(元旦の初日の出です!高台の公園にて午前7時過ぎ)
恩師の瀬名派栄喜先生、そして大城立裕先生は是非新年のご挨拶をしたいお二人です。博士論文に関して、お二人を大きな支えにしておりました。
90歳前後のお二人のお元気なお顔とお話は、心温まるものがありました。Dr.yonahaとメールを下さった瀬名派先生です。ご自分がアメリカでPh.Dを取得されたときの事を熱心にお話してくださいました。KUに留学した時、推薦書を書いてくださったのは瀬名派先生と米須興文先生でした。先生方の学問の深さに憧憬の念を持ちながら、長い年月を経て博士後期課程に入学したのでした。博士論文をまとめたいと考えたのは、2001年、9月11日、あのニューヨークの同時多発テロの後の事です。衝撃的な映像が世界への目を新たに向けさせてくれました。アメリカ留学から戻って何年もたってからのことです。其の後2003年にインドのジャイプールでの国際演劇学会に参加したのが、導火線になり、世界の優れた研究者や演出家、舞踊家の方々の姿に、気後れを覚え、博士号(PhD)取得を考えたのでした。しかしその具体的な実現はさらに時間がかかりました。「少女老いやすく学なりがたし」です。
自信をもって世界に沖縄の演劇や芸能を発信したい、というのが基本的なパッションの在り処です。例えば、今年Asian Drama Anthologyが英国から出版されますが、組踊の系譜についての英文論稿が掲載されます。
アメリカではアジア演劇研究の第一人者、アンドゥル・ツバキ教授の指導を受けました。ツバキ先生は英語によるお能や歌舞伎を実験劇場で指導し演出していました。インドの伝統舞踊を学生たちに指導されたりもしていました。演劇のメソッドとしての空手や柔道、ヨガなどの活用等、かなり演劇技法のメソッドとして、日本の伝統芸能をアメリカの学生たちにも指導していました。ロシア演劇の授業、ポーランドのグロトフスキーの演劇理論と実践なども盛んな時でしたね。もちろんアメリカの現代演劇はリアリズムが中心で、ニューヨークのブロードウェイとのコラボの舞台は毎年なされ、カンザス市の野外劇場での舞台も高速道路を突っ走って見に行ったものです。そう言えばハロルド・ピンターの作品も人気がありましたね。サム・シェパードの舞台も印象深かったです。舞台はかなり見ました。丁度鈴木忠志の「トロイアの女」のアメリカ公演があり、アメリカ人観衆の熱狂的な反応ぶりにも驚きました。演出の授業はわくわくしましたね。「人類館」を英語で上演したことが大きな成果だったのかもしれませんね。当時、シェイクスピア劇が現代的なローラースケートも登場する演出でなされたり、全身ヌードの主役の男性が登場したりで、プロの舞台装置の大劇場や実験劇場では、常に様々な演劇が上演されていました。大学は街の文化の中心だったのです。
かの著名なアルビーの講演など、メタファーが芸術創造【想像】の中心にあることなどを意識させられました。
過去の想い出は此処までにしてー。大城先生はお腹にギブスを巻いたお姿でしたが、玄関口でお話ができて何よりでした。若輩者の私のメールでもいつもすばやく返信してくださり、恐縮しています。琉球舞踊家の芸大の某教員はメールを送っても2週間後に返信が来たりしますが、大城先生は異なります。弁護士登録をした知人もまた電話にもメールにもすぐ応えません。若い彼女達の対応はとても不愉快で、少なくとも近日中に返信しない面々は、傲慢不遜に思えます。大作家の大城先生は丁寧に短信でも返信を下さいます。しかし若い20代から40代は「だんまり」で対応してきたりで、計画がうまくいかないことがあります。残念ですね。二度とコンタクトを取りたくなくなりますね。
(神社詣でをせず初日の出を見たいと思い車を走らせました!)
『文学界』の2月号に辺野古をテーマにした小説が掲載されるとの事でした。大城先生、凄い方です。奥様は脳梗塞で介護を受けられていて、ご本人も入院されたりの状態で小説を書き続けられているのです。そのパトスの大きさにいつも圧倒されています。沖縄が一個の人間のように小説【物語】になります。大城先生の作家精神(使命感)は、琉球・沖縄の歴史総体を視野に収めた感性のエキスとして表出されてくるようです。
日本という国が、小さな琉球・沖縄を包摂し、この間の歴史の推移の中で構築されてきた芸術作品を確かと評価できないかぎり、マルチカルチュラルや多元性国家の魅力を持ち得ないままだということは、確かに思えます。
其の点、大城先生の作品は小説、沖縄芝居、新作組踊(詩劇)と多彩な世界ですね。創作の多元性そのものが沖縄のアイデンティティや言語、文化を網羅し、深く掘り、大きく飛翔させる普遍性をもち続けています。世界のあらゆるマイノリティコミュニティーにも普遍化できる感性があり、かつコスモポリタン(人類共通)の概念や感性を捉えていることになります。
新潮2月号早く手にしたいものです。ペッシミスティックということばが気になりました。悲観です。沖縄の抱える過去から未来へ、そこに悲観を見せる沖縄の地政学的構造、その歴史と現在の交差する今に、希望がないと作家が書かざるをえない時空、それを押し付ける力、やはり撥ね返したいものです。
大城先生がお元気でいることは、何より沖縄の希望です。廃藩置県から138年になります。日本政府は、まだ一度も沖縄の日本への文化的貢献を評価していないのです。
【午前8時過ぎ、二階のベランダから見た今年初めての太陽です!】