アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

命の毀損 防止の手だては

2009年10月19日 | Weblog
フランス最大手の電話会社「フランス・テレコム」で、過去20か月に24人が自殺した。こ、これは衝撃でした。社員10万人の会社で24人…。
 そのむかし、「自殺」は、日本人特有の行為と思っていました。そのうち英語に「自殺」という単語があるので、英語圏の人も自殺するんだろうなあと…。アメリカンなどとても自殺する風には見えない感じなのですが、一時は20歳前後の男性の自殺が社会問題になったことがありました。
 「自爆」も、日本人特有の行為だろうと思っていました。ゼロファイターが敵艦に突っ込んでいったあの状況(米軍撮影の映像しか見てないけど…)が脳裏に焼き付いているもので。ところが、9.11をはじめ自爆テロが席巻しています。

 当然気になるのは、世界の自殺はどうなっているのか?WHOのデータから世界の自殺率を見てみると…人口10万人あたりの自殺者数
 1  リトアニア    38.6人  
 2  ベラルーシ    35.1人 
 3  ロシア      32.2人 
 4  スロベニア    26.3人  
 5  ハンガリー    26.0人  
 6  カザフスタン   25.9人  
 7  ラトビア     24.5人  
 8  日本       23.7人  
 9  ガイアナ     22.9人 
10  ウクライナ    22.6人  
19  フランス     17.6人
42  アメリカ     11.0人
65  イギリス      6.7人

フランスがどうのこうの前に、旧ソビエト連邦諸国の自殺率の高いこと!どうして?WHOの調査によれば、「経済状態」「厳寒の気候」「政情不安」「(経済、気候、政情に関わる)アルコール依存」が、自殺の原因とのこと。大国中国はどうなっているのか?統計不能とのこと。そうだろうなあ。一説では、中国でも自殺者が多く年間自殺者数は25~30万人で、自殺率は10万人当たり23人を超えている…。ほぼ日本並みってところでしょうか。

 フランスの話に戻しますが、世界で19位。日本ほど高くはないが、世界的には低くない。それにしてもフランス・テレコムは一体どうなっているんだ?新聞報道では、「仕事の重圧」「降格等、人事で絶望」。降格を知った男性社員が、会議中に切腹を図った例もあるという。切腹こそ、日本の特許かと思ったら…。フランス・テレコム労組幹部の話として報道されているのは、「(会社は)近代化のためには手段を選ばない恐怖政治を行てきた」というもの。
 フランスだけに、「恐怖政治」。久しぶりに聞きました。高校の倫理社会で習って以来じゃないかなあ。反対派を実力手段で弾圧して政治を行うこと。
 恐怖政治は、フランス語で、「テルール(Terreur)」。つまり、現代の脅威「テロ」の語源です。実力手段は、「処刑」です。フランス革命のとき、恐怖政治で処刑された人は4万人を超えるといわれています。
 経営状況が悪化した会社が、何とかしようと打った手が恐怖政治まがいのもので、社員を過酷な状況へ追い詰めた…そういうことでしょう。自殺者の大半が職場で自殺している点も、いかに大変な状況だったのかがうかがえる事実。

 自殺者が年間3万人となった日本。多くの自殺が個人の問題ではなく、不況や雇用不安など、社会の問題である。このことは失業率と自殺者の相関関係が高いことから容易に判断できる。リストラや配置転換がきっかけとなり、過労、人間関係の悪化、うつ病、生活苦など、複合的要因から自殺に至る。

 当然、「会社に責任がある」と、なる。会社としては対策を講じなければならない。対策として、「アリバイづくり」つまり、「自殺する社員を輩出(?)しないような手だてを講じて来たんだよ。マニュアルも作成しているよ。ほらね!」など。事故後の対応で、会社が不利にならないよう、アリバイを作って予防線を張っておく。訴訟を起こされて補償金を支払うリスク、会社の評判を落とすリスク、そうしたリスクを無くすことのほうが、労働状況を改善するよりも優先して行われている。
 経営者に「事後対策ではなく、事前の対策をしろ」と、言っても何をしたらいいか分からないのが現状でしょうか。キーワードとしては、「つながり」「信頼」「目標」「信念」「公平」「報酬」…ですが。

 「自殺しないで!」と、お願いしても…自殺する人はする。「自殺がどうして悪いんだ」とか、「自殺は遺伝」…とか言う人たちもおられる。私は、自殺には断固反対です。身体髪膚の毀損を忌み嫌っています。命の毀損など、とんでもない。