1957年
国鉄は当っているねと藤村監督がきいていたが、国鉄は試合前から元気がなかった。巨人に三連敗したシコリが残っているのかもしれない。田所は意外に球の伸びがなかった。はじめて打たれたヒットが三回一死後の山本の左前安打であったが、梅本のバントで送られたあと、吉田を敬遠して勝負した白坂の中前安打されて山本の生還を許した。吉田もチャンスに強いが、ベテラン白坂と勝負した田所の負けであった。これは五回一死梅本の右前安打のあと、田所が吉田と勝負して左翼席へ2点ホーマーされたのでもわかるとおり、田所は吉田がニガ手なのだ。阪神の先発梅本は一回鵜飼、箱田の安打を受けて不安を感じさせていた。しかし二回から長身からの外角スライダーを生かしてうまいピッチングに入った。三回鵜飼をスライダー、佐々木を内角シュート、箱田を外角低目の速球でそれぞれ三振にうちとる好調さ。今年で三年目だし、プレート度胸も満点、ゆうゆうとしたものだった。六回二死から佐藤、谷田に連安打されたのもまるで気にしていない。国鉄は梅本にのまれたみたいで、さっぱり意気が上がらなかった。阪神は六回代わった北畑にも一死二、三塁で三宅が左中間を深く破る三塁打し、この三宅も山本のスクイズにかえるムダのない攻撃ぶり。七回大島から田宮が右中間三百五十FTのホームランをたたき込み一方的に勝った。国鉄は八回箱田が左翼席へ本塁打しただけだった。
ー耐久(たいきゅう)高というのはあまり知られていないね。
「ええ、珍しい名前だよとよくいわれます。和歌山にある相撲の強い学校です。ぼくは高校のときから野球をやり投手をやっていました」
ープロ三年生といってもいままで公式戦にはあまり出なかったね。
「昨シーズン、大洋相手に二試合、合計五イニング投げただけです。ウエスタン・リーグでは昨シーズン三勝三敗ですが、公式戦でははじめての勝星です」
ー後楽園のプレートの感じは?
「そうですね、観衆が多いのでアガりました。一回佐々木さんのライナーを三宅さんが止めてくれなかったら、あそこでくずれていたでしょう」(気が弱いんです=具井マネージャー談)
ー昨年は下からも投げていたようだが・・・。
「上からも下からもおまけに横からも投げました。しかしフォームは一定した方がいいと思って、今シーズンからスリークォーターになおしたばかりです」
ーきょうの試合では球が外角にコントロールされていたところがよかった。
「外角へ入るカーブがよく曲がったのですが、内角のカーブは思うように曲がらなかった。きょうはコントロールがあまりよくなかったので、かえってよかったように思います」
ースピードはあったと思う?
「さあ、自分では、はっきりわかりません。二軍で投げればもっと速い球が投げられると思うのですが。-あのう、もう帰ってもいいでしょうか」
五尺八寸五分、十八貫、二十一歳。
国鉄は当っているねと藤村監督がきいていたが、国鉄は試合前から元気がなかった。巨人に三連敗したシコリが残っているのかもしれない。田所は意外に球の伸びがなかった。はじめて打たれたヒットが三回一死後の山本の左前安打であったが、梅本のバントで送られたあと、吉田を敬遠して勝負した白坂の中前安打されて山本の生還を許した。吉田もチャンスに強いが、ベテラン白坂と勝負した田所の負けであった。これは五回一死梅本の右前安打のあと、田所が吉田と勝負して左翼席へ2点ホーマーされたのでもわかるとおり、田所は吉田がニガ手なのだ。阪神の先発梅本は一回鵜飼、箱田の安打を受けて不安を感じさせていた。しかし二回から長身からの外角スライダーを生かしてうまいピッチングに入った。三回鵜飼をスライダー、佐々木を内角シュート、箱田を外角低目の速球でそれぞれ三振にうちとる好調さ。今年で三年目だし、プレート度胸も満点、ゆうゆうとしたものだった。六回二死から佐藤、谷田に連安打されたのもまるで気にしていない。国鉄は梅本にのまれたみたいで、さっぱり意気が上がらなかった。阪神は六回代わった北畑にも一死二、三塁で三宅が左中間を深く破る三塁打し、この三宅も山本のスクイズにかえるムダのない攻撃ぶり。七回大島から田宮が右中間三百五十FTのホームランをたたき込み一方的に勝った。国鉄は八回箱田が左翼席へ本塁打しただけだった。
ー耐久(たいきゅう)高というのはあまり知られていないね。
「ええ、珍しい名前だよとよくいわれます。和歌山にある相撲の強い学校です。ぼくは高校のときから野球をやり投手をやっていました」
ープロ三年生といってもいままで公式戦にはあまり出なかったね。
「昨シーズン、大洋相手に二試合、合計五イニング投げただけです。ウエスタン・リーグでは昨シーズン三勝三敗ですが、公式戦でははじめての勝星です」
ー後楽園のプレートの感じは?
「そうですね、観衆が多いのでアガりました。一回佐々木さんのライナーを三宅さんが止めてくれなかったら、あそこでくずれていたでしょう」(気が弱いんです=具井マネージャー談)
ー昨年は下からも投げていたようだが・・・。
「上からも下からもおまけに横からも投げました。しかしフォームは一定した方がいいと思って、今シーズンからスリークォーターになおしたばかりです」
ーきょうの試合では球が外角にコントロールされていたところがよかった。
「外角へ入るカーブがよく曲がったのですが、内角のカーブは思うように曲がらなかった。きょうはコントロールがあまりよくなかったので、かえってよかったように思います」
ースピードはあったと思う?
「さあ、自分では、はっきりわかりません。二軍で投げればもっと速い球が投げられると思うのですが。-あのう、もう帰ってもいいでしょうか」
五尺八寸五分、十八貫、二十一歳。