形見とて何か残さむ 春は花 夏ほととぎす 秋のもみじ葉 良禅師
*
良さまがご病気になられた。重篤である。
近隣の者が集まってくる。悟りに達した禅師さまはどんな死に方をなさるのだろう。
この世に未練を残さないというのが悟った者の常道である。
禅者はこの世が提供してきたさまざまな食膳を十分に堪能し尽くしているので、これ以上の不足はないはずである。
不足がなければ無執着になっておられるはずである。
良さまはそうでも良さまを慕う者は、禅師を失うことが辛い。
これからは誰を導き手としていけばいいのか。
遊んでもらった子どもたちは、これから誰を遊び相手としていけばいいのか。
そこで何か残していって下さいということになる。
*
残していくものは何もない。それでいい。それがいい。残せばそれが執着になる。
こちらが残さなくとも残っているものが百千ある。
春には桜が咲いて夏が来れば山に杜鵑が渡ってくる。秋は全山がもみじの錦だ。
*
わたしをそこに置かなければ万端は無事なのである。わたしをそこに置こうとしないことだ。
わたしをそこに置かなくとも春秋冬夏は巡っていく。
わたしをそこに置かなければ、あるあるあるになる。あるあるあるであふれることになる。
これでいい。これがいい。
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良さまがご病気になられた。重篤である。
近隣の者が集まってくる。悟りに達した禅師さまはどんな死に方をなさるのだろう。
この世に未練を残さないというのが悟った者の常道である。
禅者はこの世が提供してきたさまざまな食膳を十分に堪能し尽くしているので、これ以上の不足はないはずである。
不足がなければ無執着になっておられるはずである。
良さまはそうでも良さまを慕う者は、禅師を失うことが辛い。
これからは誰を導き手としていけばいいのか。
遊んでもらった子どもたちは、これから誰を遊び相手としていけばいいのか。
そこで何か残していって下さいということになる。
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残していくものは何もない。それでいい。それがいい。残せばそれが執着になる。
こちらが残さなくとも残っているものが百千ある。
春には桜が咲いて夏が来れば山に杜鵑が渡ってくる。秋は全山がもみじの錦だ。
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わたしをそこに置かなければ万端は無事なのである。わたしをそこに置こうとしないことだ。
わたしをそこに置かなくとも春秋冬夏は巡っていく。
わたしをそこに置かなければ、あるあるあるになる。あるあるあるであふれることになる。
これでいい。これがいい。