ガサゴソ、ガサゴソ
助手:あれ、博士! こんな夜遅くスーツケースに荷物を詰め込んで、一体何をしているのですか?
博士:3月と言えば別れの季節。ここ8年ほどずっと同じ場所で暮らしていたわけじゃが、ちょっとマンネリ気味な気がしてのう…
ちょっとオツムの方に刺激を与えるために、住環境を変化させてみようと思い、引っ越してみようかと思ったのじゃよ。
助手:えっー! それじゃこの研究所は一体どうなるのですか?
博士:取り敢えず、君がわしの代わりに所長として運営してくれんかのう~ わしが引っ越し先から原稿を送るので、それをブログにアップしてくれればいいのじゃ。
助手:わかりました。でも寂しくなりますね。
博士:今住んでいる場所は、わしが生まれ育った実家の隣町に当たるので、非常に思い入れも深いのじゃ。だから、必ずこの地に戻ってくるつもりじゃ。
あのユーミンも歌っておる。
アルバム、ミスリムの一曲目
“生まれた街で”
いつものあいさつなら どうぞしないで
言葉にしたくないよ 今朝の天気は
街角に立ち止まり
風を見送ったとき
季節が わかったよ
生まれた街の包い やっと気づいた
もう遠いところへと ひかれはしない
小さなバイクを止め
風を見送ったとき
季節が わかったよ
街角に立ち止まり
風を見送ったとき
季節が わかったよ
街角に立ち止まり
風を見送ったとき
季節が わかったよ
生まれた街が一番なのじゃよ。
助手:よくわかりました。生まれた街がやっぱり一番だと確信したらすぐに帰ってきてください。
それでは、餞別としてポール・シリーズ第4弾、アップル所属のアーティスト、メリー・ホプキンが歌ったGOODBYEを送ります。
1968年ポールのプロデュースによって制作された、シングル“悲しき天使”(THOSE WERE THE DAYS)が全英1位、全米2位の大ヒットを記録。(当時の 全米1位はビートルズのHEY JUDE)
翌年、“悲しき天使”を収録したアルバム、POST CARDを出す。(全英3位、全米28位と健闘)
そしてポール作のシングル第二弾、GOODBYEが全英2位、全米13位とチャートインしこれまたヒットを記録。(当時の 全英1位はビートルズのGET BACK)
バッド・フィンガーの1969年作のサントラ盤、マジック・クリスチャン・ミュージックに収録された、ポール作COME AND GET IT(全英4位、全米7位)と同じように、ポールのアレンジ通りに演奏もしくは歌唱すればヒット間違いなしと言う、至れり尽くせりの楽曲だった。
残念ながら、メリーはポールのポップ路線とは異なるフォーク調の曲を歌いたかったようで、ポールと袂を別つと急速に人気が下降していった。
博士:さすがは天才ポールじゃ。しかし、彼とてマンネリに陥る時もある。目先を変えて、アフリカはナイジェリアの首都ラゴスのEMIスタジオで制作したのが、レコードのA面全てシングル・カット可能な捨て曲なしのBAND ON THE RUNじゃった。
助手:博士もポールのように新しい土地で一皮むけて、またここに帰ってきてください。
博士:その通りじゃ! 健康たわしを使い、一皮でも二皮でもむけたいと思っているのじゃ。サウナでのヘチマを使った垢すりも気持ちがよく捨てがたいのう~
助手:ちょっと言っている意味が違うような?
Goodbye/Mary Hopkin
1997年のポールのソロ・アルバム、FLAMING PIEからシングル・カットされたヤング・ボーイと同じように、曲の出だしからメロディーを口ずさみながらすーっと入っていける曲といえば、やっぱりアナザー・デイだろう。
1970年のソロ・デビュー・アルバム、MCCARTNEYの不評を買った。
もともとMCCARTNEYが、ビートルズ末期に個人的に録音したアウトテークの寄せ集めって感じがあったから、もちろんメイビーアイムアメイズドのような名曲も収録されていたが、ビートルズ時代のポールの実力からすればガッカリする内容だった。
1971年にアナザー・デイはシングルのみで発売され、アルバムの不評を弾き飛ばす傑作だった。この曲の大ヒットにより(シングル・チャート全英2位、全米5位)、次作の大ヒット・アルバムRAMを生むための重要な継なぎであった言っても過言ではないと思う。
平凡な女性の生活を描写し、IT’S JUST ANOTHER DAY. (またいつもと変わらない日なんだ)と歌う。
そう、日々の暮らしは毎日が大体同じルーティーンの繰り返し。6時半に起きて、朝飯食って、トイレで爆撃、駆け込んだ駅のホームの前から二両目の三番目の扉の位置を示す場所に並んでいると、いつもよく見かけるおっさんや若いネーちゃんがスマホをいじっている…
今日こそ、何かいいことが起こらないかと密かに期待するものの、そんなことってそうそう起こり得ないものである。
しかし、日々の生活が単調であるなんて嘆くことなかれ。単調であるからこそ、些細な事でもいつもと違ったことに遭遇すれば 、その事がアクセントとなり、記憶として心に残っていくのである。
毎回違うことばかり起これば、何が一体特別なことなのかわからなくなり混乱してしまう。
博士:ウァオー! ウォシュレットの便座のヒーターがオフになっているじゃないか!
助手:冬も終わって、すっかり暖かくなってきたので、昨日はガス・ファン・ヒーターを押入れに仕舞い込み、便座のヒーターのスイッチもついでに切ったのですよ。
もう春ですからね~
博士:朝一はまだヒーターを入れておいてくれないと、便座の冷たさに思わず飛び上がってしまい、もう少しで大変なことになるところじゃった。
わしのアナザー・デイは朝一の快便から始まるのじゃ!
助手:ポールのアナザー・デイとはえらい違いの品のなさですね~
博士:それは仕方のないことじゃ。うら若き女性のストーリーとおっさんと爺さんの境目にいるわしのと比べれば、どうしてもエレガンスに欠ける。
と言う事で、今日も張り切ってアナザー・デイを! 何かいい事あるかも!
Paul McCartney - "Another Day"