これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

アルコール奉行がやってきた

2009年03月05日 20時11分58秒 | エッセイ
 私の姉はお酒が好きだ。自宅にはワインセラーがあり、30本ほどのワインを常備している。滅多に使われない炊飯器はホコリだらけだが、ワインセラーは常にフル稼働だ。冷蔵庫には、食材を押しのけるようにしてビールが並び、チーズやハムなどのつまみも幅をきかせている。
「炊事が苦手、酔事は得意」なこの姉は、アルコール奉行と呼ばれている。

 今年も、私の両親と妹一家、姉夫婦を呼んでひな祭りパーティーを行った。
一族揃う場にはお酒が欠かせない。アルコール奉行曰く、「飲み物は任せなさ~い」とのことだったので、私は一応エビスビールだけを用意して待っていた。
「はい、じゃあこれ冷やしておいて」
 姉は4本のボトルを保冷袋から取り出した。



 まずはシードルで乾杯した。
「子供達のりんごジュースと、見た目変わらないね」
 義兄が言うと、娘のミキが目を光らせた。ミキは、お酒がよほど美味しいものだと思っているようで、味見したがることがある。甘くて口当たりもよかったが、子供に飲ませるわけにはいかない。知らん顔をして飲み干した。
 2本目はスペイン産スパークリングワインをいただいた。
「シャンパーニュ地方のスパークリングをシャンパンというように、スペインのスパークリングをカヴァというのよ」
 姉の講釈が加わる。正確には、スペインのカタルーニャ地方ペネデス産の白またはピンクのスパークリングワインをさすようだが、安価でシャンパンに劣らない味わいということで、人気が高まっているらしい。さわやかで、すっきりした飲み口だった。
 3本目は炭酸から離れ、オーソドックスな赤ワインだ。Suenosと書いてあった。
「これもスペイン産だけど、ラベルが気に入って買っただけだから、おいしいかどうかは知らないよ」
 いやいや、酸味と渋みのバランスもよく、いいお味だった。
 最後に、オレンジ色と黄色の中間のような、マンゴー・スパークリングワインを開けた。マンゴーを主体にオレンジ・ライム・レモン・キウイの果汁だけで作ったフルーツワインと書いてある。ブドウは使っていないようだが、自称ワインと名乗っている。
「なにこれ、すごく美味しい!」
「フルーティーね~!」
 私も妹も、炭酸とマンゴーの意外な取り合わせを絶賛した。マンゴーの風味をそのままボトルの中に閉じこめたような、まったりとした味わいだった。ラベルを見ると、原産国ドイツとなっているではないか。これまた意外な国だ。

 アルコールが尽きるころには、お寿司とローストビーフ、温野菜に豚汁も平らげて、お腹いっぱいになってきた。



 満腹とはいえデザートは別腹だ。このあとは、妹が持参したケーキを食べた。苺を添えて、コーヒーをいれ、本日のお料理はすべて終了である。



 お奉行様の仰せのままに飲んだから、ついぞエビスビールは日の目を見なかった。
 我が家では晩酌の習慣がない。運転手を務める義弟が、コーラとアップルタイザーだけしかもらえず悲しそうだったので、お土産に渡した。

 客が帰ってから、ミキは淋しさを紛らわすようにオルゴールのネジを巻いた。曲目は『うれしいひなまつり』である。
 そういえば、ひな祭りといえば白酒だったな……。
 ……今年は、赤酒・黄酒になってしまった。



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コメント (15)
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