先週、18回目の結婚記念日を迎えた。
娘に「結婚式の写真が見たい」とせがまれ、古いアルバムを引っ張り出す。教会での挙式だったため、私はウエディングドレスとカクテルドレスしか着ていない。
結婚当時はそれで満足だった。でも、18年経った今はちょっと違う。
ああ、着物も着ればよかった……。
タレントの神田うのは、「趣味は結婚式」と公言している。先日、7回目の挙式をしたと報道されていたが、実に羨ましい。金と暇さえあれば、私だって何度も結婚式を挙げてみたい。
そこで、今年は思い切って、吉祥寺の写真館で婚礼写真を撮ってきた。20年という区切りではなく、18年という半端な記念だが、写真に残る以上、1歳でも若いほうがいい。ひとまず、きらびやかな衣装を身につけ、思い出の写真が撮れれば満足なのだから、合理的な選択だろう。
しかし、40代での婚礼写真は気恥ずかしいものがあり、なかなか勇気がいる。
「お嬢様も入れて、家族写真にすることもできますよ」
スタジオ側の提案に、気が軽くなった。それなら、安心して話を進めることができる。私は、家族3人の休みが合う日に予約を入れ、白無垢、色打ち掛けの柄を選んだ。
衣装が2着の場合、撮影に3時間ほどかかる。その日、私は13時にスタジオ入りし、撮影準備を始めた。
まずは化粧からだ。メイク担当のお姉さんが、実物の10割増しに変身させてくれた。化粧品でかぶれることもなく、笑いジワもできず、素晴らしい仕上がりである。
「じゃあ、次はカツラをつけていきますね」
化粧のあとは、ヘアメイクだ。髪をゆわき、ネットを巻き付けてカツラの土台を作る。鏡に映る私は尼僧のようになり、「こんな姿は誰にも見せられない」と苦笑した。今のカツラはだいぶ軽くなったようだが、かぶせられると結構重かった。
「頭が小さいですね」
そう言われると、複雑な気持ちになる。決して「軽いですね」と言われたわけではないが、中身が足りないのでは不安だ……。
でも、もし「大きい」と言われたら、頼朝公のような「大頭なのか……」と落ち込むだろう。標準サイズが無難で安心する。
「ご主人様と、お嬢様がお見えになりましたよ」
支度に時間のかからない二人は、1時間後の14時に来店することになっていた。夫は黒の紋付き袴を、娘は私のよそゆきツーピースを着る。
白無垢の着付けが終わると、鏡の中には時代劇の奥方のような私がいた。日本髪を結い、何本ものかんざしを差して、純白の艶やかな着物をまとっている。私はすっかり感激してしまった。
すごい、太秦に来たみたい!!
いや、タイムスリップしたみたいというべきか……。
ウエディングドレスにも胸がときめいたが、和装には和装のよさがある。どちらも着ることが出来て、本当に幸せだと思った。女性は着飾ることが、この上なく好きなのだ。
撮影は、最初は2人、次は3人、その次は1人ずつ行っていく。
白無垢が終わったら色打ち掛けを羽織り、髪も綿帽子から角隠しに替えて、また同じように撮る。写真は、全部で122枚となった。そこから気に入ったものを選ぶわけだが、17枚あったので、写真集という形でプリントしてもらうことにした。
「表表紙と裏表紙の写真はどれにしますか?」
中の写真より、若干小さめになるのが表紙だ。しかも、汚れやすいことを考えると、イチオシの写真にしないほうがいいらしい。
「いい写真じゃなくて、どうでもいい写真にしようよ」
私が提案すると、娘が間髪入れずに答えた。
「じゃあ、これとこれね」
それはどちらも、夫が単独で映っているものである……。夫は悲しそうに言った。
「どうせ、どうせ……」
写真の仕上がりは今月下旬の予定だ。
今年は派手に祝ってしまったので、来年以降、尻すぼみになるのが怖い。そんなことを店員さんに話したら、彼女はあっさり言ってのけた。
「じゃあ、毎年お撮りになったらいかがですか?」
この、商売上手!
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
娘に「結婚式の写真が見たい」とせがまれ、古いアルバムを引っ張り出す。教会での挙式だったため、私はウエディングドレスとカクテルドレスしか着ていない。
結婚当時はそれで満足だった。でも、18年経った今はちょっと違う。
ああ、着物も着ればよかった……。
タレントの神田うのは、「趣味は結婚式」と公言している。先日、7回目の挙式をしたと報道されていたが、実に羨ましい。金と暇さえあれば、私だって何度も結婚式を挙げてみたい。
そこで、今年は思い切って、吉祥寺の写真館で婚礼写真を撮ってきた。20年という区切りではなく、18年という半端な記念だが、写真に残る以上、1歳でも若いほうがいい。ひとまず、きらびやかな衣装を身につけ、思い出の写真が撮れれば満足なのだから、合理的な選択だろう。
しかし、40代での婚礼写真は気恥ずかしいものがあり、なかなか勇気がいる。
「お嬢様も入れて、家族写真にすることもできますよ」
スタジオ側の提案に、気が軽くなった。それなら、安心して話を進めることができる。私は、家族3人の休みが合う日に予約を入れ、白無垢、色打ち掛けの柄を選んだ。
衣装が2着の場合、撮影に3時間ほどかかる。その日、私は13時にスタジオ入りし、撮影準備を始めた。
まずは化粧からだ。メイク担当のお姉さんが、実物の10割増しに変身させてくれた。化粧品でかぶれることもなく、笑いジワもできず、素晴らしい仕上がりである。
「じゃあ、次はカツラをつけていきますね」
化粧のあとは、ヘアメイクだ。髪をゆわき、ネットを巻き付けてカツラの土台を作る。鏡に映る私は尼僧のようになり、「こんな姿は誰にも見せられない」と苦笑した。今のカツラはだいぶ軽くなったようだが、かぶせられると結構重かった。
「頭が小さいですね」
そう言われると、複雑な気持ちになる。決して「軽いですね」と言われたわけではないが、中身が足りないのでは不安だ……。
でも、もし「大きい」と言われたら、頼朝公のような「大頭なのか……」と落ち込むだろう。標準サイズが無難で安心する。
「ご主人様と、お嬢様がお見えになりましたよ」
支度に時間のかからない二人は、1時間後の14時に来店することになっていた。夫は黒の紋付き袴を、娘は私のよそゆきツーピースを着る。
白無垢の着付けが終わると、鏡の中には時代劇の奥方のような私がいた。日本髪を結い、何本ものかんざしを差して、純白の艶やかな着物をまとっている。私はすっかり感激してしまった。
すごい、太秦に来たみたい!!
いや、タイムスリップしたみたいというべきか……。
ウエディングドレスにも胸がときめいたが、和装には和装のよさがある。どちらも着ることが出来て、本当に幸せだと思った。女性は着飾ることが、この上なく好きなのだ。
撮影は、最初は2人、次は3人、その次は1人ずつ行っていく。
白無垢が終わったら色打ち掛けを羽織り、髪も綿帽子から角隠しに替えて、また同じように撮る。写真は、全部で122枚となった。そこから気に入ったものを選ぶわけだが、17枚あったので、写真集という形でプリントしてもらうことにした。
「表表紙と裏表紙の写真はどれにしますか?」
中の写真より、若干小さめになるのが表紙だ。しかも、汚れやすいことを考えると、イチオシの写真にしないほうがいいらしい。
「いい写真じゃなくて、どうでもいい写真にしようよ」
私が提案すると、娘が間髪入れずに答えた。
「じゃあ、これとこれね」
それはどちらも、夫が単独で映っているものである……。夫は悲しそうに言った。
「どうせ、どうせ……」
写真の仕上がりは今月下旬の予定だ。
今年は派手に祝ってしまったので、来年以降、尻すぼみになるのが怖い。そんなことを店員さんに話したら、彼女はあっさり言ってのけた。
「じゃあ、毎年お撮りになったらいかがですか?」
この、商売上手!
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)