。しかし一方で、日本語の下部言語=方言として見なす方々もまだまだ多く、ユネスコの世界基準=認識に程遠い大学専門家も多い現実である。方言認識から解放される脱植民地化の運動が必要!それは自治州をターゲットにする政治的意識の高揚が問われている。独立言語の認識/復活は、民族芸能、演劇、そして空手などの文化推進(政策)とまた両輪である。

国際交流をどのように推進していくか?アジアの国々との国家の境界を越えた自由な交流の絆こそ、今求められているのではないだろうか?もちろん世界のウチナーンチュとの交流も重要な基軸になりえよう。文化運動推進ブレイン/リーダーたちの柔軟で多様性のある感性・知性が今問われているようだ!

会場からの発言で、大学を通して芸能交流が意外と進んでいるという経緯をお箏の扇長さんがお話した。それはとても好ましかった。2008年、ソウルで開催された国際学会に参加したことがあるが、韓国のナショナリズムの熱さは沖縄とは比べられないものである。今年のIFTRの国際学会ではエストニアの研究者たちが対ロシアの意識の中でナショナリズム(の高揚)を自国の舞台芸術の中でいかに推進しているか熱く報告していた。沖縄ナショナリズム/アイデンティティーは、民族芸能の中にどう展開しているのだろうか?

(11月14日、NHKで「うない奮闘記」吉田妙子が放映されていた!妙子さんはいかにウチナーグチが大事か強調していた!)

********************
芸能フォーラム「沖縄と韓国、伝統芸能交流の展望」
2011年11月14日 午後1時半から4時
国立劇場おきなわ小劇場
基調講演    :許榮一
コーディネーター:狩俣恵一
パネリスト   :平田大一
        :宜保榮治郎
        :許榮一
        :佐辺良和
        :宮城茂雄
        :仲村逸夫
****************************

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。