三郎は、三郎の心臓に、「心臓よ動け」と言ったことがない。しかし、動いている。まるで三郎の力に従って動いているようにして、動いている。
*
三郎が、「三郎の心臓よ動け」と言ったくらいで、三郎の心臓が動くのではない。それだと四六時中そう命令をし続けていなければならないことになる。
*
三郎は、命令を下さいないで動いている三郎の心臓に手を当ててみて、しかし、何かがこれを動かしているのではないかと勘ぐっている。
*
これは到底、三郎一人の力ではないように思ってしまう。
*
三郎の心臓を動かしている大きな力。それがそこに来てはたらいているように思うことがある。そのときには、正直とまどってしまう。
*
三郎の中に他人が同居しているようなちぐはぐ感を持ってしまう。そしてそれから考える。
*
それをそうせしめている力。大きな力。大きな善意。そういうものがあるのではないか、と。すべてをそうせしめている大きな力というものがあるのではないか。あったとしたら、それはどういうつもりのものなのか。どういう力なのか。
*
三郎の心臓をのけ者にしないでいるというのはどういうことか。三郎の心臓に働きかけて来るこの大きな他なる力は、三郎のことをどう思っているのか。
*
心臓の正常なハタラキがあってもそこで終わりではない。これを受け継いだ大動脈、大静脈の血管が正常に作動をしていなければならない。これをも三郎の命令でそうしているのではない。そうせしめられている。そうせしめられて安定している。からだの全体と調和している。
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それはなぜだ。なぜそうしているのか。そうしていることに何の得があるのか。得なんか何もなくともそうしているとすればそれはそれで、なぜなのか。
*
三郎は夕方まだ明るい内に、裸でお風呂に入っていてそんなことを考えてしまった。窓を開けて天空を眺めてみた。するとそこに三郎の心臓を動かしている天空の丈夫なベルトが回っているのが見えたように思った。
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三郎が、「三郎の心臓よ動け」と言ったくらいで、三郎の心臓が動くのではない。それだと四六時中そう命令をし続けていなければならないことになる。
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三郎は、命令を下さいないで動いている三郎の心臓に手を当ててみて、しかし、何かがこれを動かしているのではないかと勘ぐっている。
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これは到底、三郎一人の力ではないように思ってしまう。
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三郎の心臓を動かしている大きな力。それがそこに来てはたらいているように思うことがある。そのときには、正直とまどってしまう。
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三郎の中に他人が同居しているようなちぐはぐ感を持ってしまう。そしてそれから考える。
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それをそうせしめている力。大きな力。大きな善意。そういうものがあるのではないか、と。すべてをそうせしめている大きな力というものがあるのではないか。あったとしたら、それはどういうつもりのものなのか。どういう力なのか。
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三郎の心臓をのけ者にしないでいるというのはどういうことか。三郎の心臓に働きかけて来るこの大きな他なる力は、三郎のことをどう思っているのか。
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心臓の正常なハタラキがあってもそこで終わりではない。これを受け継いだ大動脈、大静脈の血管が正常に作動をしていなければならない。これをも三郎の命令でそうしているのではない。そうせしめられている。そうせしめられて安定している。からだの全体と調和している。
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それはなぜだ。なぜそうしているのか。そうしていることに何の得があるのか。得なんか何もなくともそうしているとすればそれはそれで、なぜなのか。
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三郎は夕方まだ明るい内に、裸でお風呂に入っていてそんなことを考えてしまった。窓を開けて天空を眺めてみた。するとそこに三郎の心臓を動かしている天空の丈夫なベルトが回っているのが見えたように思った。