1993年
今夏の都市対抗に初出場。昨年は伊勢大会で無安打無得点試合を達成してスカウトたちの注目を集めた。「球が速く、将来性が魅力。フォークも武器だが、ちょっと四球が多く、一本立ちまでには時間が必要」(竜スカウト)。「本格派。制球力が課題だが、角度のある速球は決め手になる。今年は即戦力投手が少なく、上田の場合も時間をかけて育てたい」と備前スカウトはいう。
2位指名で相思相愛の上田投手。まだまだ粗削りながら150㌔近い速球投げる未完の大器だ。待機していた大阪市内の会社体育館に指名直後、竜スカウトから電話が入った。広島の確約と本人の逆指名で生まれた、予定通りの2位指名を告げられ「ありがとうございました。頑張ります」ときっぱり。しかし、頭の中は真っ白だったようで「こんな高い評価、まだ信じられません」。口元が緊張で細かく震えていた。それもそのはず、上田はチーム内でも第三の投手なのだ。高校時代は甲子園の舞台も踏んでいない無名の選手。しかし、早くから広島は速球に魅力を感じていた。「一生懸命頑張って、一軍でどんどん投げられるようになりたい。目標は元ロッテの村田兆治投手、マウンドから感動を伝えたい」少し落ち着きを取り戻すと、言葉は弾んだ。広島上田はもはや揺るぎない。横浜の6位指名を受け、入団確実の同僚・万永内野手とともに同社からは初めてのプロ野球選手となる。「会社からの期待は大きい。次の選手につなげる意味でも頑張りたい」ニックネーム「カイジュウ」は燃えていた。