著者の長谷川熙(ひろし)氏は1961年から1993年まで朝日新聞社に執筆者として在籍した人で、本書執筆の動機は、同社が慰安婦問題の誤報に関し謝罪はしているが、その時の開き直った態度に呆れたことらしい。しかし、慰安婦問題に限らず、過去のいくつかの誤報の原因も総合すると、朝日新聞は「大義を見誤った」と結論づけている。
その〈見誤った大義〉とは、私流に解釈すれば〈履き違えた価値観〉である。終戦後、朝日新聞社だけでなく、社会一般に反戦思想が充満し、共産主義礼賛があった。旧軍部のやったことをすべて否定した結果、朝日新聞では左翼的思想が主流となり、吉田誠治の誤報を正しいと信じこみ、裏付けをとらず、煽りたてた。
それは吉田説を報じた植木隆記者だけの誤りではなく、全社的思い込みだった。だから、吉田説に疑問が出てきてもなお、元朝日の記者だった松井さおりが主催した2002年の「女性国際戦犯法廷」(慰安婦制度の責任者を裁く模擬裁判で、昭和天皇に責任があると結論づけた事件)を朝日新聞だけが大きく報じたのであろう(他のメディアは無視した)。
なお、「崩壊、朝日新聞」のタイトルは、戦中に「鬼畜米英、撃ちてしやまん」と戦争を煽りたて、戦後はマルクス主義に傾きソ連・中国共産党に肩入れして、両国における大虐殺を無視したことなどへの糾弾を意味する。
長谷川氏は本書のおかげで、朝日新聞のOB会に出席できなくなったのではないか(笑い)。