親愛なるオリオン座のみなさん、こんにちは。こちらはいま雨が降っています。「こちら」と言っただけで賢明なオリオン座のみなさんにはすぐにおわかりになると思いますが、お便りには住所を付けた方が、お便りらしくなりますね。ここは日本国の南に位置している九州です。雨は本降りになってきました。雨音が強くしています。大量の雨水が畑を池にしています。そこから川を作って道路に溢れ出て流れています。
わたしもそちらに住んでいたことがありますので、オリオン座もふるさとの星のひとつです。地球という星は水が溢れている星です。野原にも畑にも、丘にも山にも水を吸った植物が青々と茂っています。植物の葉っぱは緑色をしています。おいしい空気もあるので、植物も動物も鉱物もみなこれを吸って元気いっぱいに暮らしています。季節季節であちこちに美しい花が咲きます。オリオン座の星の花とはまたちょっと趣が異なります。
わたしが住んでいる家の庭には赤い鹿の子百合が今朝から咲き出しています。一番咲きは黄色の鹿の子百合でした。これは華奢です。茎も花もほっそりとしています。鹿の子百合の特長はどれも花弁を真後ろまでぐるりと反り返っているところです。ですから、鉄砲百合のような花の筒はありません。雌蘂雄蘂が突き出しています。二番手の赤鹿の子百合は背高のっぽでしかも頑健です。はっきりした、濃いめの赤です。ピンク色の蕾を着けた薄赤鹿の子百合は明日の朝を待てばいいようです。白鹿の子百合がどんじりをつとめるようです。
この地球という居場所はやはり美しいところです。見飽きません。わたしはもう何十年と長い歳月ここに暮らしていますが、見飽きたということがありません。ここに住んでいる人々は人間という生き物です。人間もその美しさという点で花々に負けてはいません。男性は胸板が隆々としていますし、女性は綿のように柔らかく、雲のようにかろやかです。無邪気に遊んでいる子どもたちを見ると癒やされます。山々の頂きは雪の帽子を被っています。大海は青く荒々しく波の飛沫をあげています。
こんなに素晴らしい別天地のような地球にいるのももうそれほど長いことではなくなってきました。ここを後にしたらまた宇宙中を旅することになります。その途中でそちらにも立ち寄ることがあるかもしれません。そちらでのわたしの名前はラハマロズッテでした。ラ・ハマロ・ズッテだったか、ラハマ・ロ・ズッテだったか、ラハ・マ・ロズッテだったか、そこはもう正確ではありませんが。そちらでは、こちらの人たちに寿命があるということを言えば、きっと信じてくれないでしょうね。どの星にも特長があります。悪くはありません。
地球に行ってきみは、で、結局何を得たのだね、と尋ねられるかもしれませんね。そのときにはこう答えましょう。得るものなんかなんにもいらなかった。ただうっとりして暮らしているだけだった、と。それでわたしには十分でした。満ち足りて腹一杯になって次の旅ができそうです。かってわたしといっしょに暮らしたオリオン座の懐かしい人たちのことが思い出されます。わたしは達者でいます。どうか安心して下さい。ではみなさんご機嫌よう。
追伸 ラハマロズッテという名前は魂の名前ですから、どの星に棲んでいても同じです。わたしの魂の色は薄緑色です。
わたしもそちらに住んでいたことがありますので、オリオン座もふるさとの星のひとつです。地球という星は水が溢れている星です。野原にも畑にも、丘にも山にも水を吸った植物が青々と茂っています。植物の葉っぱは緑色をしています。おいしい空気もあるので、植物も動物も鉱物もみなこれを吸って元気いっぱいに暮らしています。季節季節であちこちに美しい花が咲きます。オリオン座の星の花とはまたちょっと趣が異なります。
わたしが住んでいる家の庭には赤い鹿の子百合が今朝から咲き出しています。一番咲きは黄色の鹿の子百合でした。これは華奢です。茎も花もほっそりとしています。鹿の子百合の特長はどれも花弁を真後ろまでぐるりと反り返っているところです。ですから、鉄砲百合のような花の筒はありません。雌蘂雄蘂が突き出しています。二番手の赤鹿の子百合は背高のっぽでしかも頑健です。はっきりした、濃いめの赤です。ピンク色の蕾を着けた薄赤鹿の子百合は明日の朝を待てばいいようです。白鹿の子百合がどんじりをつとめるようです。
この地球という居場所はやはり美しいところです。見飽きません。わたしはもう何十年と長い歳月ここに暮らしていますが、見飽きたということがありません。ここに住んでいる人々は人間という生き物です。人間もその美しさという点で花々に負けてはいません。男性は胸板が隆々としていますし、女性は綿のように柔らかく、雲のようにかろやかです。無邪気に遊んでいる子どもたちを見ると癒やされます。山々の頂きは雪の帽子を被っています。大海は青く荒々しく波の飛沫をあげています。
こんなに素晴らしい別天地のような地球にいるのももうそれほど長いことではなくなってきました。ここを後にしたらまた宇宙中を旅することになります。その途中でそちらにも立ち寄ることがあるかもしれません。そちらでのわたしの名前はラハマロズッテでした。ラ・ハマロ・ズッテだったか、ラハマ・ロ・ズッテだったか、ラハ・マ・ロズッテだったか、そこはもう正確ではありませんが。そちらでは、こちらの人たちに寿命があるということを言えば、きっと信じてくれないでしょうね。どの星にも特長があります。悪くはありません。
地球に行ってきみは、で、結局何を得たのだね、と尋ねられるかもしれませんね。そのときにはこう答えましょう。得るものなんかなんにもいらなかった。ただうっとりして暮らしているだけだった、と。それでわたしには十分でした。満ち足りて腹一杯になって次の旅ができそうです。かってわたしといっしょに暮らしたオリオン座の懐かしい人たちのことが思い出されます。わたしは達者でいます。どうか安心して下さい。ではみなさんご機嫌よう。
追伸 ラハマロズッテという名前は魂の名前ですから、どの星に棲んでいても同じです。わたしの魂の色は薄緑色です。