プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

松本俊一

2013-03-28 22:57:01 | 日記
野手失格して十年目に投手で初勝利

内、外野手を十年間もやっていて、ものにならなかった一軍半選手が、投手に転向して初めて登板するなり、いきなり初勝利をあげた。

記録男金田や稲尾のような大投手にとっては公式戦の1勝などそれほど感激はないだろう。だがプロ入団十年目で初勝利をあげたとなれば話はガラリと変わってくる。その投手の名前は東映・松本俊一投手(27歳)だ。松本にとって生涯最高の思い出になるだろう日は、開幕一週間目の十四日。場所は大阪球場だ。相手は今季優勝の最右翼にあげられている南海だった。この試合まで東映は三連敗の二勝四敗、およそオープン戦の好成績とは程遠い戦績に甘んじていた。「おい松ちゃん!投げてみろ・・」大下監督の思いがけない大声に、一瞬松本はわが耳を疑った。松本は腹にいっぱい力を入れると、マウンドまでスパイクの歯を立てて歩いた。スコアは六対二と南海が四点のリード。南海の三連勝はだれもが九分九厘堅いと思っていた。恐らく大下監督自身も・・・。
だが、松本はそのときこう自分にいって聞かせた。「オレはことしで十年目の選手だが、昨年限りで整理されてたかもしれない。それがプロで生きのびたのはピッチャーに転向したためだ。土橋さん(二軍コーチ)の期待に報いるためにも腕がちぎれるまで投げてやろう・・」と。松本は歯を食いしばって投げた。腹がすわってみると、不思議なほど心のゆとりがでてきた。ストレートも得意のスライダー、カーブもよく決まった。広瀬、キーオ、国貞など三イニングスで五個も三振を奪い無失点に押えた。いままで逆境に生きた松本に勝利の女神も微笑みかけないではいられなかったのだろう。七回宮原の左前タイムリーで三点目を入れ、六対三と詰め寄ると、八回には大杉が新山から劇的な満塁逆転大ホーマー。八回からは僚友の宮崎が二イニングを締めくくり、勝利は松本に転がり込んできた。「ありがとうミヤ(宮崎)」。プロ入団十年目でつかんだ初白星に、松本はこれだけいうのが精いっぱいだった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする