「父親が死んで長男が家の財産を継いで、マッサージ学校のお金出してくれたんです」
「そうなの」
「だけど、一生、恩に着せられるんです、一生、言われるんです」
「へーえ」
「お前が一人前になれたのは、オレが金を出してやったからだ」
「・・・ 」
「返したんです、借りたお金、返したんです、それどもぐちゅぐちゅ言うんです」
そういうこともあるだろう、ここには、良くも悪くも、古い日本の家族制度が生きているようだ。
「だから、ヨソの町に行きたいんです、ヨソの町に行って、胸の底から、息をしたいんです」
「一度でいいから、思い切って呼吸がしたいんです」
外が静かになった、しんしんと津軽の夜が更けていく。