そのころ、論文をまとめるために部屋を探していた、
「いい部屋が ありました」
葉山の御用邸のそば、海のちかく・・・
ところが、バスを降りる時からむなさわぎ、5月の陽光の下、その家は黒猫のように横たわっている、70以上のはずだが、しっとりと白い肌、ヌラヌラと紅い唇・クチビル。
「枯れていない」
もう、部屋を借りる気持ちは失せていた、
「まあ お決めになるのは後でよろしいですから」
オンナ主人の部屋でお茶をいただくことになった。
私と女主人のはずだが、もう一人の気配、椅子の脇に、
「落剝・らくはく した日本人形 じっと聞き耳を立てている」
「あっ これか これが 胸騒ぎの原因だったのか」