「Ｎは今度こそ終わりだ。販売会社に売った売掛金の3600万、国税に差押えられたんだって。」
今度こそ終わりだろうと誰しもが思いました。
工場で造った商品は全て販社を経由します。それを全部国税に差押えられたのです。
彼は夢中になって何とか助かる方法を聞いて歩きました。
弁護士も商工会議所も民商も全部首を横に振るばかりです。
「税務署、それも国税にやられたんだ。救いようが有りませんよ。破産の準備をするのですな。」
只一人、長年付き合っていたコンサルタントのＧだけは少し違いました。
「Ｎさん。もう年貢の納め時ですよ。其の準備をしたら？ 手伝いますよ。」
「冗談じゃない、Ｇさん。私は最後の最後まで工場をやりますよ。
売掛金は全部差押えられても、知らない
納入業者も居ますよ。何とか言って材料を引っ張ります。」
負け惜しみかＮはそれでも工場は続けると言って居ます。
「今度の差押えの前に3回ほど立て続けに調査が有ったといって居ましたね。」
「ええ、3ヶ月、毎月続いたのです。徹底的に調べられました。
嘘は言っていない。お金は無い。だけは信じて貰えたみたいです。
それと私の工場に対するやる気も解かったらしいです。」
「若し国税に払うとすれば、毎月幾ら払えます？ 月20万は大丈夫ですか。」
「今までも20万払うとか30万払うといって実行しなかったです。でもこうなれば20万は払いますよ。」
「解かった。Ｎさん。貴方20万を直ぐに造りなさい。そして明日一番で国税庁に飛びなさい。」
こんな会話の後、Ｇは次の様なアドバイスをしたのです。
「国税庁に言って土下座しても担当官に頼みなさい。
私はどんなことが有っても会社を続けます。そして毎月20万を払います。
初回分は本日お持ちいたしました。それに今回差押えられた売掛金は、
今後毎月20万づつ回収する約束になって居る売掛金です。
3600万が短期間に入るお金では有りません。
販社の社長に確認していただければ解かります。よろしく御願いします。」
アドバイスのあったのはこれだけです。
Ｎも必死です。彼は懸命に演じたのです。
結果はＧの言う通りになりました。
「3600万の差押えは続行する。しかし第3債務者は之を毎月、20万円づつ支払うこと。」
嘘みたいな話が成立したのです。
国税もこの差押を強行しても、販社の売掛金まで差押えないと回収できず結局は
Ｎも販社も潰れるだけで、下請けから従業員までが困るだけだと云うことは
解かって居ます。
それならば、会社に情熱を掛け、嘘を言わないＮを信じた方が得策と踏んだのではないでしょうか。
皆がＮのように行けばよいですが、この反対も有ります。
税務署から立て続けに調査を受けて居る会社が有りました。
社長がつい口走ったのです。
「もういい加減に勘弁してください。間近くこの会社も倒産ですよ。」
税務署は何にも言わず、調査を簡単に済ませ、帰ったのです。
3日後、「これで済んだか。」と胸を撫ぜ下ろしていた社長に飛び込んだのは売掛金の差押でした。
6軒しかない売り先の３軒です。それでほぼ滞納額に見合います。
「潰れます。」
社長は税務署に差押を取り下げるよう懇願しましたが聞いてもらえません。
「あなたはこの会社は倒産すると仰ったでしょう。経営者の貴方の言葉ですよ。」
経営者の言葉は、軽はずみで有ったり、その場逃れで有っても責任は重いのです。
潰れると噂されたＮの会社は続いて居ります。
幾ら苦しくてもＮは経営を捨てる言葉を吐いたことが有りません。
これが経営者として非常に重要の事ではないでしょうか。
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今度こそ終わりだろうと誰しもが思いました。
工場で造った商品は全て販社を経由します。それを全部国税に差押えられたのです。
彼は夢中になって何とか助かる方法を聞いて歩きました。
弁護士も商工会議所も民商も全部首を横に振るばかりです。
「税務署、それも国税にやられたんだ。救いようが有りませんよ。破産の準備をするのですな。」
只一人、長年付き合っていたコンサルタントのＧだけは少し違いました。
「Ｎさん。もう年貢の納め時ですよ。其の準備をしたら？ 手伝いますよ。」
「冗談じゃない、Ｇさん。私は最後の最後まで工場をやりますよ。
売掛金は全部差押えられても、知らない
納入業者も居ますよ。何とか言って材料を引っ張ります。」
負け惜しみかＮはそれでも工場は続けると言って居ます。
「今度の差押えの前に3回ほど立て続けに調査が有ったといって居ましたね。」
「ええ、3ヶ月、毎月続いたのです。徹底的に調べられました。
嘘は言っていない。お金は無い。だけは信じて貰えたみたいです。
それと私の工場に対するやる気も解かったらしいです。」
「若し国税に払うとすれば、毎月幾ら払えます？ 月20万は大丈夫ですか。」
「今までも20万払うとか30万払うといって実行しなかったです。でもこうなれば20万は払いますよ。」
「解かった。Ｎさん。貴方20万を直ぐに造りなさい。そして明日一番で国税庁に飛びなさい。」
こんな会話の後、Ｇは次の様なアドバイスをしたのです。
「国税庁に言って土下座しても担当官に頼みなさい。
私はどんなことが有っても会社を続けます。そして毎月20万を払います。
初回分は本日お持ちいたしました。それに今回差押えられた売掛金は、
今後毎月20万づつ回収する約束になって居る売掛金です。
3600万が短期間に入るお金では有りません。
販社の社長に確認していただければ解かります。よろしく御願いします。」
アドバイスのあったのはこれだけです。
Ｎも必死です。彼は懸命に演じたのです。
結果はＧの言う通りになりました。
「3600万の差押えは続行する。しかし第3債務者は之を毎月、20万円づつ支払うこと。」
嘘みたいな話が成立したのです。
国税もこの差押を強行しても、販社の売掛金まで差押えないと回収できず結局は
Ｎも販社も潰れるだけで、下請けから従業員までが困るだけだと云うことは
解かって居ます。
それならば、会社に情熱を掛け、嘘を言わないＮを信じた方が得策と踏んだのではないでしょうか。
皆がＮのように行けばよいですが、この反対も有ります。
税務署から立て続けに調査を受けて居る会社が有りました。
社長がつい口走ったのです。
「もういい加減に勘弁してください。間近くこの会社も倒産ですよ。」
税務署は何にも言わず、調査を簡単に済ませ、帰ったのです。
3日後、「これで済んだか。」と胸を撫ぜ下ろしていた社長に飛び込んだのは売掛金の差押でした。
6軒しかない売り先の３軒です。それでほぼ滞納額に見合います。
「潰れます。」
社長は税務署に差押を取り下げるよう懇願しましたが聞いてもらえません。
「あなたはこの会社は倒産すると仰ったでしょう。経営者の貴方の言葉ですよ。」
経営者の言葉は、軽はずみで有ったり、その場逃れで有っても責任は重いのです。
潰れると噂されたＮの会社は続いて居ります。
幾ら苦しくてもＮは経営を捨てる言葉を吐いたことが有りません。
これが経営者として非常に重要の事ではないでしょうか。
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