SACDの規格はサンプリング周波数がCDの44.1kHzに対して2.8224MHz、周波数再生レンジは5−20kHzに対して20−100kHz、さらにダイナミック・レンジは96d Bに対して120d Bとどの数字もCDのスペックを凌駕している。それにDSDなるデジタル技術を用いてスムーズな波形の生成でより自然なサウンドを目指す、言い換えれば目の前で演奏されているのような再生音を目指すってコンセプト。
2002年のストーンズのSACD化シリーズを皮切りに翌年のディランのSACDにも飛びつき、聴く前からきっといい音に違いないって思っていたオイラだった。
しかし今から思えば、これってやっぱり聴く人やその再生環境を選ぶよね。
SACDのマスタリングって、90年代のラウドネス戦争終結後もあって、結構抑え気味って感じがする。人間の耳は時に音圧高めの派手なマスタリングがいい音に聴こえる時もあり、その後にSACDを聴くとなんだか地味に感じる。そんな時は再生ボリュームを上げればいいのだけれど、それに対応できる再生装置の性能及びおよび適切なリスニング・ルームがあってこそSACDの最大効果が得られるのでは…..
そうこうしているうちに、SACDのメディアもあまり発売されなくなり、更に2ch専門のSACDを再生する機器も今じゃ殆ど見当たらず10万円越えのプレーヤーが最低ラインで装置の更新しようと思うもおいそれと手が出ない。
もうこの手のマニアックな世界も風前の灯火。
若い人たちの間じゃ、サブスクの音源をスマホ経由のワイヤレス・イヤホンで楽しむのが今やデフォ。
SACD? 何それ?って時代の到来もすぐそこに….
1964年に出たディランの4枚目のアルバム、Another Side Of Bod Dylan、それまでのプロテスト・ソングから少々距離を置き自由に書き綴った詩を歌う。
ちょっぴり地味目ではあるが、他のアーティストにカバーされポップに変換された曲もいくつか収録されていて何度もその原曲を聴いていると親しみが湧いてくる。
アコギ演奏に乗っかって歌うシンプルなスタイルなので特にSACDでなくとも良いと思うが、このSACDには何と5.1chのサラウンド音源も収録されているので再生システムがあれば是非ともその空間に身を置いて体験してみたいものだ。