志情(しなさき)の海へ

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バルーチャ(BHARUCHA, Rustom)が火を付けた!【影を踏む者】ーインドから戻って、できた詩?!

2011-08-17 08:48:23 | 詩、詩集
              (牛を元気に引き連れる少年!犬や猿や熊も道端にいた!熊は痛々しげに!)


<影を踏む者>

   無知な母
    の

     気楽さ
      とは違って

      素直なことば
       の
        ささやき
         に
          とまどい
          ながら

         もう
         この年
       で 
        こんなことを
         と
          思うと

        痛く
          なる

          生きる
           ことの
            タイヘンさ
             が
           そこにも
                またひそんで
                いた

                生きることの
               タイヘンさ

            untouchable(カースト以下の存在)
           の
          四人の
         子どもたちは
        可愛い
        大きな
       瞳
      で見つめた

     彼ら
      は
       裸足
        で
         芝生
          の
           上
            で

             母と父の
              身近で
               遊んで
                いた

     もう何ヶ月も
                 洗ったことの
                  ないような
                   栗色の
                    髪

                    手は
                   黒ずんで
                  でも瞳は
                 生きた宝石
                
                 NAME?
                SHOKO
               と言った

              四人は
             小さく
            名前を言った

           シェン、ヨン、マセリ、メリ?
          音ははっきり聞こえなかった

         HOW OLD?
        英語は通じない

        握手しょう
       がんばろう

【車に向かってきてボールペンを強請った子供たち】

       ああ、あのたまねぎ頭のテツコさんに
      なったような
       傲慢な心が
        空を飛んだとしても
         4人の瞳は
          臆病に
           光っていた

           10ルピーを
            シェンに
             手渡した
              
              彼らの父親が
             心配げな
            視線を
           送った

          ドライブインレストランには
         バスや車が駐車していた

         芝生から抜けると
        突然快活なロシア語を話す家族が
      近づいてきた

       そこにいることが楽しくてたまらないような
        笑みを浮かべた女は
         ブーゲンビリアの木の前に少ししゃがんで
          夫らしき背の高い男が写真を撮った

           10歳頃の頬の赤い男の子も
           負けず幸せのオーラに包まれていた
          父親らしき男に英語で話しかけた

          通じなかった
         4人の子どもたちを
        話題にしたかった
       影を踏む者の試みは外れた

(美しさに圧倒されていたが、インドの逞しさに翻弄もされていた!)

       NO,NO English! Embassy!
        と男は答えた
         爪楊枝を口にくわえ
          インド人の運転手になにやら
           指図して3人は
            車の中に消えた

             4人の子どもたちは
              元気に立ち上がって
               芝生の遠くに
                去った

                 後ろ姿
                  の前に
                   長身の若者が2人
                    見えた

                     凱旋のように
                      見えた
                      
                      トイレの入り口に
                       立った  
                        赤いブーゲン色
                         のサリーは
                         太陽の
                        光を跳ねて
                       ひっそり
                      毅然と
                     あった

                     母親の姿

                    トイレから出ると
                   水道の蛇口をひねり
                  彼女は水を出した
                 白い歯が見えた

 
(コブラが躍った!)            
                既成の知識に
               溶けた脳細胞は
              彼女の笑みに解けて
             10ルピー手渡した
           
            しばらく辺りを見回し
           彼女にデジカメを見せた
          ジャイプールで撮った街の光景を
         そして頼んだ
        写真を?

       彼女は
      レストランの横に大きく茂ったブーゲンビリアの
     木の下に立った
    サリーで頭を隠していた彼女は
   しっかり見つめていた

    デジカメの画像を見せた
     Beautuful!と言ったのは影を踏む者
      住所を聞いた

       すると男子トイレに立っていた浅黒い男が
        書いた
         住所はレストランの住所
          名前はマジー

           何日かかるかと男は聞いた
            一ヶ月?
             一週間だと
              答えた
              
              インドの女たちの
              美しさは
             サリーに包まれ
            水のごとく軽やかに
           流れる布の
          怪しい輝きと共に沈静している
         
         悠久に変わることのない美が土の色と共に
        誇らしく在る


 
(インドの女性たちは美しい!階層差は彼女たちのセンスからも垣間見えた)

      装飾品は鎧
      鎧は美
     瞳は夢幻を見据え
    ガンジスに溶け込む
   
     影を踏む旅人は
      つかの間の
       幻影に
        たぶらかされ
         ただ
          
          インドの男の女の
           命の激しさ、たゆたう時に
            眩暈を覚えていた

             息苦しくなるほどの
              眩暈に
  
              耐えて
             インドの空気を
            吸い込んだ

           牛が、犬が、豚が、サルが、
          リスが、コブラが、、、、、

         犬が群れをなし、牛の死肉を食う
        自然の営みが繰り返される
       人間を無視し犬は、牛は 悠々と
      道の最中で目を閉じる

     新しい物の威力は、彼らを道端へと追い込む
    されど
   牛は
  店の軒先に
 命を生み
村人は
 命を育て
  居住空間を
   得る

(南アフリカの研究者と話すバルーチャ!彼女とは国際学会に参加する度にお会いする!)

    寡黙な瞳
     ヒンズー語が飛び交う
      
      影を踏む者はただ
       寡黙に緊張した耳と目を向ける
        
        「見るだけ」
         「やすいよ」
          「のって」
           「たかくない」

            片言の日本語
             は
              日本人の
               観光の
                爪跡

                十倍
                二十倍に
               値上げした土産品
             
             お前らは俺たちの
            土地から
           全てを
          奪った

         西洋はインドを収奪した!
        今、富めるお前らから取り返して何が悪い!
        
        不遜に、目ざとくかもを見つける
       甘い感傷を根こそぎ剥ぎ取る
      ハイエナの知恵が染み付いている
     小さなアゴラの土産品店

(インドの女性たちのファションは伝統を着こなしていた!)

      デリーから車でホテルへそして
     ホテルからアゴラへそしてジャイプールへ
    車のドライバーは話した

    娘を結婚させるために「たいへんだよ」と
     娘にお金がかかるタイヘンさが何度か
      ヒンズー語と英語が混じったことばから
       こぼれた
        
        持参金は多くの女たちの涙の粒    
         金は命を奪い、生きながらの炎を
          浴びた

           物語が語られる
            身の上話は
             生き延びる糧

              話上手は
               財布を
                厚くする

                 18歳のプリペイドタクシーの
                  少年も身の上話を
                   語った

                    母を養うため
                     兄弟でがんばっていると

                      英語少しね
                       と
                        
                        彼は
                       しかし
                      たくましかった
                     インドゲートへ行き
                    何枚もいい角度から写真を
                   とったらと進めた

                  寒いインドゲートに10ルピー 
のコヒー売りが
                 待ち受けていた
              
               You are my son
              と言った
             Friends
            だと言い返した
           ミリー
          girlfriend
の名前を何度がことばにした

          空港につくやデリーのカオスの雑踏を
           くぐりぬけた少年は
            400ルピー要求した

             300ルピーのはずだった
              渡さなければそれで良かった
               しかし、少年は熱かった

                影を踏む者も光を踏む者も
                 明日が空港で待ち受けていた

                  つかの間の心地よさは消えた
                   インドに敗北感を覚えていた

 (インドの民俗芸能を含めいくつかの舞台公演もあった。これはその一つの女性のダンサー)

                   彼は、ラビーは
                  あたたかい
                 ラビーは深い
                ラビーはインドだった
               ラビーは全てを
              包む
             ショールで包む
            120人の教授や演出家や批評家や
           芸術家をショールで包む
          ラビーの眼は全てを見透かす
           ことばは嘘を隠せない
            インドは
             嘘を見破る
              生きるための
               嘘は
                笑う

(ラビー教授は真摯に世界と向き合っていた!)

                 かのバルーチャがいた
                ピーターブルックの
               マハバラータが
              インドを収奪した作品だと
             クレイムをつけた彼が

              バルーチャのスピーチは
               力強く
                詩のように
                 現在を解き明かす

                  イスラム
                   テロリスト
                    テロリスト
                     イスラム

                インドの矛盾
               ヒンズー原理主義者
              マージナルな者たちとの
             ワークショップ
            演劇が芸能が意識を変え、社会の
           不合理を変えるエネルギーをもって
          現前する!

         しかし、陶酔、甘美なる蜜の眠りは
        麻薬とにて現実の目を曇らす
       西洋はインドを搾取している

        日本は沖縄を搾取している
          芸術も
           娯楽も
            陶酔も
             現状維持のための
              目くらまし

               認識している
                光を踏む者は
                 '沖縄は鬼'の
                  イラストを
                   出した
                    
                    日本の者たちの
                     意識野
                      の
                       無意識の
                        層は
                        痛々しかった

               Ethnicity and Identity
             胸騒ぎがした
            心がうずくままに走った
           ラビーは察した
          インドは沖縄を包み込んだ
            インドに沖縄はある

(バルーチャの講演は9・11後の怒りとパッションが感じられた)


             沖縄にインドはある
              闇を覗く影を踏む者

               闇夜は明るい
                暗いは明るい
                 明るいは暗い

                 韓国に沖縄がある
                沖縄に韓国がある
               なごやかな視線の先に
              鋭い光が満ちて
             現在が
            未来が
           白く
          続く
           影を踏む者は
            小さく
             見つめる
              
              影と共に歩く
               幻影と共に歩く

                インドは夢幻
                 インドは無限
 
                  沖縄は眩しく
                   青く
                    黄色い
                 
                    影を踏む者は
                   眩しい光を見つめ
                  また歩く

<1.15.03>
(インドに飛び立ったのは2003年正月の日で、デリー空港で後に共同研究をすることになった友人と落ち合った。霧のために出航できない飛行機のため空港で一夜を過ごし、さらに予定がずれて台湾でも一泊を余儀なくされた。沖縄に戻ったのは2週間後だった。その翌日に即興的に打ち込んでいた)


mogura
(これは8年前、インドでバルーチャなどに会ったIFTR国際学会から来沖してすぐ書き込んだ詩である。詩になっているかどうか、読む人が何かを感じてくれたらいいと思う。推敲なしでUPしたくなった。こんな詩をたくさん書いていた!そういえば大阪の学会でラビーさんにもお会いした。ジャイプールの学会の議長はラビー教授だった!あれからわたしは何を生み出しどんな不思議と出会いどんな感動を生きているのだろうか?不思議は在り続ける。このこころの世界が一番不思議に満ちている!それにしてもあの時の経験が現在に至る道標になっているのは確かなのだろう!)

 
                                                                                

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