世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

残されたカトレアと手紙

2008年05月02日 23時49分09秒 | Weblog
10年前の5月2日、X JAPANのhideさんが亡くなった。
あの日の衝撃は今も忘れられない。

薄曇りの朝。
茶の間にあるテレビから流れてくる報道に仰天した。

X JAPANは大好きだったけれども、彼自身のファンであるかと問われれば否だ。
「hideのソロ活動ってどうなんだろ?」
そんな想いで、高校時代に「HIDE YOUR FACE」を購入しただけ。
でもあのアルバムは、その後、何年にも渡って聴きまくった。
特に「DICE」なんて、今日みたいに仕事でイラっとしたときに常に脳内でかかっている。
…視界ゼロの海をさ迷ってる。
…花を抱いて眠っていたりもする。


表面では「DICEが好き」だなんて言っているけれども、実は「HONEY BLADE」を一番多く聴いている。コソコソとヘビーローテしている。

テーマは父娘間の近親相姦。

カトレアと手紙を置いて去ってしまった愛しき娘を嘆いて、父親は銃で自殺する…なんとも過激かつ大胆なテーマに、高校時代の私はコーフンしたものである。
暫くは
「好きな花は?」
と訊かれると
「カトレア」
と答えていた。
…見たことも無かったのに。カトレア。


衝撃的だったのは間奏。


近親相姦については、大学の刑法の講義で…たしか尊属殺人でも取り上げられた。
父親が実の娘を何年にも渡って強姦し続け、5人の子(うち2人が夭折、他にも6人を妊娠中絶)を産む夫婦同様の生活を強いられていた。その後、娘は職場の青年恋をして駆け落ちするが父親に捕まってしまう。ついに娘は父親を絞殺する。
被害者の被告人に対する行いは強い非難を受けるものであり、尊属殺重罰規定を最高裁は違憲と判断し、被告人に対し通常の殺人罪を適用し懲役2年6月、執行猶予3年を言い渡したというもの。
この事件が40年前の我が故郷、宇都宮で起こったっつーんだから驚き。

話が逸れた。

そうそう、「HONEY BLADE」である。

ドラマ「高校教師」や嶽本野ばら先生の短編小説「Chocolate Cantata」でも取り上げられている近親相姦(父娘間)だが、なんとも想像し難い。
違法性とかインモラルとかそういうことを考える前に、私の思考回路の範疇を越えちゃってるんである。

何が言いたかったのかというと、やはりhideさんは偉大であったということだ。
死んだから言うわけではない。
娘を愛してしまった父親の苦悩を切迫感溢れる世界観を以て音楽に仕立てる才能は、近親相姦というものをよく理解できない私にも伝わってきて、やはり凄いと思う。

彼が今の世界に生きていたら、どんな音楽を紡いでいただろうか。