志情(しなさき)の海へ

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詩 「 雨がしとしと降る日貴女(うんじゅ)は今日も三線を弾いて」

2023-08-13 09:12:46 | 詩、詩集
          (何故か一羽のキジ鳩)
  雨がしとしと降る日貴女(うんじゅ)は今日も三線を弾いて

 雨がしとしと降っています。電話がやってきました。繰り返されることばの中から光る雫がこぼれ落ちハッとさせられる日々。なぜか一人の女が眼の前でカンカラ三線を弾き民謡を唄う姿がこびりついて離れないのです!「心底落ちた 落とされた人間はこれ以上落ちるところがないんですよ」 と彼女は話しました。
       きれいはきたないきたないはきれい
       きれいなあなたのきたなさ
       きたないあなたのきれいさ

  生まれた時から母親の愛情なんてなかったのさ。鬼っ子はどぶに捨ててもよかったからさー。オギャーと生まれた日から生みの親は迷ったさー。生まれた赤子に蒙古班はなかった。「うれーぬーやが うれーわん子(くゎー)あらん!」名前を付けることも忘れて母親はうろたえた。わん腹(ふくる)借りて(かてぃ)生まりたる くぬわらばー。

  可愛い赤毛の子は祖母と叔母に育てられた。極貧の家で生まれた宿命を背負わされた女の子。わんや 母親うらん ジュリるなーとーさ。
それでも、身を捨てられ売られても、カミジャー小には唄があった。見ーなり聞ちなり 唄を歌い 踊りを身につけた。アメリカーぬペーデイや うみはまてぃもうきてぃやー 映画俳優が わん望むぬくとぅんあたさ。

        料亭ぬ花や十人十色
        花とぅ蜜ぬ香り
        あんやてぃん 全身血が吹き出て
        死のうと思った日 死ぬ覚悟が
        金を生んだ

 あんしんかんしん 人(ちゅ)や 生(いち)ちいかりーぐとぅやー。やーかーぎー(容姿)し ぬうないが ちゅらかーぎー(美人Iぬ姉(うんみー)や あん言いたしが あぬ唄や死ぬ思(うむ)いの中から生まれたものさ。誰(たー)ん唄にくみらったる思いやわからんさ。わん夫(うとぅ)かいぬ思い 誰(たー)がわかいが ありがわからん。わー唄やわー人生るやいびーさ。

       あんやいびーんやー。貴女(うんじゅ)ぬ人生ぬ唄
       皆(うまんちゅ)に 聞(ち)かさびら

  雨がしとしと降っています。電話がまたやってきました。溝鼠、ゼロ番地の女と呼び捨てにされた女は今日も三線を弾き自らの人生を唄います。雨がしとしと降っています。戦後この沖縄では親に似ない赤子が多く生まれたのです。
     

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