吸い込まれそうな青い空を見ながら
故郷の町を訪れた
朽ち落ちそうな門
小さなくぐり戸を抜け
恐る恐るたどる 薄暗い森の小道
忘れ去られた道に
蜘蛛は巣を張り 木々は我が物顔に枝を伸ばす
鏡のような池に 手を触れれば
幾重にも 波が広がり
眠っていた水底から 藻がゆらゆらと立ちのぼってくる
初夏の日差しの下に
町は 明るく 翳一つなく
私の記憶の中の 何分の一かの大きさで現れた
こんな小さな世界の中で
喜びや悲しみ 安らぎや不安
と共にいたんだね
羽があるのに 飛び方も知らずに
桜の舞い落ちるなか遊んでた 寺の境内
運動会でかけっこをした 幼稚園
不思議なほど 昔の面影をとどめている
風もないのに ブランコがかすかに揺れていた