「風」
「互いを高め合うようでありたい」
「互いを低くするのではなくて、
出来得る限り高く高め合うようでありたい」
わたしに風がそう言うので、わたしもそれに同意する。
風が同意を聞き終わって、爽やかな音を立て、去って行く。
わたしも爽やかになる。
風は、わたしにだけそう言っているのではないらしい。
ススキにも、竜胆にも、小川にも、野原にも、
そういう契約をして回っているらしい。
風の尽力で、
この世に存在しているものすべてが、
そういう関係性、高め合う関係性を保っていられる。
祈り合う。祈り合う秋日。
互い互いが高められて、
ススキが揺れる。
竜胆が目配せをする。
小川がハミングする。
野原が光を広げて来る。
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此の詩はS新聞の読者文芸に投稿していた作品です。落選をしました。
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道元禅師は「悉有仏性(しつうぶっしょう)」を「悉く仏性有り」としないで、「悉有は仏性なり」と読んでおられます。
「すべての存在はこの世の修行を通過してやがて仏と成って行く」という未来志向的読み方を、更に一歩進めて、「悉くがこの世に存在しているのは、それが仏性の発現だからである」というように、現在完了形で受け取っておられます。
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この世に発現した来たものみなが、悉く関わり合って高め合っているのですね、おのずからにして。そう言う主張を土台に置いて詩を書いてみました。理解されなくて終わりました。わたしの作品に欠点があったからです。