1
プリズムは光の方向を変えてしまいます。プリズムはガラスや水晶などの透明体三角柱です。「山稜鏡」などとも呼ばれます。直進できなくなった光が、ここで屈折分散します。するといままで見えてなかった色が鮮やかに美しく浮き出て来ます。
2
直進したいと思っていた人の前に、この障害物のプリズムが置かれると、こころの光が屈して折れてしまいます。人は失敗や挫折を経験します。すると複雑に捻れます。苦境を強いられます。圧迫、重圧の中を生き抜くことを強制されます。
3
しかし、そこに、本人には気付かれないのですが、鮮やかな色彩が放たれて来ます。これがえもしれぬ人間の魅力を植え付けます。こうした人間に出遭うと、人はいつしか深い感動を覚えます。本人は、自分がそうした感動を与えているということを知りません。そこがいいのです。自然体謙虚でいいのです。
4
進みたい方向をねじ曲げられてしまうことがあります。人生には何度もあります。希望に添わない方向を歩かされます。嫌になります。投げ出してしまいたくなります。悶々とします。でもそれはプリズムになるのです。眼前に置かれた障害物は、プリズムとなって屈折反射をして、発光するのです。
5
人間が人間でありながら、発光するのです。鮮やかな色彩を放つようになるのです。これは予期し得ないことがらです。希望に添って直進を重ねて行くことを願っているのですが、そこに鬱屈プリズムが置かれてしまいます。それが嫌で嫌でしかたがないのです。そこから逃れ出ようと藻掻きます。苦しみます。
6
人は、己の前途にこのプリズムが置かれたことをなかなか容認しません。屈折させられたことを肯定できないのです。間違った方向に進まさせられてしまったという思いが益々募ってしまうからです。
7
こういう泥沼の中で人格の陶冶が押し進められていきます。それにも、しかし、気付きません。よい方向へよい方向へ導かれて来たという実感が持てないのです。そして人格が輝きだして来ます。
8
若い頃に挫折を味わうことは大変意味のあることです。輝きへ向かって行く一歩を歩み出したことになるのです。挫折の中にいる人は苦しみます。這い上がろうとして苦しみます。ですが、そういう人たちには応援部隊がつきます。感動を貰ったひとたちが応援部隊を形成してくれます。