Saitolab 「なにもせんほうがええ」

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ポケットの中の赤ちゃん

2024年08月21日 | 書籍・映画・音楽

駆けていくには遠すぎる 歩いていくにはもう若くない

自分が小学生の頃、新興住宅地が次々造成され町の人口が急激に増えていった。自分も京都市内から新築分譲に引っ越してきた流入組だった。片道1.5kmほど歩いて通った築100年を迎える地元の小学校は教室が足りなくなった。小学校2年のときはとうとう校庭に建てられたプレハブ校舎に押し込められた。夏は焼ける様に暑く冬は底冷えのする教室だった。当時の教室にはもちろんエアコンも扇風機もない。3年になって自宅から500mほどの坂道の頂上に新しく第二小学校が新設された。1クラス42名で12クラス。マンモス校といえる規模かも知れない。新校舎に転入してからも体育館やプールの建設が急ピッチで進められた。授業中も基礎工事のパイル打ち込みでディーゼルハンマーの音が一日中響き渡っていた。そんな混沌とした小学生時代、5年生になったときの担任が浅尾先生だった。TVドラマ「熱血時代」ではないが教育熱心で型にとらわれない生徒想いの女先生だった。教室での机の配置も黒板に向かい綺麗に並ぶスタイルから”コ”の字型に並べ直し黒板と教室の中央を先生が行き来しながら授業を進めるような実験的な試みもされた。授業中の生徒の挙手も先生に差された回数を指で示すことで不公平感のない授業進行を試されたこともあった。6年に進級するときにクラス替えがあり浅尾先生とは離れてしまい残念に思っていた。しかし次々と転校生で生徒数が増えたことで教育指導要綱にある1クラスの最大人数を越えてしまい一学期早々に12クラスから13クラスに再編された。6年生の新クラスはひと月ほどで解体され元の5年生の時のクラスに戻された。担任は浅尾先生に戻り喜んだのを覚えている。そんな浅尾先生は読書をする大切さも常々仰っていて、給食の時間には生徒への本の読み聞かせまでしてくださった。その時の本が「ポケットの中の赤ちゃん」だった。初めは子供向けの本はつまらないなあと勝手に思っていたのだけれど話が進むうちに天井裏の世界や色鉛筆の粉薬などSFめいた雰囲気もあり話に引き込まれていった。何を隠そう小学校3年生頃から学級文庫や図書室でジュールベルヌやH・G・ウェルズのSFやジュブナイル小説を読み漁り現実逃避を好む小僧だったのだ。あれから半世紀が過ぎ今一度「ポケットの中の赤ちゃん」が読みたくなった。古本を探してみるも一度復刻されてはいたが古本の流通量は少なく、あっても7-8千円のプレミア価格で取引され手が出せなかった。仕方なく「復刊ドットコム」に投票していたところ目出度く規定数を超え復刊となった。因みに復刊ドットコムでは以前に新田次郎「つぶやき岩の秘密」も投票して復刊いただいたことがあった。たいへん有難いサイトだ。「ポケットの中の赤ちゃん」は先生の読み聞かせで結末まで覚えてはいたが作中の表現の仔細や情景描写こそが追体験したい大切な部分となる。本を入手してからしばらくは勿体なくて読まずにいた。そろそろ読み始めようと思う。きっと本のお話と共に当時の自分の日常もリアルに思い起こされることだろう。

 

 

 

 

 


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