海外バックパッカー中はよくバスを使う。経費も安く、そのお国柄や土地の人々を通して文化を知ることが出来るからだ。時間がある時は夜行バスを利用し宿泊代替りにも使える。途中下車しない専用の急行バスより入れ替わりの激しい路線バスの方がより変化に富んでいて楽しい。60代までは感じなかった疲れを70代後半ともなると感じるが、6時間ぐらいなら痛痒はない。
首都キトー(エクアドル)から乗車したリオバンバ行きの路線バス。4時間の予定だったが5時間以上かかった。なんとトイレがない。標高3000mのアンデスを縦走するコースである。乗客は地元の人たちでノンビリムード、停車ごとに入れ替わり立ち替わり乗り込んでくる食べ物の行商人のおかげで、飲み食いの心配はないが出す方が心配。トイレ休憩があると思ったがそれがない。かつて利用した中南米の多くのバスには便所がありしかも必ず休憩があった。初体験である。男は停車を利用して外で用を済ませるが女性は大変だ。放牧されている牛や馬のように青天井の下で行うことを当然とし、インデヘナの人たちは黙って辛抱しているのだ。人権無視もはなはだしい。地元の輸送機関はバスだけ。バス会社は「バスを通してやっているのだ」というお上意識なのだろう。許されないことだとワイフと共に憤りつつ、「途上国でバスに乗るからには大人用おしめが必要品だね」と悟った。
この経験から、リオバンバからグアヤキル間の5時間乗車ではトイレのあることを確かめてからチケットを買った。だが便所に鍵がかかっていた。車掌に用をたしたい旨を伝えても「その先で止まるからその時外でどうぞ!」と言って相手にされなかった。鍵のかかったトイレって何のためにあるのか。壊れているのか、掃除が大変だから使わせないのか。しばらくして車掌が「カギを開けるから」と言ってきた。われわれが外人だから気を使ったのかもしれない。ワイフがトイレを使ったら、待っていましたとばかり女性客が並んで続いたのは言うまでもない。トイレ以外は満足のいく旅だった。世界遺産の街、クエンカからキトーまでは航空機にした。バスの10時間が飛行機では35分で着くのだが地方文化に触れることがなくて味気ない。時と場合により悠長なバスがより魅力だ。(自悠人)