マサイの男の前では街のチンピラが凍りつく、それは、イノチがけの人生を生きている男の迫力で、マサイは代々、アフリカの猛獣と対決してきた、だから、ウソや臆病・ずるいことや女々しさとは無縁、ことばだけのオベンチャラは、これっぽっちもない。
なんと貴重な記録、この日本の第2夫人は、文化人類学の素養があったのだろうか、これが額面通りなら、すばらしい収穫かもしれない。
何年か前、人類学の学会に出席したのだが、東大の大学院の女子学生の発表に出くわした、なんでもタイの奥地に出かけて1週間のキャンプ、
「こんなにクローして 調査したっていうのに なんで評価してくんないのよー」
「・・・」
「それは ニッポンが オトコ社会だからでしょー キイーキイー」
すると、会場のあちらこちらから、
「そうよ そうよ キイーキイー」
キイーキイー、サルの会場になっていた、こすっからい大学教授もダメだが、こっちにも救いがないね。
友人の人類学者と目が合った、
「ひどいな」
1週間か2週間のフィールド・ワークでどれだけのことが分かろうか、それに女性という制約がある、イギリスやフランスのチームはの外にキャンプを張って、客観的に観察しデーターを集める、それなりの成果が上がる、だが、隔靴掻痒(かっかそうよう)、もの足りないネ。
ニッポンのチームはの中に入り、膝を交えてワキアイアイ(和気藹々)、しばらくすると長老が、暗がりのなかをゴソゴソ、
「これっ うまいぞ」
「よっ ミツゾウシュ(密造酒)」
「ひとぎきのわるいことは いわないでください」
山に調査に出かけたのだが、グズグズ・ノロノロ、まるで役に立たない、すると、
「センセー イップク やってもいいですか」
やおら、ブカブカ、そして重い荷物を担いで、急な斜面を、走った走った、
「まるで 天狗だな」
この「ブカプカ」は何か、そう、あれっ、現地では何百年に渡って常用し、重労働の時に利用してきた。
だから、近代の文明が悪用してしまったのかもしれない、いろいろなことに、そういう一面がある、そういう点について、エリートの女子研究員は、一生、気が付くことはないだろう。