1979年
ファームの投手がブルペンに来たとき、時刻は午後一時を回っていたが、今年で入団十年目の所捕手は「さあ、いこう」と、ルーキーの左腕松本基(都立川高)に声をかけた。十日午前十時から、新浦ら一線級の球を受け始め三時間ぶっ通し。松本基の100球で一日のノルマを果たした。「今日は投げ込み日だったから全部で700球ぐらい受けたでしょうね」と言う。ただ漠然とボールを捕るだけではない。一球ごとに励ましの声をかけ、時にはフォームの欠点を指摘していた。「五年目ぐらいから、投手の細かいくせがわかるようになった。公式戦でもブルペンで受けているので、投手の状態はしっかりつかんでいかねばならない」ので、キャンプでの練習台といっても気が抜けないわけだ。「昨年の日米野球レッズ戦まで三度全日本のブルペン捕手をつとめ、阪急の山田、近鉄の鈴木さんなど、一流どころの球を受けさせてもらった。その体験を生かしたいと思う」と、進んで若手の球を受ける。チームに欠かせない縁の下の力持ちである。