永谷園“松茸の味お吸い物”と言えば、月河の実家では夏場のうな丼・うな重・うな椀など“うな関係”が食卓に並ぶときには、思い出せないくらい昔から、欠かせない脇役でした。
その“欠かせない度”の高さは、『古畑任三郎』における今泉刑事(西村雅彦さん)、『鬼平犯科帳』におけるウサ忠こと木村忠吾(尾美としのりさん)、『富豪刑事』における狐塚(相島一之さん)、『爆竜戦隊アバレンジャー』におけるヤツデンワニぐらいの域に達していた……ってだんだん松茸の味お吸い物(以下“松吸い”と略す)本人(?)にはうれしいんだか悲しいんだかわからない喩えになってきてるな。
とにかく、毎日来る日も来る日もレギュラーというほどではなく、実家両親が減塩・減蛋白を強いられる身体になってからは“うな関係”ともども出番が減ったとは言え、常に食品庫近辺に2~3パック“いてくれないと困る”存在だったものです。
その松吸いが、玉木宏さん主演のCMで“茹でたてパスタに混ぜる”て言うか“茹でたてパスタを和える”を提案されていたのは驚きでした。
いやね、お湯を注いでお吸い物にする前提で製造された製品を、お湯抜き、お椀抜き、お箸抜きでパスタとマゼマゼし、パスタの一部として食せよというサジェスト自体の外道っぷりに驚いたのではありません。
“ふりかけ系”“ごはんのお供”界では昭和30年代から斯界をリードしパイオニア的存在だった永谷園さんのこと、“松茸風味パスタの素”として新商品を企画し売って出てもよさそう、て言うか売って出るのが当然そうなものなのに、あえて“お吸い物”としてあの海老茶紫と言うか二藍(ふたあゐ)色のパッケージですでに定番になっているわれらが松吸いを、そのまんまのパッケージと商品名=松吸いで「パスタでもイケます」と、いまや天下のゴールデンタイム主演俳優である玉木宏さんを起用してまで提案する、そのB級上等!な感覚の融通無碍さに驚いたのです。
このデンで行くと、マヨネーズのキューピーやケチャップのカゴメが「炊き立てごはんにトッピング!」はもちろん、ポッキーのグリコが「パキパキ折ってコンソメ・ポタージュの浮き実に!」とか、かっぱえびせんのカルビーが「カレーやエスニック料理の薬味に!」焼肉のタレのエバラが「フライや天ぷらにもナイスマッチ!」も有り有りでしょう。「食べてみたけどオレは、私はイケなかったよ」と積極的なネガティヴメッセージが出回らない限り、“提案したもの勝ち”になっちゃいそうなんだな。
CMって気になりだすと果てしなく引っかかるもので、最近『安宅家の人々』放送中に流れるペットフード“IAMS(アイムス)”で、「あれー?なんかさ前より目がイキイキしてない?」「歯だってキレイになっちゃってー、毛並みもツヤツヤ」とヤニさがっている旦那さんが“チョロ”こと中野英雄さんなんですよね。
しばらく見ないうちに首がなくなって、肩からいきなり頭になってるし。後ろ首に段々ついてるし。いまならフィリピンパブのホステスに入れ上げたあげくノルマに耐えかねて自殺しちゃう新人証券マンより、エロ欲含み怪僧のほうが似合いそう。道鏡とか。あと武蔵坊弁慶か。ちょっと頭悪そうな弁慶。
それより日が燦燦と降りそそぐ真っ昼間の玄関で「ただいまー」と奥さんに出迎えられ愛犬と戯れるってどんな旦那さんなんだ。バッグの形状からして記者か編集者か。入稿前の徹夜明けか。屋内飼いの犬見て珍しげに写メ撮って「前より…」言ってる辺り、籍入ってる旦那じゃないのかな。昼ドラ以上にコンプリケイテッドな人間関係を想像させるCMです。