1965年
プロ入り初勝利をあげたのは昨年の四月二日、広島が相手だった。そのときは6-0の完封勝利。それ以後広島にはふしぎに相性がよく、昨シーズンは5勝3敗。いつも別所ヘッド・コーチからこんなことをいわれた。「シゲ、一日一回は必ず肉を食べるようにしろよ。スタミナをつけるにはこれが一番ええ方法なんだ。それに、まだまだ大きくならにゃあかんぞ」町へ出ればいつも焼き肉屋のお世話になっている。だが肉は肉でもトリ肉だけは全然ダメ。「あれはみただけでたべたものが逆流してしまいそうになるんです」ウシかブタかクジラが好きだ。別所ヘッド・コーチはなんとか高橋を次期エースに仕立て上げようと技術面以外でもアドバイスを与え、気をつかったわけだ。報道陣にかこまれて「三振はいくつだったですか、四球は?」と逆に質問。ひと通り自分の成績をきいてから話しはじめた。「後半の方がコントロールがよかった。最初はちょっとおかしかった。投げ込むうちにボールにのびも出てきたでしょう。広島は変化球とスピードボールをうまくミックスさせるバッキーに弱いですね。だからバッキーに比較的似ているぼくにも弱いんでしょう」つぎからつぎへと強気な言葉が出てくる。別所ヘッド・コーチの前でも「広島、国鉄なら連投もOKです」といったそうだ。これほどまでの自信はどこにあるのか?「プロ入り初勝利が広島相手だったということが、ぼくにとっては強い自信になっているんです」と自分で説明した。「不思議です。広島にはセ・リーグで一番きらいな横溝さんなんかいるんですがね。横溝さんには昨年も痛打をしょっちゅう浴びました。それでいて広島には負けない」この日はいつもより慎重だったという。「むこうの投手が池田さんだったでしょう。昨年も池田さんと投げ合ったときはよく負けました。昨年広島に3敗しましたが、そのうち二つが池田さんと投げ合ったときです」それだけにこの日の勝利はうれしかったらしい。報道陣への言葉をマウンド上で考えていたかのように、切れ目なくどんどん出てきた。
プロ入り初勝利をあげたのは昨年の四月二日、広島が相手だった。そのときは6-0の完封勝利。それ以後広島にはふしぎに相性がよく、昨シーズンは5勝3敗。いつも別所ヘッド・コーチからこんなことをいわれた。「シゲ、一日一回は必ず肉を食べるようにしろよ。スタミナをつけるにはこれが一番ええ方法なんだ。それに、まだまだ大きくならにゃあかんぞ」町へ出ればいつも焼き肉屋のお世話になっている。だが肉は肉でもトリ肉だけは全然ダメ。「あれはみただけでたべたものが逆流してしまいそうになるんです」ウシかブタかクジラが好きだ。別所ヘッド・コーチはなんとか高橋を次期エースに仕立て上げようと技術面以外でもアドバイスを与え、気をつかったわけだ。報道陣にかこまれて「三振はいくつだったですか、四球は?」と逆に質問。ひと通り自分の成績をきいてから話しはじめた。「後半の方がコントロールがよかった。最初はちょっとおかしかった。投げ込むうちにボールにのびも出てきたでしょう。広島は変化球とスピードボールをうまくミックスさせるバッキーに弱いですね。だからバッキーに比較的似ているぼくにも弱いんでしょう」つぎからつぎへと強気な言葉が出てくる。別所ヘッド・コーチの前でも「広島、国鉄なら連投もOKです」といったそうだ。これほどまでの自信はどこにあるのか?「プロ入り初勝利が広島相手だったということが、ぼくにとっては強い自信になっているんです」と自分で説明した。「不思議です。広島にはセ・リーグで一番きらいな横溝さんなんかいるんですがね。横溝さんには昨年も痛打をしょっちゅう浴びました。それでいて広島には負けない」この日はいつもより慎重だったという。「むこうの投手が池田さんだったでしょう。昨年も池田さんと投げ合ったときはよく負けました。昨年広島に3敗しましたが、そのうち二つが池田さんと投げ合ったときです」それだけにこの日の勝利はうれしかったらしい。報道陣への言葉をマウンド上で考えていたかのように、切れ目なくどんどん出てきた。