博士:さっき買って来て聴いてみたよ。なんと、数えてみたらこのアルバムで32枚目のソロ・スタジオ・アルバムで、ライブ、サントラそしてコンピ盤全て入れれば膨大な数のアルバムを出したことになるのう。
ファースト・ソロのEMPTY SKYを1969年に出してから45年以上第一線で活動してきたのには恐れ入るわい。
日本では、EMPTY SKYは翌年の1970年に出されたのじゃが、その頃は、中坊で学校のクラブ活動に身を入れすぎて、エルトンなんて歌手全く知らなかったぞ。ただし、IT’S ME THAT YOU NEED(イエス・イッツ・ミー)はエルトンが歌っていたとは知らずにラジオで聞いたことがあったような…
わしの場合は、そのデビューから2-3年経った頃の後追いのファンじゃな。
助手:今回のアルバムはいかがでした?
博士:昔のようなノリの良いアルバムだと評価する人も数多くいるようだ。しかし、辛口と思われるかも知れないが、わし的にはアルバムの内容は、まあ及第点レベルじゃないかと考えるのじゃ。
年をとれば仕方のないことなのだが、残念ながらオナラの音を除いて、ほとんどの人の声は衰えてしまうのじゃ。
エルトンとて例外ではなく、ここ10年ほどに出たアルバムにおいては、70年代全盛期頃のファル・セットを含めた高い声は出なくなり、低音一辺倒の歌唱になってしまっておる。
アルバム、MADMAN ACROSS THE WATERの頃のポール・バックマスターの重苦しいストリングスに負けない熱唱、DANIELのサビの部分の裏声、SATURDAY NIGHT’S ALIGHT FOR FIGHTINGでのロック調シャウト、そしてアップ・テンポの楽曲などを、昔のクオリティーを期待するにはちょっと厳しいかのう。
そうなると、今出せる声量や音域に従って、自身が十分消化できるテンポの楽曲を作曲しそれを歌唱すると、どうしても似たり寄ったりになりがちじゃ。
だから最近の新譜のアルバムが出たとしても、曲のイントロを聴いただけで、どのような感じの曲になるか、なんとなく推測出来てしまうのじゃよ。いい意味で期待を裏切るような事があまり無いのが残念といえば残念じゃよ。
助手:じゃあ、今回のCD制作に関して、なにかターゲット的なものが設定されているのですかね?
博士: 最近洋楽を聴くことに目覚めた中高生や20から30代の若い世代が挙ってこのCDを買うことは多分ないと思うのだが。
わしらが中高生の時は、若いエルトンがとびきりのバラッドやロック・ナンバーをガンガン歌っていたので、当然その世界に引き込まれたのじゃが…
助手:となると、70-80年代からエルトンのアルバムをずっと聴いてきた40代以降のファンに向けたものですね。まあ、長年ファンを続けてきた人ならば、エルトンが元気で新譜を出したり、ライブ活動をやってくれるのであれば、1986年のアルバムLEATHER JACKETSのような駄作でない限り、躊躇しないでこのCDを買っちゃうのではないかと言う事ですかね…
博士: デビューからLEATHER JACKETSも含めた殆どのアルバムを漏れなく購入してきた身としては、やっぱり往年の名曲に匹敵するような曲が入ってないかと、新譜が出ればつい期待をしてしまうのも事実じゃ。
いつかグッドバイ・イエロー・ブリック・ロードに匹敵する、誰もがその出来に唸ってしまうようなアルバム… もちろん過去の成功にしがみ付くことなく、いい作品を是非作って欲しいと思うのじゃよ。
助手:なるほど、なるほど。ファンの気持ちって結構複雑なんですね。
博士:“なるほど”は一回でよろしー だけど、エルトンの新譜は最低5回は聴いてほしいのう。