先月半ばに体外受精をし、受精卵を子宮内に戻して以来、神経質になっている。
というのも、私は体温が下がりやすい体質だからだ。胎児がお腹の中で育つためには、最低でも36.5度の基礎体温が必要だと言われている。でも、私の場合、高温期を長く維持することができず、すぐ低温に戻ってしまう。だから妊娠しづらい上、運良く妊娠しても流産しやすいのだそうだ。
この症状は、冷え性の人にしばしば見られるらしく、対策としては、体を温め血行をよくすることがあげられる。そこで、子宮内の血行をよくする生姜料理を、昨年末から食べるようにした。
家庭薬膳の本に載っていた、豚肉と生姜の千切りを炒めただけの簡単料理だが、結構美味しいし、体がポカポカする。体温もグングン上がると思いきや、そう上手くはいかない。高温と低温が入り混じり、まったく安定しないのだ。36度台前半ならまだしも、35度台後半のことすらあり、何がいけないのか、まったくわからなかった。
産婦人科では、体温を上げる黄体ホルモンの注射をしてくれた。効果は絶大で、36.9度まで一気に体温が上昇した。
しかし、翌日から36.8度、36.7度、36.6度と小刻みに下がってくる。まさかまさかと思っていたら、次の日は、ついに最低ラインの36.5度まで落ちてしまった。さすがに顔面蒼白になる。
もうダメだ~!!
ただでさえ、成功率3割の体外受精である。私は天を仰いだ。
運良く、その日は診察だったので、主治医に相談してみる。
「えっ、体温が下がったんですか? おかしいなぁ。じゃあ、注射を追加してみましょう」
医師は、首をかしげながら処置内容を入力していた。何しろセオリー通りにいかないのだから、あとは神仏にすがるしかない。
家に帰ると、長いこと放置してあった写経用紙を引っ張り出した。
私には、妊娠初期で流産してしまった、可哀想な赤ちゃんが2人いる。何もしてあげられなかったから、せめて写経だけでもと思ったのに、一枚書いてそれきりだ。毎日は無理だが、これからは心を入れ替えて、週に4枚くらいは書かねば。
2枚ほど書いたときだったろうか。写経中に、ふと思いついた。
そうだ、ご飯……。
昨年夏に、糖質制限ダイエットを始め、主食をほとんど食べないことが普通になっている。炭水化物は、エネルギー源ではなかったか。生姜の力で景気よく発熱し、一時的に体温を上げた結果、燃やすものがなくなって、体温が下がるのかもしれない。
早速、その日から、お茶碗一杯の白米を食べるようにした。すると、体温がまた上昇し始めたのだ。36.7度、36.8度と右上がりになっていく。血行ばかりに気を取られ、燃料切れになっていたのだろうと反省した。
生めなかった子どもたちが、改善すべきことを教えてくれたようではないか。もう手遅れかもしれないけれど、私は2人に感謝した。
そして、いよいよ、妊娠判定の日がやってきた。
「おめでとう、笹木さん! 陽性だよ!!」
主治医がニコニコしながら、尿検査の容器を見せる。小さく「+」という記号が見えた。
「本当ですか?! スゴイ!」
私も笑顔になったが、急には信じがたい。加えて、まだ安心できない。胎児の成長が止まっていたり、子宮外妊娠だったりしても、尿検査は陽性となるからだ。
「まだ超音波で確認できない段階ですね。また来週、来てくれますか」
子宮内での胎児の心拍が確認できてから、ようやく妊娠という判定となる。長い一週間になりそうだが、ひたすら神仏に祈って待つしかない。
朝方、悪夢を見た。
基礎体温を測ったら、36.3度しかなかった夢だ。
正夢にならないでと願いながら、近所の神社に足を運ぶ。人気もなく、聖域にふさわしいたたずまいだ。
それから、「子育鬼子母神奉安」と書かれたお寺を回る。なにやら、非常にご利益がありそうだ。
境内にある、日蓮聖人の迫力といったら……。
「気を強く持て!」と一喝されたような気がした。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
というのも、私は体温が下がりやすい体質だからだ。胎児がお腹の中で育つためには、最低でも36.5度の基礎体温が必要だと言われている。でも、私の場合、高温期を長く維持することができず、すぐ低温に戻ってしまう。だから妊娠しづらい上、運良く妊娠しても流産しやすいのだそうだ。
この症状は、冷え性の人にしばしば見られるらしく、対策としては、体を温め血行をよくすることがあげられる。そこで、子宮内の血行をよくする生姜料理を、昨年末から食べるようにした。
家庭薬膳の本に載っていた、豚肉と生姜の千切りを炒めただけの簡単料理だが、結構美味しいし、体がポカポカする。体温もグングン上がると思いきや、そう上手くはいかない。高温と低温が入り混じり、まったく安定しないのだ。36度台前半ならまだしも、35度台後半のことすらあり、何がいけないのか、まったくわからなかった。
産婦人科では、体温を上げる黄体ホルモンの注射をしてくれた。効果は絶大で、36.9度まで一気に体温が上昇した。
しかし、翌日から36.8度、36.7度、36.6度と小刻みに下がってくる。まさかまさかと思っていたら、次の日は、ついに最低ラインの36.5度まで落ちてしまった。さすがに顔面蒼白になる。
もうダメだ~!!
ただでさえ、成功率3割の体外受精である。私は天を仰いだ。
運良く、その日は診察だったので、主治医に相談してみる。
「えっ、体温が下がったんですか? おかしいなぁ。じゃあ、注射を追加してみましょう」
医師は、首をかしげながら処置内容を入力していた。何しろセオリー通りにいかないのだから、あとは神仏にすがるしかない。
家に帰ると、長いこと放置してあった写経用紙を引っ張り出した。
私には、妊娠初期で流産してしまった、可哀想な赤ちゃんが2人いる。何もしてあげられなかったから、せめて写経だけでもと思ったのに、一枚書いてそれきりだ。毎日は無理だが、これからは心を入れ替えて、週に4枚くらいは書かねば。
2枚ほど書いたときだったろうか。写経中に、ふと思いついた。
そうだ、ご飯……。
昨年夏に、糖質制限ダイエットを始め、主食をほとんど食べないことが普通になっている。炭水化物は、エネルギー源ではなかったか。生姜の力で景気よく発熱し、一時的に体温を上げた結果、燃やすものがなくなって、体温が下がるのかもしれない。
早速、その日から、お茶碗一杯の白米を食べるようにした。すると、体温がまた上昇し始めたのだ。36.7度、36.8度と右上がりになっていく。血行ばかりに気を取られ、燃料切れになっていたのだろうと反省した。
生めなかった子どもたちが、改善すべきことを教えてくれたようではないか。もう手遅れかもしれないけれど、私は2人に感謝した。
そして、いよいよ、妊娠判定の日がやってきた。
「おめでとう、笹木さん! 陽性だよ!!」
主治医がニコニコしながら、尿検査の容器を見せる。小さく「+」という記号が見えた。
「本当ですか?! スゴイ!」
私も笑顔になったが、急には信じがたい。加えて、まだ安心できない。胎児の成長が止まっていたり、子宮外妊娠だったりしても、尿検査は陽性となるからだ。
「まだ超音波で確認できない段階ですね。また来週、来てくれますか」
子宮内での胎児の心拍が確認できてから、ようやく妊娠という判定となる。長い一週間になりそうだが、ひたすら神仏に祈って待つしかない。
朝方、悪夢を見た。
基礎体温を測ったら、36.3度しかなかった夢だ。
正夢にならないでと願いながら、近所の神社に足を運ぶ。人気もなく、聖域にふさわしいたたずまいだ。
それから、「子育鬼子母神奉安」と書かれたお寺を回る。なにやら、非常にご利益がありそうだ。
境内にある、日蓮聖人の迫力といったら……。
「気を強く持て!」と一喝されたような気がした。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)