「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」を観に来てくださった鎌田慧さんが、東京新聞の〈本音のコラム〉で、久しぶりの下北沢で、駅前や町並みの変化に驚き、迷ってしまい、息を切らして会場に辿り着くが、開演時間に遅れてしまい、係員にペンライトで誘導されて暗い場内に案内された顛末を書いてくださったのだが、暗い劇場内に入っていくことを、「穴蔵に墜ちていくような感覚だった」と書かれているのが、おかしい。
私はその感覚を、むしろ楽しい、わくわくするものだと思っているし、鎌田さんもそれは否定されないだろう。
お客様を迷宮にお連れすることができるのは、演劇を作る者の喜びである。
そして実は、このスズナリの階段を上がっていく一歩一歩がまた、「なんだかヤバイところに入って行くみたいだぞ」、と、わくわくするものなのである。