第238回 2019年11月19日 「ふるさとで学び 新しい“世界”へ~滋賀 焼きもの~」リサーチャー: 福地桃子
番組内容
焼き物のふるさと、滋賀県甲賀市信楽。ここの窯業技術試験場は、陶芸家志望の人たちを受け入れ、その基本を教えてきた。そこを巣立った3人に焦点を当てる。一人目は、洋風のティーポット。陶器としては珍しいほど薄く仕上げる。そのため、粘土に工夫が。二人目は土鍋。底を平らにして火の通りをよくし、ハンバーグもよく焼ける。3人目は、表と裏、両方使える皿を開発。一方には溝がつけられ、揚げ物などの油を切ってくれる。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201911191930001301000 より
信楽焼は「日本六古窯」のひとつで、土の味わいや温もりを生かした風合いが愛され、花器や食器、置物やタイルまで、
幅広く住宅やインテリアに使われています。
<参考:信楽窯業技術試験制度>
信楽窯業技術試験場の研修制度は、昭和48(1973)年に県内窯業の後継者を養成する目的で開始された制度です。
研修期間は1年。
大物ロクロ成形科、小物ロクロ成形科、素地釉薬科、デザイン科が設置されています。
これまでに研修を修了した研修生は500名を超え、活躍しています。
令和5年度の募集は、「秋試験」(試験日時:令和4年11月9日[水])は、10月11日[火]から10月31日[月]まで受け付けています。
「冬試験」(試験日時:令和4年2月 8日[水] )は、令和4年1月10日[火]から 1月31日[火]まで受け付けています。
Let's チャレンジ!
1. 竹口要さん
竹口要さんのうつわは、持ちやすさ・軽さ・口当たりの良さが特徴です。
信楽でつくられる土をギュッと焼き締まるよう独自に調合しており、見た目の印象以上に欠けにくいことも特長です。
竹内さんは、近所の人に勧められたことがきっかけで、滋賀県立信楽窯業試験場で3年間、焼き物を学びました。
平成4(1992)年には「素地焼成科」、翌年には「釉薬科」、更にその翌年には「小物ロクロ科」を修了され、平成16(2004)年独立。
そして平成26(2014)年からは工房を滋賀県東近江市にある「ことうヘムスロイド村」に増設しました。
滋賀県の南東部にある東近江市は、1市6町が合併した琵琶湖から鈴鹿山脈まで広がる自然豊かな地域です。
その東近江市の誕生前の旧湖東町に、「ことうヘムスロイド村」があります。
旧湖東町は、梵鐘をつくる鋳物師や宮大工が多く、匠の郷として知られてきた場所です。
伝統を守りつつ、現代のものづくり推進を目的に、平成5(1993)年3月に「ことうヘムスロイド村」を作りました。
その際モデルにしたのが、スウェーデンのレトビック市。
「スウェーデン人の心の故郷」と言われるこのエリアでは、手づくり・ものづくりが盛んなことから、スウェーデン語で「手工芸」を意味する「ヘムスロイド」を村の名前にしました。
村が完成して間もなく、レトビック市と湖東町は、ともに手工芸が盛んであることや、地理的に湖の東に位置することなどから姉妹都市提携を結び、現在も交流が続いています。
現在この村の中では、6組の工芸作家が活動し、素敵な作品を作っています。
ガラス :東ユキヤス
木 工 :田中智章
鍛 鉄 :石倉創、石倉康夫
陶 芸 :竹口要
日本画 :西川礼華
cafe&ヨガ :ウエノ チシン・ナル
毎年5月第4日曜日とその前日土曜日には、「ヘムスロイドの杜まつり」が開催され、県内外から100名以上の工芸作家が参加し、陶器やガラス工芸作品の展示や販売が行われます。
住所:滋賀県東近江市平柳町568
独り立ちした時には、多くのライバルに囲まれていたため、独自の焼き物を生み出そうと試行錯誤した結果、白くて軽い洋風のティーセットが誕生したそうです。
明日から「作り手と結ぶ庭」に参加致します。
画像は春らしいティータイム…ではなく、今回出品する「ボタ」というカップの画像がなく無理矢理持って来たのです。右手に写るカップです…。ホワイトデーにも良いかと思います!
白いピッチャーの軽さの秘密は3㎜という薄さ。
陶器でその薄さでは欠けやすくなってしまうため、竹内さんは、粘土を工夫することでその難問を解決しました。
白い粘土は風合いが良いが強度は強くないため、固く焼締まる黒い粘土を混ぜて、強度を上げました。
また、素焼きした時の淡いクリーム色の風合いを残すため、釉薬にも工夫をし、ガラス質なのに光沢を抑えた象牙色のピッチャーが出来上がりました。
この釉薬は、象牙色の表面に揺らめく水のような模様が生まれるという、更に予想もしなかった効果を生みました。
竹口要
2.「ロール土鍋」(陶夢工房・杉本寿樹さん)
杉本寿樹さんは、滋賀県甲賀市の毛枚(もびら)の工房「陶夢工房」(とうむこうぼう) で作陶をしていらっしゃいます。
杉本さんは、信楽の高校を卒業後、高校から坂を下ったところにあった滋賀県立信楽窯業試験場で2年間修業されました。
その後、京都の「陶芸 高木岩華」(とうげい たかぎがんか)で9年、三重県伊賀の「土楽窯」(どらくがま)で7年修行した後、独立されました。
「普段の食卓で、つい使ってしまう器を作りたい」とおっしゃる杉本さん。
普通、土鍋と言えば型で作った底が丸いものです。
それに対して杉本さんの土鍋はろくろで成形した、底が火が通りやすいように平らなったものになっています。
底が平らだと、料理がしやすい。ひたひた煮も作りやすい。
煮魚も、普通の土鍋のように煮汁からしっぽ飛び出たり、はみ出すこともない。
角は丸くしながら、でも底はフラットになっています。
火がよく通り、熱で割れない厚みは6㎜。
杉本さんはこれをガイド線などを使わずに、叩いて厚みを測って削っていきます。
厚さ6㎜にした鍋を素焼きし、オリジナルの釉薬をかけて窯焼きすれば完成です。
3.「リバーシブル皿」(文五郎窯・奥田章さん)
「文五郎窯」の創業は文久2(1862)年。
初代・奥田文五郎氏が開窯以来、信楽焼の窯元として、代々伝統を守り続けてきました。
現在は、伝統工芸士である兄の5代目・文悟さんは、陶製浴槽や大型プランター、手洗い鉢など大物ロクロ師の匠として活動しています。
一方、弟の章さんは、スタイリッシュなデザインと使いやすさをコンセプトに、和洋どちらにも合う白と黒を基調としたシンプルモダンな食器を創作しています。
章さんは窯元の次男として生まれ、かつては不動産のサラリーマンでした。
24歳で会社を辞めて、焼き物へ世界に入りました。
その際、父に親の仕事と同じものを作るなと言われたことから、滋賀県立信楽窯業試験場に通ったのだそうです。
父に認められたい章さんは、信楽焼だが信楽焼らしくないものを作ろうと考え、「文五郎窯」では代々、火鉢などの大物を作成していましたが、食器を作る道へと進みました。
「リバーシブル皿」は、表と裏の両面を使うことが出来るお皿です。
台皿になったり、ひっくり返すと深さのある盛り皿になったりと1度で2度オイシイお皿です。
裏面と表面がそれぞれ色が違うので、くるりと裏返せば、料理の種類や気分に合わせて、「食」の楽しみを一層広げてくれる器です。
今や、「リバーシブル皿」は奥田さんの代名詞。
20年程前にリバーシブルのフリースが大流行した時に、それに目をつけ、お皿にしたらどうか?と考え、出来上がったのだそうです。
章さんの生み出した「リバーシブル皿」は、その類まれな創造性が賞賛されて、平成16(2004)年、信楽焼新総合展「食卓の部」で見事に優秀賞を受賞しました。
人気は、溝のある四角い皿です。
この溝は揚げ物などを載せた時に油が溝に落ちて、衣がカリッとしたままにになります。
その作り方は、まず粘土をピアノ線を板状にして切って、更に四角にカットして溝を作っていきます。
その溝は、「しのぎ」という技で、同じ深さで彫っていくのだそうです。
そして、どっちの面にも同じ釉薬を使って統一感を出しつつ、釉薬の濃度の違いにより色が異なるようにしています。
「十草(トクサ)」シリーズも有名です
文五郎窯 滋賀県甲賀市信楽町長野1087
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Shiga/yakimono より