住宅地の 駅へ向かう道を歩いていると
車が私を追い越して 停まった
車の窓から ひらひらと手を振っているのは N子さん
いつもの 明るい張りのある声で 「送ってあげるから乗りなさいよ!」と言う
こんな晴れやかな雰囲気で誘われたら 誰だって断れない
でも・・・ と
ちょっと 躊躇った
「何処に行くの?」と 訊くと
彼女が向かうのは 駅とは反対の方向だ
「私は駅なの ありがとう また今度ね!」と 手を振る
車は ウィンカーを点滅させて信号を右折し 私は左へと曲がった
N子さんは こんな風に 天真爛漫! 面倒見がいい
あれこれ深く考えたりせずに 気軽に声をかけてくる
町内をくるくる回っている彼女の車に よく出逢うし
お年寄りに声をかけている彼女を よく見かける
でも・・ と ふと 思い出した
彼女は1か月前に亡くなった筈だ
私と同い年 誕生日も3日違いの彼女は その時に留まったまま・・・
私だけが1つ齢をとった
まだ 彼女の声が すぐそこに聴こえるような気がする
ごめんなさい
私は まだ歩き続けなければならないの
いつか あなたの車に乗せてもらうわね
*** 前に撮った ノブドウの実 ***