イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ひざかたトシちゃん

2010-09-17 16:18:50 | アニメ・コミック・ゲーム

うはは、「ハイ水木プロです、日月出版社さんですね」はよかったな(@『ゲゲゲの女房』)。

耳で音声だけ聞いてると何でもないけど、地デジ放送の字幕で文字が並ぶと“日月…水木………金土はドコ行ったんだ”と思ってしまう。そのうえゲゲゲの次女喜子ちゃん(荒井萌さん)、受信口もふさがずに「お父ちゃん、デンワ~」とか、客の服にお茶こぼして書類でゴシゴシとか、いしいひさいち漫画のノンキャリウーマン三宅さんみたいなんだ。

鴨川つばめの『マカロニほうれん荘』きんどー日陽さんなんてのもいましたっけ。

それはともかく、喜子ちゃん役の荒井萌さんは19953月生まれのまだ15歳なんですね。短大1年生にしては幼すぎに見えるのもやむなしか。でも短大でも四大でも、卒業する頃まで“制服着たら高校生で通用する”童顔ちゃんっていましたっけね。

昭和60年、世の中景気はいいし、女子短大生ともなればバイト三昧のお友達も大勢いるだろうに、村井家はしげるお父ちゃん(向井理さん)も布美枝お母ちゃん(松下奈緒さん)も、雇われて組織の歯車になって労賃もらうってことと縁が薄いので、喜子ちゃんも電話番とかお茶くみとか、社会に出れば誰もが一度は通る道がいきなり頼りない。でもイカルお祖母ちゃん(竹下景子さん)の言うように「自分を飾らん」「喜子と話しちょうと心が休まる」のが彼女のいいところ。

一方ゲゲゲの長女藍子さん(青谷優衣さん)は新卒教師。喜子ちゃんが心配したように、新学年から一気にがんばり過ぎて、2ヶ月あまりでゴムが伸びきり気味です。「勉強やスポーツで目立たない子のいいところ、頑張ってるところを、皆に紹介してあげたい」という学級通信企画が、「同じことをボクがやっても載せてもらえないのに、載せて褒められてる子がいる、エコひいき」と反発されては、“ぱっとしない子の気持ちがわかる先生に”と志しを抱いて働き始めた藍子先生もつらいところ。

どうなんでしょうねぇ。載せられた時点で“パッとしない子認定”されてるわけで、褒めるところを一生懸命探してもらってることがわかってしまう子のほうは、あんまり嬉しくないんじゃないですかね。親や教師など、教え導く立場の大人たちは、“褒める”ということにえらく価値を置き、“褒めないと子供は伸びない、くすんでしまう”強迫観念にとらわれがちだけれど、逆に、褒められることのない、パッとしない子のほうが、パッとしないことによって、できる子、目立つ子、優秀な子には望めない、ラクでのんびり楽しい学校生活が送れていたりもするのです。

藍子先生も、あんまりムキにならず、パッとしない子が、パッとしないがゆえの悩みや壁にぶつかったときにだけさらっと手を差しのべてあげるくらいのほうが、お互いに居心地がいいのではないかな。子供の気持ちがまったく読めないわからない人間は、もちろん教師に向かないけれど、あんまり子供好きすぎて、子供の思いと自分の思いを重ね合わせて前がかりになってしまう人も、ちょっと考えものかも。

今日は、遅くまで学級通信作りに励む藍子のために芋ぜんざいを差し入れした布美枝さんが、食堂に戻ってきて「お父ちゃん、芋ぜんざい食べる?」に茂さん「“も”!?って何だ」で地味爆笑。“オレより先に誰か食べたのかッ!?”“オレの好物なのに、なしてオレがついでにお相伴みたいになってんの?”と言わんばかり。昭和60年時制なら、しげる先生当然還暦は過ぎ、子供が社会人と短大生になっても、この食い意地上等。喜子ちゃんは喜子ちゃんで「カステラ食べてからね~」「もぉ食べられない~」と幸せな寝言発しながら寝坊スケしてるし。どんだけ食べ物のふんだんに出てくる夢を見てるんだと。

茂お父ちゃんの異才と自由な感性と集中力、布美枝さんのおっとり静かな包容力、しっかりDNAの受け継がれた村井家とも、来週いっぱいでまずは“こっぽし”です。

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折檻よ

2010-09-16 20:41:07 | 特撮・ヒーロー

昨日15日、直近のローソンで、14日発売Asahiくつろぎ仕込〈4VGを見つけ速攻購入。

ローソンは、セブンイレブンに比べるとKIRIN寄りでなく、Asahiの新製品に好意的な感じがしますね。セブンでは早々に並ばなくなった麦搾りが、ローソンでは最近まで定番並びしていましたし。

それはともかく、日没を待って試飲してみた第一印象では、酸味がえらく前に出ている感じでした。リニューアル前のKIRINコクの時間、あるいはSUNTORY7種のホップRelaxと同じ系統。宣伝文句にうたっている“ドイツのヴァイツェンビール固有の香り成分=4VG4vinylguaiacol)(よんビニル・グアイアコル)”なるものが示す本格感、重量感はあまり感じません。

原材料表示にある“アミノ酸(ロイシン)”のもたらす酸味なのか。DAKARA、アクエリアス、アミノサプリなど、健康系、スポーツドリンクでよく見かける成分ですロイシン。

それプラス、このラベル、alc.5%の表示以上に、お酒としての回り方が剥き出しと言うか、仄かさや爽やかさがありません。モロで直線的。泡モノ、ビール系ならば、ある量飲めば酔うにしても、もう少し爽快感とかホロ酔いかろやか気分が先に来てもよさそうなものじゃないですか。なんかさ、ガーッと来ちゃうんだね。“女の子早いとこ酔わしてエロエロにする!”目的の、合コン仕様酎ハイ系みたいに。

原材料中の発泡酒・スピリッツにどんなものを使っているのか。そっちの持つ特性なのかもしれません。

SUNTORY金麦や、KIRINコクの時間などの無難系、飽きない系をおウチ飲みの定番にしている人が、たまに違うヤツで冒険してみたいときにはいいかもしれませんが、レギュラー愛飲ラベルにするには、ちょっとクドい。

新ジャンルマニエリスム。ナチュラルな、素直なビールっぽさより、こねくり回した、一瞬の目新しさ、同ジャンルの他社製品との差別化に命かけましたみたいな味で、リピーターになる気はしませんでした。残念。

それにしても、このラベルの公式サイトでアンニュイな仕草を披露しているモデルさんが、実写『美少女戦士セーラームーン』火野レイ役北川景子さんだったとは思いもしませんでした。セーラーマーズ以後数々のドラマで起用されご活躍とは聞き知っていましたが、あれは2003年秋~04年秋放送だから、すでに6年前。当時18歳、いま24歳なのね。こんなにシャープに大人っぽいお顔立ちと雰囲気になっているとはねえ。お酒のCMに登場しても、もう全然違和感ありませんね。いっぱい飲んで盛り上げてあげたいけど、味がこれじゃ、ちょっとなぁ。

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胸像見たい

2010-09-15 16:12:07 | ニュース

とりあえず党首選挙が終わった民主党議員、党役員重鎮だか軽鎮だか知らないけど、皆さんマイクカメラ集まった大事なところで「ノーサイド」とか「全員野球」とか、スポーツに喩えるのやめませんか。

庶民性、親しみやすさや、アクティヴさをアピールしようという魂胆でもあるのか。なんか、活字と言ったらスポーツ新聞と週刊現代、週刊ポストのたぐいしか読まないおっさんリーマンみたいに聞こえるんですよ。

「政治家が政治政局を語るのに、野球サッカー、オリンピック比喩は禁止」。誰か法案上げないかな。いやしくもバッジつけて、国の選良を以て任じるなら、囲碁将棋とかチェスとか、柔道剣道空手合気道、せめて国技の(これまた近頃怪しいが)相撲ぐらいを引き合いに出していただかないと。

 とにかく、首相だ次期首相だ元首相だとでかい顔してる人たちの言葉、言葉を発する挙措が、ここのところの円高と反比例するようにめっきり安くて安くてしょうがない。

別に野球蹴球系が、囲碁将棋伝統武道に比べて低級だと蔑視するわけではありません。人の上に立つ人、立ってるつもりでいる人たちが、ここぞで、スポーツ新聞の解説コラムか監督インタヴューから拾ってきた系の比喩を選択する、その軽っちい品性がガッカリだよ、ということを言いたかったのでした。

また、いまに始まったことじゃないけど、小沢一郎さんの「これからは一兵卒としてウンヌン」という、あからさまに魂の入ってない軍隊用語もどげしたものか。

もとより骨の髄まで剛腕ゴリ押し体質の人、「アタマがクラシックにできとる」(イタチ浦木@『ゲゲゲの女房』)なんて微笑ましい世界じゃないだけに。

そう言えば、野党になり果てていまや月にいっぺんぐらいしか誰もコメント求めにも行かない自民党の谷垣禎一さんも、10年ほど前の“加藤の乱”で「加藤(紘一)さんは大将なんだから、ひとりで突撃はダメですよ」と泣いて止めていたなあ。結局、政治家の皆さんは脳内が常在戦場、と言えば聞こえがいいけれど、年じゅうヴァーチャル勝負事を繰り広げていないとやってられないのかもしれない。

その中でも感性が“古暗重”の人は軍隊用語、戦争戦略用語がつい出るし、“若軽チョロ”の人はスポーツ新聞系に走るのかも。

『ゲゲゲの女房』は安来から源兵衛さん(大杉漣さん)がミヤコさん(古手川祐子さん)を伴って“来襲”。しげる(向井理さん)を上座において囲んだ夕食の間は一応家長としてしげるを立てていたのでしょうけど、しげるさんが仕事場に、藍子喜子姉妹が勉強部屋にとハケて、娘の布美枝さん(松下奈緒さん)とミヤコさんだけでお茶を飲む段になると「(教員合格した)藍子は大したものだな、さすがウチの家系だ」「しかしムコ殿はあまり喜んどらんようだったな」と“自分が大家長”モード全開。

娘を家から出したくなければ、赴任先が決まる前にとにかく見合いをまとめておいて…って、ここまでアタマが封建クラシックだといっそ笑いますな。進路選び、試験でテンション上がって、努力して出した結果を絶賛してもらえず、そうでなくてもピリピリしている藍子ちゃん(青谷優衣さん)、大学卒業間近のこの年代女子にいちばんナーバスなモチーフである見合いだ結婚だをからませたら、こじれないほうがおかしいっつうの。

おもしろいのは、普通、ここまで家庭内に味方がいない状態になったら、「親の顔見ながらご飯なんか食べたくない」って部屋に引きこもるか、友達の家や下宿に転がり込むかしそうな藍子ちゃんが、しっかり卓袱台についてモリモリ(あまりおいしそうにではなかったけど)食べてたことですね。トラブっても悩んでも、胃袋を満たすことは別勘定。13日(月)放送の特大ホールケーキ一気独占食いといい、“生きることは食べること”の村井家DNAを、しっかり受け継いでいる長女さん、生きることは夢を追うことでもありますからね。普通、“若い娘が親に逆らって好き勝手”といったら男遊びか飲酒薬物援交のたぐいと相場が決まっているものを、藍子ちゃんは「(幼い頃の自分のような)勉強苦手な子の気持ちのわかる先生に」としっかり地に足のついた夢を持って逆らっている分、しげるさんや源兵衛さんより理がある。

もし最悪の場合、都下島嶼部、八丈島や小笠原群島にでも赴任になったら、「お父ちゃんの好きな南方の楽園だよ!」か何か言って水木プロごと引っ越して連れて行っちゃえば。

ドラマも終盤に近づいてきてお疲れ息抜きモードというわけでもないでしょうが、今週は特に漫画チックな映像演出が楽しいですね。雄一さん夫婦(大倉孝二さん愛華みれさん)がイカル絹代ばあちゃん(竹下景子さん)のあたり構わぬ猛烈ぶりを嘆くときに、レストランレジをバン!と叩くイカルさんのカットがヒヨヒヨヒヨ~とフレーム下に揺れ落ちたり、藍子に見合いをの源兵衛×しげる密談が「そげいえばあのとき…」と布美枝さんの回想になると“カメラは見た!”みたいにラウンドでスポット切られたり。

密談中に布美枝さんが「ここにおったの?」と入ってくると「おーおーそげだ、仕事場を見せてもらっておった(激焦)」とわさわさ立ち上がりざま、要りもしないデカ灰皿つかんでちょろちょろし出す源兵衛さん。初上京時に下宿人中森さんの柄杓つかんで振り回しながら説教してた場面同様、大杉漣さんのアドリブなんでしょうけど、テンション上がると手近の物を何でも手にして、噺家さんの扇子よろしくボディランゲージのツールにする人って、結構見かけますよ。源兵衛さん同様、せっかちで、次々思いつくアイディアや主張にクチ言葉が同じ速度で出てきてくれず、「うぁーもう何と言ったらいいんだ、そのホラ、あれだよアレ」みたいに年じゅうイライラつっからかったみたいにしゃべる人に多いタイプ。柄杓でも何でも、持ってアクションつけるとイキオイで表現力がアップするとでも思っちゃうんでしょうね。現場のアドリブで源兵衛さんの性格を的確につかまえる、ベテラン大杉さんさすがです。

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イエイ、イエイ

2010-09-14 14:56:15 | 朝ドラマ

11日(土)放送で大往生旅立ったイトツ修平じいちゃん(風間杜夫さん@『ゲゲゲの女房』)の戒名は陽院明雲修道居士”というんですね。デジタル放送を大画面TVで見ると本当に“文字系”ははっきり読めます。

 イトツさんなら「戒名はいらん位牌もいらん」と言いそうだけれど、それでも故郷=境港の先祖代々の墓に入りたいともらしていたそうだし、相応の格式で送らないと「名字帯刀御免の家柄」を誇りにするイカル絹代ばあちゃん(竹下景子さん)が黙ってなさそうですもんね。

 戒名中の“修”は本名の修平からでしょうけれど、「人生は流れるの如し」との生前の名言(?)と、物欲出世欲のまったくない清清しいお人柄が反映した戒名で彼岸に行けて何より。昔は地元から一歩も出なかったとしげる(向井理さん)が懐古する絹代さんが、修平さん亡き後「ますますパワーアップしたようで」、日光は渋滞でいけん、「ヨーロッパの紅葉はどげなだらか?今度はヨーロッパに連れて行ってごすだわ」と出歩き志向になったのも、着物履き物や宝飾アクセのたぐいにはあまり執着ありげではない彼女のこと。寿命尽きる前にゼイタクがしたいというより、本当は修平さんの自由な生き方をリスペクトしていて、一緒に雲のように、好きな事をして好きなところで、目新しい風物に興じながら、にぎやかにほがらかに生きたかったという潜在願望のあらわれなのかもしれません。

「間違ったことを間違っとる、悪い事を悪いと言って何がいけん、悪い事を悪いと誰も言わんだからこげな世の中になった」と、事あるごとに“イカって”いた絹代さん、職業など人生行路の選択肢がほぼ皆無だった明治の女性、それも誇り高い封建旧家出身ゆえに持てるエネルギーやパワーの使い所が見つからなかった年月は、さぞ長かったことでしょう。彼女の体力気力が残っているうちに、しげるさんたち息子は、手分けしていろいろ連れ出してガス抜き機会を与えてあげませんとね。

それにしても、最期の数日まで、構想60年の活動脚本『第三丸爆発』執筆に余念がなかった修平さん、「芸術を解さん女だけん」と嘆いていた女房絹代さんのクチから「楽しみですねえ、出来上がるの」の言葉が聞けて(よく聞こえなかった振りをしていたけど)、もう完成したも同然の気持ちだったかもしれませんね。

「ここからが、ええとこだぞ」「なんだ、もう終わりか…あぁおもしろかったなあ」と想像の銀幕に向けた言葉はそのままみずからの人生への賛歌。生きるということ、生きてきた道程、そして天寿のその先にまで、ここまでとことんポジティヴを貫ける人は、ドラマの中とは言え羨ましいのひと言。リアル水木しげるさんの奥様布枝さんの原案エッセイ本の中で触れられている以上に、ドラマのしげる父イトツさんは風間杜夫さんという唯一無二の役者さん実体を得て輝いたのではないでしょうか。

風間さんを抜擢し鍛え抜いたつかこうへいさんも、彼岸で「オマエなんかまだまだだよ、色気が予定調和だ」とか毒吐きながら拍手しているかも。

「ヨーロッパならパリがええねー、けど“ナポリを見て死ね”とも言うけん…」と遺影になった修平さんから返事のないのが淋しそうな絹代さん。お父さんも好きだった香水をたっぷりつけて、うんと息子たちに親切してもらって下さい(“孝行”なんて封建な用語じゃなく“親切”と言うのがまた村井家らしくてナイス)。

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草場の陰から

2010-09-13 22:14:34 | アニメ・コミック・ゲーム

少し日にちが経ってしまいましたが、クレージーキャッツOBの谷啓さん、亡くなられましたね。

NHK教育『美の壷』が“甥っ子”設定で草刈正雄さんにバトンタッチされた頃から、体調問題かな…という気はしていたのです。“趣味人で笑いを解するシニア”がとても似合っておられたのに。78歳という享年を聞くと、いま少し…と思ってしまうのですけれどね。

クレージー全開時代の映画を、BSなどで何度か観ましたが、メンバー7人の中で若いほうから数えて2番め(19322月生まれ。同年9月生まれの故・安田伸さんが最年少)で、小柄でまるまっちい体格、丸顔の風貌もあってか、“ワケ知りで、ちょっとヤなやつ寄りの、でも、いいところでその小知恵が発揮される父っちゃん坊や”キャラが多かったようです。

しかしそれより何より、谷さんと言えばとにかくトロンボーンですよね。月河はNHK朝ドラマ『瞳』のOPで中川英二郎さんを知るまでは、「日本でトロンボーンと言えば谷啓さん」あるのみでした。

昭和44年頃でしょうか、まだ少年マガジンで『巨人の星』をバリバリ連載中の川崎のぼるさんが少年サンデーに連載していた『歌え!ムスタング』という、スポーツ根性もの略してスポ根ならぬ“芸術根性”もの漫画で、谷啓さんが実名登場したことがあったんですよ。

主人公の、少年院育ちの草場剛(たけし)は、星飛雄馬と花形満の合体したみたいな、打ってよし投げてよしの天才野球少年だったのですが、事故か何かで二度とボールもバットも握れない手になってしまい、絶望の果てに“ジャズミュージシャンとして生きる”という道を見つけ出すわけです。詳しいことは忘れましたが、もともと野球以外にそういう素養もある少年(という設定)だったのでしょうな。

んで、そういう逆境の草場が思いついたのが、「谷啓なら日本を代表する音楽家」「弟子入りを目指そう」。深夜押しかけた谷啓さんの自邸では、昭和44年頃当時の谷さんが「ガチョーン!それではまた来週をお楽しみに!」と、ひとり自主リハを繰り広げている。そこへ草場が押しかけてくる。草場、星飛雄馬と『アニマル1(ワン)』の一郎を合体させて、花形の身長にしたようなヴィジュアルと記憶しています。

ここらへん記憶があいまいなのですが、すでに大物ミュージシャン兼売れっ子コメディタレントでもある谷さんは、何度か草場を追っぱらうはずです。『巨人の星』での青田昇さんや、金田正一さん、監督川上哲治さんを描いた、川崎のぼるさんのあのタッチの谷啓さんを想像して下さいな。とにかく草場の押しかけが深夜ばっかりなので、ここで登場する谷さんはいつも重役みたいなガウン姿です。

んで、何度めかに作中の谷啓さんが根負けして、草場を居間に招じ入れ、「キミに見せたいものがある、みたまえ!」となんか見せるのですが………

…その次の回から未読なのです。ちょうど、いつもの、男の子向け漫画雑誌がしこたま読める床屋さんに行かなくなった時期だったのかもしれない。あの後、谷啓さん草場に何を見せたのか。草場はめでたく弟子入りして、ミュージシャンとして再起大成なったのかどうなのか。

“谷啓(たに・けい)”という芸名が、ダニー・ケイからの命名だったというのもずいぶん後になってから知りました。江戸川乱歩、もしくは久石譲方式ですな。

戦後のバリバリ直輸入ジャズと、高度成長期のTV芸能の世界を橋渡ししてくれた功労者のおひとりだったと思います。映画『釣りバカ日誌』のレギュラーに定着した1980年代頃だったか、当時の若手お笑いの番組に大御所としてゲスト出演、「“ガチョーン”は手を前に突き出すんじゃなく、“ガ”で前に出して掴んで、“…チョーン”で手前に引っ張るんだ」と、ガチョーン指南をしてくれていました。アーティストそのもののエキセントリックさと、素でおもしろい人という親しみやすさが入り混じって、クレージーのメンバーの中でも独特な持ち味の人でした。

あれはクレージー映画、無責任映画とは別立ての作品だったと思うのですが、『図々しい奴』ってのもあった。主題歌も谷さんが歌っておられました。

♪アタマは悪いし カネもない だけどいつでも幸せさ 図々しいヤツと 人は言うけど………

……この先が、また記憶がない。なんか谷さんがらみの記憶って、こういうのが多いんですよ。アート、芸能の才能に抜きん出ていた分、逆に、ガキでもジャリでも口ずさむ国民的なブームとまではなりにくかったのかもしれません。かえって、若い主役を引き立て、渋く奇妙な味を出す脇役に回ってからのほうがいい仕事をされたかもしれない。

意外ですが、あれだけ時代の笑いを先導したクレージーキャッツの中で、最初からミュージシャン志向でなく“お笑いをやりたい、喜劇役者になりたい”との強い希望を持って加入したのは谷さんひとりだったとも聞きました。

人間、“いちばんやりたいこと”“いちばん人より秀でていること”でもっぱら評価され、人気を得るとも限らないからおもしろい。それでも78歳と聞けば、もう少し…と思うことに変わりはありません。

『ムスタング』の草場はたぶん団塊世代だったと思うので、現存人物ならいま還暦ぐらいにはなっているかな。本当に、あのとき谷さんに何を見せられたのだろうか。

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