かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

銀行からの損失補填書

2008-02-06 | 事例
平成の始めです。
Aは合併前の大手D都市銀行から融資を受けました。
銀行は渋るAに融資をし、Aは小さいながら、銀行の
紹介するマンションを1棟手にしたのです。
この時にAは担当者から書付を1通貰いました。
「若し貴君が此れにより損失を蒙るようならば、
 当行は全ての損失を補填します。」と書いてあります。
セールストークとしてはこんな文句は普通に有ったでしょうが
書付となると滅多にお目にかかれません。文章からサインまで
全て自筆、銀行名のところは真印かどうかわかりませんが
丸判が押してあり、担当者の印も有りました。

平成15年、Aは資金に行き詰りました。賃貸物件も
もっと良くて易くなって居ます。何より都心まで、乗り換え3回、
1時間半です。絶えず空き室が出て居るようになったのです。

暫くはリスケで乗り切りましたが、やがて、
此れでは返済できないと、マンションを売って弁済を考えました。
マンション価格は買い時の何割となって居ます。大きく残債が
出ますが、此れは当初の約束通り銀行が負担してくれるでしょう。
Aは銀行にマンションの売却と、残額の免除を申し出ました。

ところが銀行は承知をしません。
マンションを売却するのは賛成ですが残債務の免除は
出来る話では有りません。しかし書付を見て驚きました。
書いた本人は近くの支店の部長をして居ります。
その人の字に間違いありません。

銀行は態度を柔軟にさせながらAを責めます。
Aは、マンションは処分しました。しかし銀行は融資の時、
元々Aが持っていたもう一つの物件を担保にして居ます。
其れは当然処分すべきはないかとAを揺さぶります。

Aは此処で金融庁に相談に行ったのです。
最初、訳の解からない者がダダをこねていると
思った金融庁の係官も書付を見て驚きました。銀行員が
書く筈の無い書類です。しかし一見して本物と理解しました。

「Aさん。こうまで書いて約束をしましたから、D銀行も
 本気でしょう。しかし私共が中に立つことは出来ませんから、
 両者で良く話し合ってください。私のほうも銀行には云って
 おきます。しかしAさん。何と云ってもAさん。貴方も損失は
 全て押し付けるという考えではなく、自分の言動に対する
 責任は取って下さい。」
この件は何時でも相談に載ることを約束してくれました。

Aは担保だった元々の自分の物件も手放すことにしました。
後自宅がありますがこれは地元信金の担保になって居ます。
その時の残債務は1億6千万。Aはこの放棄を今は合併した
M銀行に詰め寄りました。

M銀行も金融庁が全てを知っていると解かると、
その後は腫れ物に触るみたいです。
結局、担保を処分すると、
「銀行と云うところは残債務を放棄出来ないところです。
 任意に処分が出来るサービサーにこの債権を譲渡します。
 サービサーには良く言っておきますから大丈夫です。
 そしてこれ以上債権を他のサービサーに譲渡する事はありません。」
何がなんだか解からないAを口説いて債権をRサービサーに
譲渡したのです。平成18年でした。

サービサーから呼び出しが有ったとき、Aは全てを話しました。
「だから私は御社から正式に残債務が0になる和解書を
いただけると思っています。」
Rサービサーは驚きました。そんな話、M銀行から何も
聞いておりません。ましてや金融庁まで絡む話です。
こんなややこしい物件は他に譲渡する事だと決めて、
もう1度会社に呼びました。

しかしAは納得しません。M銀行は此処から他に
譲らない約束をしました。と云ってその場でM銀行に
電話をしたのです。
「他に譲るくらいならば、私をM銀行に戻してください。」
Aは食い下がりますがバルクで買った商品を如何に
Lサービサーとしても、返品できません。

後はAの要請で、月に一回位面談はしましたが、
進展が無いままに1年近く過ぎています。

こんなAに進言した人が居ます。
「Aさん。貴方直ぐに書付や金融庁の話を振り回していませんか。
 以後其れを言うのはやめましょう。のみならず、和解成立の時は
 書付を全部お返しすると言いなさいよ。其れと貴方は生真面目な
 顔をしていっていると思うが砕けた調子で笑みを持って話し合い
 ましょう。最後に相手にはなを持たせる意味で少しと言っても
 100万単位だが其れを出して和解を申し込めば必ず成功しますよ。」

其れからは早かったです。結局1時金を200万出して和解です。
ひょっとすると「1億以上払いなさい。」と云われるかもと
内心びくびくだったAもほっとしたものです。

それにしても1通の和解書。交渉過程では効果が
あったように思われました。しかし最終の結果から見ると、
何も無くてもこの結末はついたかも知れません。





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